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城跡を知る

部屋から眺めると里から山がはじまるはしっこ、
五月の初めには淡いとりどりの色でうずもれて、
五月の終わりにはとりどりの鮮やかな緑になったあのあたりに
小さな城があったのです。

先月末、マーズと落人伝説について
やりとりをかわしていたとき、
ふと思い出した事がありました。
『平家物語』の有名な一場面の中に、
この里の武人達が登場している。
マーズに問われました。
「地元には彼等の住まいの場所とか伝わっているの?」

私がこっちに来てから聞いた事はありません。
領主の城近くで生まれ育った地元民にそのシーンを語って聞かせ、
さて、この武人達についてなにか教わった事は、と尋ねました。
「聞いた事がない」
そうですか。

それから一月たたないうちに、
休日の朝に自転車で走って来た連れが
「大発見!」と駆け込んできました。
道中、その武人の城といわれるものをみつけたのだそうです。
それはすごい。つれていってください。


‥‥ここですか?
よく前を通る、小山の前ですが。
看板に従い、住宅地から木の葉の敷いた斜面の道を上ると、
小さな山というより丘のてっぺんが平らになっています。
樹木に覆われていますが、これはまさしく城跡ではありませんか。
横に倒された樹の幹に腰掛けます。
木漏れ日と鳥達のさえずりが降り注ぎます。

小さな城からは二つの川に挟まれた田畑と民の姿、
その向こうの海と空がよく見えたことでしょう。
武家の世になる前の穏やかな暮らし。
よいお城です。

「しょっちゅうここは通るのに、なんで気がつかなかったんだろう?」
この看板、新しいですよ。ああ、書いてある。
立てられたのは去年の秋──
某公共放送大河ドラマで源氏と平家が取り上げられたのを見て
地元の人が思い出し、新しく作ってくれたのでしょう。
この道を通るのは今年になって今日が初めてなのでは。
「あ、そうだ。こっちは今日まで近づかなかった」
平地にも斜面にも、城あと一面に杉が植えられています。


部屋から眺めると里から山がはじまるはしっこ、
今はとりどりの鮮やかな緑になったあのあたり。
たからものがひとつふえました。
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by otenki-nekoya | 2014-05-29 21:37 | 散歩

御神鏡

今年最後の瞬間を映すTV画面をみつめ、
除夜の鐘の音を待ちます。

‥‥‥‥。

鳴らない。

大勢の初詣客が粛々と並ぶ彼方の屋根は

──伊勢神宮

ああっ、冒頭が神社の可能性を考えていなかった!
「神社は鐘がない?」
神社は鈴です。
除夜の鐘がないと気付いてこれだけ動揺するなんて、
我が身は余程煩悩に塗れているのか。

「仏像もないね」
御本尊ではなく、祭神はあまてらすおおみかみ、
御神体は八咫鏡──

「カガミ?それって、もしかして壇ノ浦で」
剣は沈み、鏡は浮いて。
「時忠が救った功績、というあの御神鏡?」
あの鏡かどうかはわかりませんが。

などと騒いでいるうちに被災地の寺や清水寺、
浅草寺などが紹介され、年が明けました。

TV画面に映る伊勢神宮内宮の屋根に向かい
柏手を打ちます。

かみさま。ほとけさま。そしてみなさま。
本年もよろしくお願い申し上げます。
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by otenki-nekoya | 2013-01-01 21:31 | TV

幼帝の陵

大河ドラマでは番組の最後に
ドラマゆかりの土地を紹介する
小コーナーがあります。

最終回は壇ノ浦の赤間神宮。
海から引き上げられた安徳天皇が
祀られたという碑があります。

「本当かな?」
このあたりの山でも、
安徳天皇の墓だの平家の隠れ里だの
落人伝説はいっぱいありますからね。

‥‥あっ。
雨の夜、安徳帝の墓の前に坐り、
琵琶をかきならす芳一のまわりの
塚の上におびただしい数の鬼火が

「うわあ。ここかあ」
『七盛塚』。平家の男子の多くは、名が■盛だから。
「あれ?お寺じゃなかった?
お坊さんが身体にお経を書いてくれたんだよね?」
たぶん例の明治の廃仏毀釈で。

「怨霊がまた呼びに来たらどうするの」
宮司さんに祓ってもらってください。


星辰が正しい位置についた時、
海の底の都は再び浮上するのです。
「何の話?」
‥‥別の話です。
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by otenki-nekoya | 2012-12-23 22:34 | TV

