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流れの果

中学に入って、同級生が文庫本を貸してくれました。
親の本棚からこっそり持ち出したものだと思われます。
なぜなら、ハードカバー本の時は気付かれやすいので、
その日のうちに読んで返さねばならなかったからです。

内容はほとんど覚えていませんが、最後の部分は
学校帰りのバスの最後列の左側の席で読みました。
最後列のまん中に座ると、急停車したとき
通路に転がり落ちるからです。
夕方のバスの乗客は停車するたびにどんどんと降りて行きます。

窓の外は真っ暗になりました。
がらんとしたバスの室内灯の光で文字を追ううちに、
クライマックスでめくるめく時空の果てに吸い上げられ、
我に返って今自分がどこに居るのかまわりを見回しても、
自分の乗るバスが、ぽつん、と宇宙の中に放り出されたような、
かつてない壮大な身体感覚だけは今でも忘れられません。

長い間、タイトルを『果しなき時の流れの果に』だと思い込んでいたのですが、
どうも同時期に読んだ松本漫画によく出て来るフレーズが混じってしまったようで、
正しくは『果しなき流れの果に』(著/小松左京)でした。
今にして思えば、うちにこの作品の単行本がなかったのは、
うちの親はSFマガジンの連載で読んでいたからなのでは。
ちなみに友人がその日のうちに持って帰ったハードカバー本は、ツツイ作品でした。


二月末、某公共放送の土曜ドラマ『TAROの塔』(全四回)で、
お馴染みの黒縁眼鏡姿(キャスト:カンニング竹山さん)で登場したので、
おお、小松センセイは万博仕掛人の一人だったのか!と、見ているうちに、
三月の震災が起きました。
絶対あるはずの、小松センセイへのインタビューがない。
お加減が悪いのでしょうか、と思っていたところへの訃報でした。

今回に限らず、長年、週刊誌の見出しに事あるごとに踊る
見慣れた『日本沈没』『復活の日』のタイトルの元ネタが、
日本SF文学界の巨人の作品だと初めて知った方も多いかもしれません。

ニュース映像で在りし日のお姿を見た連れが驚いていました。
「煙草。タバコ凄いね!」
ああ。昭和は遠く。
by otenki-nekoya | 2011-07-29 17:18 |
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日記


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