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サイドミラーにあごをのせ

やわらかな色合いの山々の一番奥が

ひとつだけまっしろになりました。


重荷を下ろした風が里に吹き付けます。



助手席の窓を全開にした軽自動車から

茶色の細い腕が出ています。

腕じゃない、前脚。


サイドミラーにちょこんとあごを載せて

マメシバが車内から身を乗り出して

寒風にあたっています。


この身を切るような風が身を切らないのか。

さすがに毛皮を着ているだけの事はある、

でも窓を閉められないから運転手さんが寒い──


あ、逆なんだ。


急激な冷え込みに、人間は当然、車の暖房を入れます。

毛皮に包まれた、汗腺の少ない、容積の小さな生き物は


のぼせた。


だから、サイドミラーに頭をのっけて冷やしている。

最初からマメシバ専用台のようにサイズがぴったりです。


そのまま軽自動車は何事もないように

細い路地から大通りへ出て行きました。



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by otenki-nekoya | 2014-12-05 21:40 | 散歩

彼岸の蝶

金色の日射しと真っ黒な影、

影は短くはなく長くなく、

建物の黒い影をつたって歩きます。


金色の日射しを受けて

金に黒の模様のアゲハチョウが

前を横切り、脇を通り、頭を掠めて

‥‥さすがに連れが気付きます。

「なんで住宅地の中にこんなにチョウがいるの?」


母親でしょう。


「え」

このあたりのお宅はもれなく一家に一本以上、

いわゆる酢蜜柑を植えていますね。

「うん。焼き魚とか鍋のときは庭でもいでくる」

その柑橘の葉がナミアゲハの子供の餌になるんです。

「ああー、卵を生みに来たのか」

これから冬を越して、春に孵ります。

「あの、春のちっちゃなアゲハ蝶ね」


公園のキバナコスモスにはモンキチョウが訪れ、

アカタテハがせわしなく舞い、

ヤマトシジミが低くちらちらします。

見慣れた蝶ばかりでも、

秋の彼岸の金色の日射しの中で

金色の花に華を添えています。


川岸に出ると、大きな夏羽がすり切れて

黒いレース状になったクロアゲハが

満開の彼岸花の上を真っ黒な影のように。


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by otenki-nekoya | 2014-09-23 21:36 | 散歩

七日目のマウス

夜遅いTVニュースに、連れが身を乗り出しました。
「えっ‥‥これすごい!すごいね!」
緑色に光る幹細胞の画像に、ぱたぱたテーブルを叩いて喜んでいます。
一年数ヶ月前の報道の時の訝しそうな反応とは正反対です。

今回は「場」が見えるから。
「場」を作った人達が脇を固めているから、
この研究は、この研究者は、信用できる。

ところで、何の細胞で成功したんですか。
「あ。出てない」
笑顔の記者会見の映像が
‥‥終わってしまいました。
「‥‥何の細胞か出なかった」
まあ、ニュースの構成上、重要点でなかったのですから。
「マウスだろうね。明日の新聞で見よう」


3Dプリンタで復元した三角縁神獣鏡が魔鏡だった、
というニュースもなかなか面白かったのですが、
翌日の一面トップはもちろん細胞の写真です。

「生後七日目のマウスだって」
ちっちゃい。
「マウスは三週間で大人になるから」
二十日鼠、ですもんね。
「人間だと七歳?」

七歳までは──神のうち。
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by otenki-nekoya | 2014-01-30 21:27 | TV

