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はしたなき

文体が伝染りそうになるのをおさえるのに一苦労です。
前置きが長くなりました。
帝、吹奏楽部、『黒死館』、平行世界──

初めて読みました、古野まほろ(ただし新訳)。
もれ聞く噂の数々に、臆した訳ではありません。

物理的に、同じ時空に存在し得なかったためです。
人口の年齢構成比率によって、町に一軒の書店での
ノベルス専有面積は極めて低く、
入荷新刊単行本は売れ筋、再入荷はベストセラーのみ、
という環境ではなかなか相見える事かなわず。

しかし大手出版社の新刊文庫なら、一度は棚に並びます。
この期を逃したら御縁はなかったものと。

十月の連休明けの週。
ありました。
『天帝』シリーズ第一作目が、
ただ一冊。
縦置きの新刊文庫お披露目棚に、
重ねて置ける厚さではない事はわかりますが、
捌ける度に補充する‥‥とも思えないので、
やはりこの町への割当はこの一冊。
ずしりと重い『果実』を手に、レジに向かいます。

覚悟して読みはじめたのですが、「完全改稿」の賜物か、
思ったよりはるかに読みやすい。
多言語による装飾は衒学的という訳でもなく、
ラノベ系の軽いタッチと登場人物、音楽付き、
『月光ゲーム』が聖典?あ、設定が90年だから。
90年なのにエヴァはあり。という以上に世界そのものが。
花咲く趣味的駄弁は埋め込まれた手がかりか罠かただの遊びか、
「姫川中学校吹奏楽部の歌」を斉音してしまう自分が情けない。
さて、拾い集めた鍵で犯人当てに参加、更に世界の開示、
ああ、ここは、居心地が良い──

そのはずです。
自らを卑下する主人公は、みんなに愛されてて、
偏った知力を称されて、鬱陶しい親はいなくて、
出て来る大人は理解があって。

そんな世界を紡ぐまほろ君と、そんな世界に馴染む自分が
いたましい。


現実に戻って言えば、学園の謎は別だてのストーリーにして、
ストイックにクローズド・サークルでのミステリを独立させていれば
普通にアリスの後継として新本格系で売り込めたのに、とは思います。
好きなものを全部入れ込んでしまうのはプロではない。

けれど。
いにしえの帝が命ずれば、飛ぶ鳥もひれ伏す。
言葉で世界を司る力を手にしてしまえば、
その欲望を押しとどめるのは容易ではなく。
その欲望のままに産み出された世界が人を惹き付けるのも真実で。

既刊一括通販購入、などという
大人げない大人買いをするつもりはありません。

まほろとはいつでもあそべるから。
by otenki-nekoya | 2011-11-04 18:41 |
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日記


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