長門国壇浦、赤間が関

青い海に波一つない秋の日の事でした。

それでは、有名な『みみなしほういちの話』を
ご存じないのですか。

あかまがせきに住む盲目の琵琶の名手の物語を。

源平のいくさの何かも知らぬまま
六歳の時に読んで以来、
私の身体に書き込まれたような物語を
青い海の横を歩きながら連れに話して聞かせます。

「その、高貴な方々ってつまり、ニイノアマとかトモモリとか」
そうでしょうね。
「自分たちが死ぬ話をわざわざ聞きたいかなあ?」
‥‥自分がモデルになったドラマには興味がありませんか。
といいますか、執着があるのです。怨霊ですから。


視聴率が低いとさんざんに言われはしましたが、
源平の武者がヒーローだった祖父達の時代ではないので、
国民の十人に一人が見ていれば凄いものだと思います。
今年の某公共放送大河ドラマが終了しました。

壇ノ浦の合戦のおり海底に沈んだ
三種の神器の一つ、草薙の剣を
若かりし姿の主人公が水底で手にすると
きらびやかな平家の館に一族が
にこやかにうちそろって出迎えます。

ああ、
浪のしたにも都のさぶらふ。

この方々なら、琵琶の上手が居ると聞けば
具して物語を聞くでしょう。

それにしても、このラストシーン、
‥‥映画たいたにっく?

‘あそびをせんとや’、のうたが
突如頭の中できりかわって

♪ゆあ ひや ぜあーずなっしんあいふぃあ
あん あいのうーざっまいはー いる ごーおーん♪ 

あなたはわたしのこころのなかでいきつづける。
意味は合っています。
優れた物語だったと思います。


 千いろの海の底、神竜のたからとなりしかば、
 ふたたび人間にかへらざるも
 ことわりとこそおぼえけれ。
               『平家物語 巻第十一 剣』

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by otenki-nekoya | 2012-12-23 22:31 | TV

ゆるがるれ

休日の朝、歌が聞こえます。

♪あそびを せんとや うまれーけむーー

ど、どうなされたのです。

「ん?日曜版の『名言』がこれだったから、つい」
連れが手にした全国紙を見せます。

朝っぱらから、幽閉された法皇様が憑いたかと思いました。
「リョージンヒショーって、後白河が作ったの」

今だったらそうですねえ、おそれおおくも皇太子殿下が
「へびーろーてーしょん」をカラオケで歌いまくっていたら
周囲は少なからず困惑するでしょう。
「するねえ」
振り付けも完コピで。
「“今様”って当時はそんな位置づけだったの?」
さあ、そこまでかどうかはわかりませんが。

♪たわぶれ せんとや うまれけん
「良い詞だと思うよ」

だから、残りました。
いつの世もサブカルをみくだしてはならないのです。
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by otenki-nekoya | 2012-11-25 20:44 |

なきつるかた

夜九時頃、外から戻って来た連れが言います。
「ホトトギスが鳴いてた!」
あなめでたし。初音を聞きしうえは、一首読み給へ。
「えー?えーと、えーと」

 きょきょきょっきょきょ こんどはほんとの ほととぎす

‥‥。
下の句は?

「えー?‥‥平安貴族は大変だなあ」

「ホトトギスって、見た時もういないよね」
町の上を渡りながら鳴いていますね。
「ウグイスはじーっと見てたらそこにいるんだけど」

 ほととぎす 鳴きつるかたを 眺むれば
 ただ有明の月ぞのこれる

「そう!まさにそんな感じ、声の方を見たらもういない」

後徳大寺左大臣。
「さすが左大臣、歌が上手だなあ」
徳大寺家はもともと佐藤義清が仕えていた詩歌の家柄だそうです。
「ノリキヨ‥‥西行か!」

清盛の息子達と役職の取り合いになるので、
徳大寺・藤原実定は「平家物語」の中では策を弄するんです。

 其時入道うちうなずいて、
 「あないとほし。王城にさしもたッとき霊仏・霊社の
 いくらもましますをさしおいて、
 我崇奉る御神へ参ッて、祈申されけるこそ有りがたけれ。
 是ほど心ざし切ならむ上は」とて、

                    『平家物語 巻第二 徳大寺厳島詣』


重盛を辞めさせて宗盛を飛び越して、右大将にしてあげる。
「厳島神社に行っただけで?清盛いいひとだ」
この書かれ方だと、実定はあまり好かれてなかった感じです。
「でも歌は上手だね」