ひなた観音

里を囲む山はいちばん奥ひとつだけが白かったのに
今日はずっと手前の山が白くなっています。

海沿いではまるまるとしたイワシが目を貫かれ
ずらりとつり下げられて乾いた風に干されています。

冷たい風を避けて住宅地の路地を歩きます。
山の向こう側の向こう側の向こう側は
大変な事になっているでしょう。
夜のニュースで映像が出ると思いますが。

「屋根に上って雪を降ろすの?こわいね」
二階の屋根です。
「二階‥‥」
高い所の苦手な連れは聞くだけで脚がすくむようです。

そういえばこのあたりの旧い家の母屋は平屋が多いですね。
「段梯子を降ろせば上にあがれるよ」
それは貯蔵庫や蚕室で、居室ではないでしょう。


私が小さい頃住んでいた町では冬になると窓を厚い木の板で覆い
雪に埋もれる一階は地下室のようになりました。
だからどこも日があたるように二階建てで──

日はあたらない。おおむね冬の空は曇っています。
でも積もった雪が光るので、降っている時以外は
とても明るかった印象があります。
真っ白な中を遊び回りながら、コドモは楽しいからいいけれど、
ゆきかきやゆきおろしをするオトナの人たちはたいへんだなあ、

きっとそのうち、雪が降っても積もらない道や屋根が出来るから
だいじょうぶ!と思っていました。


「できなかったね」
技術が目覚ましく発展して行く中、日陰に残る雪のように。

影の落ちる路地で、日の当たるところを伝って歩きます。
明治に打ち壊された寺から、
からくも運び出されて難を逃れたという
重文の観音様がそこの小さなお堂に

「‥‥やっぱりこういうところがあったかいんだなあ」
お堂の格子戸の下の段にぴったり身を寄せ
黒いお面を斜にかぶったようなブチ模様の猫が
正面から射す冬日にあたって
溶け残った雪のように白く光っています。
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by otenki-nekoya | 2014-01-19 22:21 | 散歩

ひなた神

年が明けてからこれまでこの部屋で
日中に暖房を使った事がありません。
窓を開けていても日射しが当たると
衣服の黒い部分など熱くて痛いようです。

この屋根の上にもパネルはありますが、
太陽光に発電をさせて電気器具で温まるより
太陽光を熱源として使った方が効率が良いようです。
もともと温室園芸が盛んな土地です。

ただ温室効果を生む空気ではないので
日が陰ると都会よりもはるかに冷え込みます。
蓄電池のように蓄熱ができないものでしょうか。


日本海側を埋め尽くす湿った雲は
行く手に立ち塞がる山々に次々ふるい落とされて
この里を包む山の一番奥で最後の雪を落とします。
外に出ても風さえあたらなければ寒くはないのですが、
何層ものフィルターに漉された乾いた北風が吹いています。

遮るもののない海岸沿いは特に風が強い。
いつもガラス戸を閉め、何人もの高齢者が
テーブルを囲んでくつろいでいる小屋があります。

「あったかそうだなあ」
日の当たる居酒屋みたいですね。
「いや、こっち」
連れの指差した先に小さな鳥居がありました。
いつも通るのに、小屋に気を取られて気がつかなかったのです。
いつもは小屋の影にもなっているのでしょう。

風雨と潮に晒されて薄黄色になった白木の小さな祠の
段の中にすっぽりと薄黄色の猫がはまりこんで目を閉じています。
正面から射す冬日が当たり、祠と猫は黄金色に輝いています。

何の神様かはわかりません。
この地区の氏神様でしょうか。
眠り猫付きだから権現様か。

猫ぐるみ祠に手を合わせます。

そこの爺様婆様達とこの猫にいつも
暖かい日射しが降り注ぎますように。

「お賽銭が置けない」

それより、正面に立ってはいけません。
日陰になります。
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by otenki-nekoya | 2014-01-12 22:03 | 散歩

おそれいってみせる

「犬が面白かった!」
自転車屋さんで部品交換を頼んで来た連れが笑っています。
「店に入ると、小さな犬がものすごい剣幕で
わわわわわ、と吠えながら走り回るんだけど」
開けっ放しのたたきに立って見ていると、
「店舗とおじさんの作業スペースには絶対に入らない」
自分の領分を守っているんですね。

「見てると笑いそうになるんだけど、我慢して」
かわいい〜、と笑うと失礼にあたります。
「まいった、おそれいりました、という顔をしてみせた」
顔?
「勝った!と満足してくれたかなあ」
吠えやめましたか?
「おじさんが出て来たので、そこで打ち止め」

