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キャロットサラダ

ひょろ長くて土に馴染んだ朱色で、
ずーんと味の濃い真冬の根菜
金時人参をみかけなくなりました。

かわってむくむく丸みを帯び、
光にかざすと芯まで透ける
紅水晶のような洋人参が出始めました。

なんだか頼りないなあ。
これだけ太くてもほとんど水分だから、
スライサーで太めの千切りにしても、
あっというまにオレンジシャーベットのような
こんもりと丸い山ができます。

アーモンドオイルと地元レモンと
マスタードシードと塩であえて。

しゅわしゅわしゅわしゅわ、と
丸一本分ぺろっと入ってしまいます。
手応えがなくたよりない、ということは
かろやかでみずみずしい、ということでした。

目には見えずとも。
土の中も
冬がおわって
春になっています。
by otenki-nekoya | 2012-02-28 21:30 |

うたは思えど

自転車で山を走って来た連れが言います。
「うぐいすが鳴いていたよ」
初音ですね。
「へただった」

例年なら三月を待たずとりどりの花が咲くこのあたりでも
今年はまだあまり色彩のひろがりはありません。

ランチは菜の花のパスタ。
花の開いていないつぼみばかりを選んだので、
言われなければあの黄色の
「なのはな」だとはわかりません。
by otenki-nekoya | 2012-02-26 21:28 |

ふきのとう

玄関ドアをあけると抜けるような青空に、
真っ白い雪山がくっきりと見えます。

ついにあそこまで雪は届きました。
うららかな陽のあたる里を囲む里山を
さらに幾層かで囲む杉山のそのむこうに
いつもは群青色の稜線が、白く輝いています。

ついにここまで雪は届きませんでした。
日射しの中ぽこぽこ顔を出したフキノトウが
大小ぽんぽんビニール袋に無造作にほうり込まれて
産直市で80円で売られています。

スーパーのトレイにきちんと並べられた
フキノトウ300円の五倍以上は入っています。
こんなにどうしようかなあ、と思いつつ、
オリーブ油を熱したフライパンに
葉ごとざくざく刻んだフキノトウを落とし込みます。
切るそばから炒めると、えぐみがでません。

このあたりでは馴染みの冬野菜のニンニクの葉も
刻んで一緒に炒めます。
少し幅広のネギのようだったニンニクの茎の根元は
そろそろニンニク玉になりたがっています。

あれだけあったフキノトウは炒めているうちにすっかり嵩が減り、
色鮮やかとはいえませんが、黄緑色のペースト状になりました。
ゆでたパスタにからめてパルメザンチーズをざっとふります。

陽のさす窓際にテーブルを寄せます。
ほんのりほろ苦みもあり、
胸の底がすっとするように清々しい、
奥行きのある味のパスタソースになりました。
by otenki-nekoya | 2012-02-19 20:53 |

猫解禁日

東風が吹いています。

東風吹かばにほひおこせよ梅の花

朝が氷点下だろうが日陰は凍りつこうが、
日射しはのびやかになってきています。

ゆったりきらきら光る青い海を前にして、
砂浜の枯れ薮をぎごちなくくぐりながら
ほっそりした青灰色の猫がしのびあしで進んでいます。
とおっ!

ひょいと脇の小枝によけた小鳥は
何事もなかったように未熟者を見ています。

寒風に吊るされていた銀の鰯も今日はありません。
干場は魚の開きや鉄火干しが陽にあたっています。
人が立ち働いているので、
トビ除けのネットもかけられていません。
広げられた白いちりめんじゃこの列からは
チリメンモンスターとしては育ち過ぎた
三センチくらいのタコや怪魚がつまみ上げられていきます。

三毛猫が立ち上がってバケツの水を飲んでいます。

道の正面からはやけに幅の有る猫が
のっしのっしとこちらに向かってきます。
by otenki-nekoya | 2012-02-12 18:37 | 散歩

はるが立ったので

このあいだまで透き通った湖のように
静かだった海が様相を変えていました。

沖合から蛇行する紫色の潮の帯、
押し寄せる濁った緑色のうねり、
岩に当たり砕け散る真っ白な波、

これはもう冬の海ではありません。
強い南風が吹いているのです。

先週末、普段店頭にないような豪華な巻き寿司を買い、
そのままかじる習慣はないので普通に切り分けて食べた、
あの日に冬は終わりました。

致し方なし。
これからも気温が低かろうが雪が降ろうが、
先に進むしかありません。
by otenki-nekoya | 2012-02-07 19:44 | 散歩

