あらしのなかのアラビアンジャスミン
六月の夜、暗い網戸の向こうから漂うひんやりとした湿気の中に
茉莉花・アラビアンジャスミンが香ります。
八月の夕方、台風の来る直前にベランダの鉢植えを避難させていると
ゆるく支柱にまとわせた枝一面に今にも開きそうな白い蕾が。
一晩で散る茉莉花の小さな白い花が
雨ばかりの八月に再び大量の蕾をつけていたのです。
まるごとが花嫁の純白のブーケのような鉢を
部屋に取り込み、サイドテーブルに載せます。
この異様な気候条件が誘ったのでしょうか。
まさか台風の夜にいっせいに開くなんて。
穏やかならざる夜が更けるにつれ、
ホースで窓を洗うように雨が真横に打ち付け、
波飛沫やら折れた枝やら園芸用ビニールやらが空を舞う。
阿鼻叫喚の中、風圧で揺れる部屋の奥では
時折、茉莉花が深く香りました。
九月の真昼、久しぶりに青空をあおぎます。
日射しは強いけれどさらりと乾いていて、
ペットボトルのさんぴん茶を飲んだ瞬間、
その香りで思い出したのです。
沖縄ではなくて、嵐の夜を思い出すのか。
翌日になると白い花は部屋の中で雪のように残らず落ちて、
黄緑色の丸い葉の何の変哲もない鉢植えになっていました。
by otenki-nekoya
| 2014-09-14 21:41
| 天