いくらドラマで流行ったとはいえ、
顔芸をしてみせて犬に気持が伝わるでしょうか。
「顔の表情じゃ犬にはわからない?」
姿勢を低くすれば敵意がないという表現になりますが。
「だったら、ヒトと一緒だ」

このごろは、過剰に謝罪や屈服の表現に使われますが、
手を下につくお辞儀は敬意を表す普通の挨拶の姿勢です。
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by otenki-nekoya | 2013-10-20 22:04 | 散歩

蝉の声

スーパーの菓子売り場や小店のウィンドウは
ハロウィンカラーで賑わっているというのに。


テーブルに向かい合わせた人物が
薄暗い喫茶店で会話する場面を思い出します。

むかしの人気アニメの劇場版のワンシーンなのですが。

やつれ果てた男性教師が、自分が感じている違和感を訴えます。
凛とした女性教師が、哀れむようにその考えをいなします。

(自分達はずっと前から同じ一日を繰り返しているのではないか)

 今日はいったい、何月の何日でしょうね。
 こんなものを着ておるとすれば、
 冬なのかもしれませんが。
 この汗は冷や汗なんですかね、
 それともこの陽気のせいなんでしょうか。
 それに。さっきからきこえているこれは

愕然とした女性教師の背後の窓から
樹木の緑の輝きと
大音量のセミの声があふれだす──


明日になれば、明日になれば、と思い続け
明日になっても今日と昨日とかわらずに。

いつまでたっても外気温は摂氏三十度を越え続け、
最低気温というのはたいていは日の出時の一瞬なので
夜の間はずっと暑く、毎晩結局夜中に窓を開け

そして毎日毎日ずっときこえているセミの声。

サクラ先生、教えてください。
今日はいったい、何月の何日でしょうね。
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by otenki-nekoya | 2013-10-12 18:50 |

鹿と走る

自転車で川の上流を走って来た連れが言いました。
「鹿がいた」

秋ですねえ。
「鹿は秋なの?」
鹿は秋です。

山がいつもと違う、と不思議に思い
山道で立ち止まったそうです。
山がとても静かだったのです。

「セミが鳴いていなかった」
先週まであんなに賑やかだったのに。
しーんと静まり返った中にしばらく立ち尽くしていると、
目の前の道に鹿が。
「立派な角だった」

道を下って行く鹿に、ついていくような形になりました。
「方向が同じだけなんだけど」
山の中の一本道なので。
「面白いからずっと後ろを走ってたけど」
下り坂をゆるゆると。
「だんだん可哀相になって」
山側も川側も急傾斜で、道を逸れる事ができません。
「ひたすらまっすぐ走り続けるんだもの」

ニホンカモシカなどは縄張りを守るために
わざとバイクに伴走したりすると聞きますが。
「一度斜面を見上げたけど、ちょうどそこは
コンクリートで固めてあって上れないし」
土砂留めですね。
「たまに広いところもあるんだけど、そこでよけたりしないし」
お先にどうぞ、と後続をやり過ごすような世慣れた鹿が山にいますか。
「犬は待つよ」
人は待ってやらないんですか。
「日が高くなったら暑くて走れなくなる」

鹿と自転車が連れ立って山道を下っていきます。
必死で逃げるというほどではない、
別に追いかけている訳ではない、
「道はカーブしてるし、もし車がきたらどうしようか、とか」
お互い少しだけ困惑しています。

「やっとガードレールの切れ目があって」
それまで崖が急なので、ずっとガードレールが途切れなかったのです。
「そこから飛び降りて」
川岸に向かって駆け下りて。
「薮がずっとがさがさ動いてるんだけど、もう見えなかった」


見ている人がいたら、名前をつけたかもしれません。
鹿にではなくて、鹿と一緒に走る人に、
ダンス・ウィズ・ウルブズ や、
ウインド・イン・ヒズ・ヘア みたいな。
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by otenki-nekoya | 2013-09-29 22:27 | 散歩

