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夢枕に立つ

私が坂本さんを初めて見たのは
夏休みに行った祖父の家でした。

暑い盛り、広縁のある客間の四方に、
垂れ幕のようにぞろぞろとぶら下げられた
鯉だの日の出だの墨絵の山水だの漢詩だのの中、
ひときわぱっとしない墨描きの軸があって、
もっさりした和服の男性の立ち姿に何か賛が少々。

これは何、と祖父に尋ねた所、

日露戦争始まりしときに皇后陛下の御夢に、
坂本龍馬と名乗る武士現れ、及ばずながら我が海軍を護り、
勝利を得ますのでご安心下さい、と語ったという。

もちろん、幼児がサカモトリョーマが維新の立役者で、
小説の主人公としても大人気、などという事は知りません。
この髪ぼさぼさの着物のおじさんは、海軍の守り神なのか。
洋間にはトーゴーゲンスイのお人形もありました。

祖父にとってその軸はストーリーに意味があり、
画にも書にも美術的価値はさしてなかったから、
子供の目に一番つまらなく感じたのだと思います。

後に、皇后の見た夢は「葉山の御夢」として
『時事新報』に載った話題だと知りました。
薩長閥にあてつけた田中光顕の仕掛けっぽいですね。

今年は梅雨も早く明け、連日強い日射しが照りつけています。

「いいかげん虫干ししてくれんかのう、カビが生えて来たぜよ」
と、夢枕に坂本さんが立ちそうです。
by otenki-nekoya | 2011-07-15 15:29 | 美術
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日記


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