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天窓の月

雨の強い土地に雨の多い夏と秋だったので

明かり取りの天窓からたびたび雨が漏って、

頻繁に天井でぽた、ぽた、と音がします。

何度直してもらってもしばらくするとまた音がします。

継ぎ目のある、ちょっと凝ったデザインの屋根は

どれほど工夫を重ねても太刀打ちできない気候なのです。

なにしろ真横からも下からも雨が降るのです。


もうあきらめて、いずれ天窓はつぶしましょうと言う事になりました。

日中部屋が暗くなるので電灯を増やして。



夜、灯を消した部屋で天窓を見上げます。

擦り硝子なので素通しでは見えませんが、

満月がさしているのがわかります。

硝子の上の屋根の一画がぼうっと白く光っています。


目が慣れてくるにつれてますます明るくなります。

壁に窓のない部屋の中に月光がふりそそぎます。

フローリングに白い光が反射しています。


閏九月、立冬の満月です。



# by otenki-nekoya | 2014-11-07 23:25 |

すべてがエムになる

当時、座敷童のような子(私)がバスの中で読んでいたのは

岩波文庫の『遠野物語・山の人生』でした。


今、手持ちの角川ソフィア文庫『遠野物語』は

『遠野物語拾遺』と合わせて一冊になっています。


連れが買って来た集英社文庫『遠野物語』は、

カバーイラストはホラーコミック風ですが、

『涕泣史談』や『清光館哀史』などがセレクトされています。


その中の一編『女の咲顔』は

「エミ」と「ワラヒ」の違いについて考察されています。


「笑」と書いて「ワラヒ」、「咲」と書いて「エミ」

「咲顔」と書いて「エガオ」


‥‥今シーズンのドラマで工学部のお嬢様大学生を演じている

女優さんの名前、「サキちゃん」じゃなくて「エミちゃん」は

読み方に無理があるなあ、と思っていたのですが

そうだった!柳田翁が「エミ」と読んでいたんだった!


ドラマのキャストを聞いたとき、原作に合わせて

エミちゃん髪を切ったら偉いけど必要ないぞ、と思ったら

さすがにそれはしていませんでした。



# by otenki-nekoya | 2014-11-02 22:58 |

そこの物語

十月いっぱいはハロウィーン通信ネタになるような

コワいものはないかコワいものはないかと、

そればかり探していました。


何が一番怖かったかと言えば。



十月のある日曜日、

連れが薄い文庫本を読みふけっていました。


柳田国男の『遠野物語』でした。


うわあああああああ。


‥‥どこが怖いのかわかりにくいかもしれませんが、

この組み合わせは全く想定外だったのです。


 経立(ふったち)は恐ろしきものなり。


とはいえ、

若い頃には食べられなかったものや

興味のなかった分野の本が

楽しめるようになるというのは、

年をとる醍醐味のひとつです。



 ある年何某という男、町より帰るとて乗り合い自動車に乗りて

十二、三の女の児の書を読み入るに逢へり。

何読む、と問えば柳田某の『遠野物語』なりと答ふ。


座敷童ではありません。

私です、私。




# by otenki-nekoya | 2014-11-02 21:55 |

彼岸の蝶

金色の日射しと真っ黒な影、

影は短くはなく長くなく、

建物の黒い影をつたって歩きます。


金色の日射しを受けて

金に黒の模様のアゲハチョウが

前を横切り、脇を通り、頭を掠めて

‥‥さすがに連れが気付きます。

「なんで住宅地の中にこんなにチョウがいるの?」


母親でしょう。


「え」

このあたりのお宅はもれなく一家に一本以上、

いわゆる酢蜜柑を植えていますね。

「うん。焼き魚とか鍋のときは庭でもいでくる」

その柑橘の葉がナミアゲハの子供の餌になるんです。

「ああー、卵を生みに来たのか」

これから冬を越して、春に孵ります。

「あの、春のちっちゃなアゲハ蝶ね」


公園のキバナコスモスにはモンキチョウが訪れ、

アカタテハがせわしなく舞い、

ヤマトシジミが低くちらちらします。

見慣れた蝶ばかりでも、

秋の彼岸の金色の日射しの中で

金色の花に華を添えています。


川岸に出ると、大きな夏羽がすり切れて

黒いレース状になったクロアゲハが

満開の彼岸花の上を真っ黒な影のように。


# by otenki-nekoya | 2014-09-23 21:36 | 散歩

いるよ

彼岸とはいえ、これほど急に冷え込まなくても。

でもこれなら真昼の散歩も大丈夫。


うちの前の小さな川沿いに銀行の裏を通ると、

歩いていても見過ごすくらい、

立ち止まって初めて気付くような、

ささやかな花が。


庭に生えれば抜かれるような、

名前を聞けば雑草と言われるような、

キク科の、イネ科の、ヒルガオ科の、

マメ科の、シソ科の、ツユクサ科の、

ヒユ科の、タデ科の、ユリ科の、


淡い黄色の淡い緑の淡い紅の淡い紫の。


路面から水面までの5メートルの斜面の中に、

一つ直径1センチにも満たないほどの花が、

何百と、何千と。


川沿いを川のように、

天の川の星のように。


町中の道ばたでしばし立ちつくします。

ここは花野だ。

幅5メートルで延々と続く。


この銀行の裏は大きな樹のある小さな公園の対岸で、

手入れと放置の具合が丁度良いのでした。



そういえばカワセミをしばらく見ない。


突然、鋭い声がしてオレンジ色がひらめくと、

次の瞬間には水色の光が

川面をつーっと遠ざかってゆきました。



# by otenki-nekoya | 2014-09-21 22:28 | 散歩
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日記


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