豚の如く

ニュース番組が終わったのでチャンネルをかえたら
赤い飛行艇が紺碧の海上を飛ぶアニメをやっていました。

久しぶりに見ると、主人公はタバコを片時も離さず、
ものすごい紫煙に包まれています。
この夏公開の新作は、タバコを吸う場面が多く
教育上良くないという文句が出たという事ですが。
「二十年前はそんな事問題にならなかったね」
全然意識していませんでした。

「タバコだけじゃなくて、相当メタボなのも心配だなあ」
それは仕方ないですよ、主人公はブタですから。
「え?ブタって太っているの?」

‥‥。
確かにこの夏は家禽は熱中症に、
家畜は夏痩せする暑さでしたが、
畜産家は大変な肥育の努力をされていると思います。

「実物を見た事はあまりないけど、ああいう動物でしょ?」」
豚からすれば豚は標準体型という事ですか。

実在する生物としての豚と、一般に人がブタという単語から
連想する共通イメージというものは別物ですから、
普通、人間の外観を嘲る時の形容に使われるでしょう。

連れは上を向いて少し考えてから、
思い当たったように言いました。
「あー‥‥ああ。使うね」

連れは悪口雑言を使った事がありません。
知らないというより、例によって
わざわざ考えた事がないのです。

「ブタさん、かっこいいなあ」
他所で絶対言ってはいけませんよ。

──かっこいいなあ、ブタみたい。
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by otenki-nekoya | 2013-09-06 23:17 | TV

白昼の鮫

本日の浜の漁はだいたい終わったようです。
浜の一番奥で最後の網が上がるのを、
人と鳥と作業車の集団が待っているのが見えます。
手前の空いた浜では休日の釣り人が一人、
竿を青い海に向けています。

大きく潮が引いた急斜面の下の砂地を、波をよけながら歩きます。
まだ四月なのに、こんなに日射しが強くなるとは思いませんでした。

干場の近くの道路に戻ると、漁具置き場のトラクターの荷台に
山積みにされ、崩れたまっ白い材木のようなものが何十本も

「サメだ」
私の背丈程の、ぴんとまっすぐに伸びたサメが何十匹も。
背は赤味がかっていますが、多くはまっしろな腹を上向け、
三角の口には純白の尖った三角の歯がぎっしり並び、
頭の先端はT字型に突き出した特徴的な形をして。

ハンマーヘッドシャーク。
シュモクザメです。

突き出した柄の先端を横から見ると
透き通ったゼリーに覆われたまんまるい大きな真っ黒な
目が。

こんなに綺麗に透き通ってこんなに綺麗に真っ黒で
目だけ見ていてもわからないけれど
でもこんなに棒のようにまっすぐ固まって動かないのだから

いきてはいないのです。
何のにおいもしないけれど、血の一滴も流れてはいないけれど、
いきていたら何十匹ものサメの山にいくら私でも足は踏み入れない。
真っ白く、まっすぐで、整った形をしているからまるで作り物のような、
端正な異形の鮫を触れる程間近で眺めます。

日射しが強いので干場では皆が忙しく干物を仕上げ、
観光客の車が立ち寄り、サメの山などにかまう人はいないようです。

暑いので、影の多い住宅地の中を歩きます。
「ハンマーというと‥‥カナヅチザメ?」
シュモクザメです。鐘木というのは
鉦をかんかん鳴らすときの木の槌です。
「金槌だと泳げないもんね。網にかかったのかな」
おそらく。シュモクザメは群れになります。
「あ、それであんなにたくさん。邪魔だったろうなー」
一応、カマボコになりますが。
でもまだ小さいですね。成体はあの二、三倍くらい。
「確かに、歯がまだ小さかった。でもあの歯だと」
人も襲います。
「いるんだ。そのへんに」


強い日射しで夏のようだった休日の
各地の賑わいを夜のニュースが報じています。
水族館の青い水の中の生き物を指差し、
歓声を上げる子供達と一緒になって連れが叫びます。
「あれ!あのサメ!」

画面をゆらりと横切り身を翻す巨大な鮫の、
T字型に突き出した頭部をカメラがアップにします。
目が、こちらを──見たような。

いきている。
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by otenki-nekoya | 2013-04-29 22:17 | 散歩
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日記


by otenki-nekoya
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