かるた取りでも、「ほ」、と言ったとたん
下の句の札が取れますし。
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by otenki-nekoya | 2012-06-09 22:50 |

この物語見果てむと思へど

誰もが一度は読みたいと思っていても
なかなか手に取る事ができない作品の紹介番組、
旧教育放送の『100分 de 名著』、

春の番組編成で、水曜夜十一時に移動しました。

きた。
「『源氏物語』だっ!」
連れは以前から『源氏物語』が読みたくて読みたくてたまらず、
あなたは菅原孝標のムスメかっ、という程の入れ込み様ですが、
どの現代語訳も、特に優れているといわれるものほど、
「文学的過ぎて読めない‥‥」

それはまあ、自分で訳を書きたいと思う程の人は
それだけ原典に愛着が強いので、あまり平易にはしたくないでしょう。
連れはあくまでも『源氏物語』を「読みたい」のであって、
漫画や映画等、映像化されたものには関心がないようです。

番組の文学部教授の解説を聞きながら羨ましそうに言います。
「人間が作った架空の作品を研究する仕事って、いいなあ」
神が作った作品を研究する自然科学の
さしせまった必要性とは感じが違う、といいますか。
「遊びといったら失礼だけど、文化の余裕というのかな」

湯川秀樹博士の母君は明治の女ですが、
女学校で英語を習い、その後お琴やお茶等の習い事の他に、
国文の先生について『源氏物語』の講義を受けに通ったそうです。
現代でも、市民講座などで『源氏物語』は大人気のテーマです。
「このあたりじゃ、ないだろうなあ」
えっ、もしあったら参加するつもりですか。

実は私は岩波文庫版でも読めるのですが、
わかりやすく読み聞かせてあげる気にはなりません。
それこそ清少納言の言う『すさまじきもの』、
興ざめというものです。
あこがれを持つというのは、よい事だと思います。
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by otenki-nekoya | 2012-04-05 21:03 |

つちぐもの裔

「殿上闇討」は『平家物語』冒頭の
「祇園精舎」に続くタイトルです。

 しかるを忠盛備前守たりし時、鳥羽院の御願、得長寿院を造進して、
 三十三間の御堂を建て、一千一体の御仏をすゑ奉る。(中略)
 上皇御感のあまりに、内の昇殿をゆるさるる。
 忠盛三十六にて始て昇殿す。


「父上、若い!」
主人公がまだまだ中学生くらいな感じですもんね。

 雲の上人是を猜み、(略)忠盛を闇討ちにせむとぞ擬せられける。

機転の効く平氏の頭領は、銀箔を貼った木の刀で危難を乗り切ります。


旧教育放送で、大逆の汚名が近年になって晴らされた
幸徳秋水の評伝を放映していました。
戦前まで郷里の墓碑は鉄格子に囲われていたほどの賊扱い、

さっき見ていた民放ドラマでは、国家権力が
沖縄返還絡みの日米密約報道を握りつぶすために
主人公の新聞記者を国家公務員違法(教唆)で
逮捕する場面で終わっていましたが、

大日本帝国明治政府のおそろしさ、
戦後日本昭和政府の比ではない。

秋水は悲壮にして格調高い名文家ですが、
たまたま別件で入獄していて大逆の連座を免れた
さかいさんという同士の文章は
身の周りのものを慈しむ優しい文章でした。

後年、主義主張を表明出来る時代になり、
さかいさんは自らを郷里備前に伝承の残る
「土蜘蛛の子孫」と号したそうです。

「つちぐも?妖怪?」
それは妖怪バスター源頼光に退治された奴です。
能や歌舞伎でばーっと糸を投げかける。

さかいさんの御先祖は‥‥
ほら、ここ、『平家物語』巻第五、岩波文庫版なら第二巻、
帝に逆らうものは皆滅びるという例を列挙した
「朝敵揃」のトップバッター

 夫我朝に朝敵のはじめを尋ねれば、
 やまといはれのみことの御宇四年、
 紀州名草の郡、高雄村に一の蜘蛛(ちちゅう)あり。
 身みじかく足手ながくて、ちから人にすぐれたり。


もとは日本書紀に載っているそうです。
「中央政府に従わない、そういう異民族なんだね」
まつろわぬ民というものですね。


「本のどこに何が載ってるか全部覚えてるの?」
まさか。
ちょうど数カ月前、王威がどれほど凄かったかという、
『平家物語』の中の例を話した事があったでしょう。

「土蜘蛛が人だというのははじめて聞いたよ」
人はさからうけれど、それ以前の生き物は。
「あ!鳥!」

 鷺を五位にぞなされける 『平家物語』 巻第五 「朝敵揃」
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by otenki-nekoya | 2012-01-29 22:35 |

こけのむすまで

国歌斉唱のニュースについて話をしていて、
ふと気がついて、連れに改めて尋ねてみました。

あのー。
日本の国歌を知っていますか?
「『君が代』でしょ?」
歌えますか?