雲南

外資系メーカーさんに貰ったカレンダーは、
横長できれいに破り取るのが難しい。
一月の写真はなかなか気に入っていたのですが。

一月は画面一杯を覆う灰色の瓦屋根でした。
この里の銀鼠色の瓦の町並みにも似ています。
画面左上の通りの、夕闇の中に紅い灯を点した
二階建ての建物の列と丸い提灯が
アニメ映画『千と千尋の神隠し』の序盤の
夕暮れの訪れとともに妖しいものどもで賑わう町を思わせます。

外資のカレンダーなので、地名も日本語ではありません。
“Lijiang,Yunnan”
リージャン
‥‥世界文化遺産、麗江。


某公共放送の番組予告で、
何万本もの細くうねる畝が水をたたえた
田に覆われた山の斜面の映像が映りました。

このあたりでも平地は少なく降水量は多いので
山間部で棚田を見かける事は珍しくはないのですが、
これはまた、圧倒されるスケールです。
「これは‥‥あー、きれいな景色だ、って
軽々しく言っちゃいけないね」
ひどく感銘を受けた様子で、連れがいいます。

「山とか海とか、自然が造った景色なら
ただ、きれー、って見ていればいいんだろうけど」
まさに、これは人の手が造り、
それも生きるために造ったもの。
「どこ?」
これも雲南省、ハニ族という少数民族の田だそうです。

「とりあえず‥‥おそれいりました」
讃える表現がみつからなかった連れは、
敬意をこめて天空の田の映像に頭を下げています。
by otenki-nekoya | 2012-02-06 22:37 | TV

まふゆの底の砂糖菓子

全身全霊を込めてこいでも
真っ正面から吹き付ける北風に
自転車がまったく進みません。

山の向こうから吹く乾いた強い風は
山の向こうに重たく湿った雪を落としてきたのです。

朝、ゆうべ煮詰めてレモン色に透き通った
文旦の皮を金網の上に並べてベランダに干しておきました。

山を越えてからからに乾き切った風を利用するのは
山向こうで湿った重い雪と苦闘している皆さんに
申し訳ないような気もします。

重荷を下ろした北風が真っ青な空で一日唸り、
風に乾いた文旦ピールは夕方には
レモン色の曇り硝子のようになっていました。

これほど美しい菓子になるとは。
もっときれいに切り揃えておけばよかった。

檸檬色の曇り硝子のような文旦ピールに
グラニュー糖をまぶしてかじります。

湿った上白糖のような粘りのある重い雪が
あらゆるものを覆ってしまう町を思います。
by otenki-nekoya | 2012-02-02 21:12 |

皮だけマーマレード

御贈答用高級果実として
箱詰めにされ麗々しく贈られる文旦も、
柑橘の里では規格外品をごろごろ貰います。

巨大な実を剥いてさくさくした果実を食べると、
大量の白いワタのついた分厚い皮が残ります。
このぶあつく苦い皮を、四回ぐらい
熱湯でゆでこぼして水にさらします。
皮をゆでたお湯を使うと柑橘オイルの力で
タイルやフローリングもぴかぴかに
‥‥それはさておき。

下ゆでをして砂糖に漬けておき、
水分が出て来たところを煮れば
果汁なしでも白いワタがとろとろになり
ほろ苦くて酸味があって
香り高いマーマレードのできあがり。
皮だけなのにびっくりするほど美味です。

毎度の事ながらこれは、はまります。
瓶詰めとは別にいつでもつまめるように、
文旦ピールも作っておきましょう。
一度ゆでた皮をスティック状に切り、
好みの苦さになるまでゆでこぼし、
砂糖をからめてしばらく置き、
水分がなくなるまで煮詰めます。


冬の前に窓に板をはめて閉ざし、
冬中地下室のようになる一階と、
白い壁の中の細い通路をたどる迷路の町。
小さい頃の暮らしを思い出させる
豪雪のニュースを見ます。

仕上げは明日。
by otenki-nekoya | 2012-02-01 22:08 |
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