「♪しーろーじーにーあ〜か〜く〜 ひーのーまー」
‥‥。
「‥‥あれ?」

学校で習いませんでしたか。
「‥‥習ってない」
やっぱり。おそらく、地方の小さな小学校の校長先生は、
子供達に二度とこの歌を歌わせてはいけないと思ったのでしょう。
「曲はよく聞くけど。どんな歌詞?」

 きーみーがーあーよーおーはー ちーよーにーいぃやーちーよーに
 さーざーれーいーしいーのぉー いーわーおーとーなーあーりてー
 こーけーのーーむーうーすーう まーあぁでー

「すごい。何言ってるのかさっぱりわからない」
私も、小さい頃は「いわおとなりて」は
「岩音鳴りて」だと思っていました。
いわお、は大きな岩、
さざれいし、というのは小さな石です。
「小石が集まって固まって岩になって、更に苔が生えるまで?」
そうです。
「‥‥格調高いなあ」
古今和歌集の歌がもとだそうです。
お祝い事に歌うお目出度い歌ですね。

「君は学校で習った?」
はい。
都市部の大規模校で普通に。
推測ですが、あの頃には『君が代』のイメージは
すっかり変わっていたのだと思います。
「経済成長で戦争のイメージが消えていた?」
というより、東京オリンピックが転機では。
「そうか、オリンピック!」
たぶん、私達を教えた先生達は、子供の頃、
金メダルを讃える荘重な「日本の国歌」を
誇らしく聞いたのではないでしょうか。


まことにちいさなくにが、
開化期をむかえようとしている。

欧米諸国と交際するために必要な儀礼として、
欧米諸国に習いニッポンは国歌を作りました。
ちいさな開化国は奮闘努力し、胸をはり、
戦い、傷つけ、傷つき、立ち上がり、困惑し、
それらはみんな国家としての歴史だから、
当然その象徴である国歌にも歴史がある。

「傷が歴史になるのは、世代がかわってからだ」
だから、サッカーの試合の前に、
若者達はみんなちゃんと国歌を歌います。
「金メダルの時には荘厳でいいけど、
試合前に歌うとちょっと淋しくなる曲だよね」
仕方ありません。
明治の日本人は、西洋音階の歌が歌えませんでしたから。
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by otenki-nekoya | 2012-01-17 21:20 | 音楽

きたないはきれい

今年の大河ドラマは初回視聴率が低いと言われていますが、
多くの人に知られているような歴史上の有名人が
まるっきり出て来ていないのですから、仕方がない事でしょう。

「舞台になる県の知事が『画面が汚い』と発言したというけど」
観光振興を目論んでいるでしょうからね。
「きたないかなあ‥‥私はきれいだと思うよ」

私も、美しい映像だと思います。
埃にまみれ髪振り乱し
泥にのたうつ民を見て
汚しと言うは、
「白川法皇‥‥」
いくらなんでもそこまで傲慢だとは言いませんが。

「画面がきれい」といえば、一世代後の時代の『義経』、
内容はともかく、いかにも平安絵巻といった華やかさでした。
もう十年以上前になりますが、平安末期の装束と
似たような名前の平家一門のキャラを把握するために
ドラマを挿絵がわりに見ながら岩波文庫版『平家物語』
原文で読み通したものでした。

世話になっておきながらなんですが、
壇ノ浦の合戦のクライマックス、
清盛の四男・平家の知将、知盛卿
(平家物語の中では猛将・教経)と
義経が舟の上で相見える場面、
タッキーとアベちゃんが刃を交え、
画面一杯に金粉が輝き舞い散る!
「あれはさすがに、『うそだー!』と言ってしまった」

現実を逃れ、虚構に美を求めるという気持ちもわからなくはありません。
「虚構?虚構に興味はない」
確かにゲームにもアイドルにも興味は持ちませんね。
でも、年末年始に思いっきり「虚構」にはまっていたではありませんか。

「‥‥仏像?」
日本が世界に誇る、美しい虚構のひとつだと思います。
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by otenki-nekoya | 2012-01-15 22:09 | TV
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日記


by otenki-nekoya
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