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みな人倫を明らかにする所以なり

今年の某公共放送大河ドラマは

番宣では「ホームドラマ」としていたので

ちょっと期待薄になっていたのですが。


「さすが長州だ!学問から入った!」


策略から始まる薩摩と揺れる幕府『篤姫』、

暗殺に始まり暗殺に終わる土佐『龍馬伝』、

滅びるのがわかっている会津『八重の桜』、

いずれも幕末ものは面白かったので、

人材豊富な長州には特に頑張ってもらいたいものです。


文字が空中に浮く演出が『蟲師』や『シャーロック』みたいですが、


 人性の善なるは、なお水のひくきにつくがごときなり。

 人、善ならざることあることなく、

 水、くだらざることあることなし。


一緒に歌おう、ではないですが、思わず『孟子』を唱和していたら、

いきなりヒロインに負けました(訳はドラマ版とは異なります)。

 

 痒とは養なり、校とは教なり、序とは射なり。

 夏に校と曰い、殷に序と曰い、周に痒と曰い、

 学は則ち三代これを共にす。


初回は「本」をめぐる話で、なかなか良かったです。


「子役達も、姿勢まで良く似せてあったねー」

山鹿流に「赤穂浪士か!」と突っ込んだら、ちゃんと

明倫館で「赤穂義士」の戦略について講義している声が入ってました。


ラストには良い意味での「そうせい公」が出て来て、

「この騒ぎは何の記録にも載せぬ」と、

フィクションのストーリーである事を

わざわざ念押ししていくのも笑えました。


しかし連れがドラマを見ながら

「あ、本を捨てた!」

「また本を捨てた!」

と叫ぶのですが、叱っているのではなく、

「捨てる」というのは地方語で「落とす」の意味のようです。



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by otenki-nekoya | 2015-01-04 22:46 |

アルミでできている

五歳だったと思います。


私は当時住んでいた家の二階の窓辺近くに座っています。

遊びに来ていた数人の友達は部屋の真中を向いています。


窓の右側の壁にコンセントがあって、


どういうわけかわたしはそこから

めがはなせなくなっていました。


子供の視点は低い。

コンセントは目の前です。

そばに、一円玉がありました。


私の目には

コンセントの溝の厚みと一円玉の厚み

コンセントの溝の薄さと一円玉の薄さが

まるでおたがいひきつけあっているようで


軽い銀色の硬貨を縦につまんで

コンセントの差し込み口に──



ばし、と衝撃があってコンセントから白い煙があがりました。

友達が振り返ります。


私の指に残ったのは

まんまるの一部が半月型に消えて

まっすぐになった縁が黒い一円玉



手のかからない、大人しい子供でした。

なぜこんなコドモのいたずらをしたのか、

自分でもあっけにとられてしまいました。


ショートした時のショックよりも、

魅入られたように一円玉を差し込み口に運んだ、

時間にしたらほんの数秒の感覚が今でも忘れられません。



TVのドラマで主人公が同様の行動をとり、

電源を落として危機を脱する場面がありました。


昼間だったのでわかりませんでしたが、

あのときもたぶんブレーカーが落ちたのです。

それで一階にいた母が上がって来たのでしょう。


母が語気強く言います。


一円玉はアルミで出来ている。

アルミニウムは電気を良く通すのよ。



文字にすると、今の私のような言い方です。

気付かなかったけれど。

似ている。


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by otenki-nekoya | 2014-12-10 21:48 | 普段

水平線のために

十月にはじまったTVドラマで

ヒロインが語る「野望」のひとつが


──水平線を見たい


島に囲まれた島の高校生なのです。


たまたま通りがかりにその台詞を聞いた連れが、

「このへんなら逆に」


──島を見たい


たしかに。

このあたりの海岸から見えるのは

山の他は海と空の水平線ばかりで、

いけどもいけども島影一つありません。


電車に乗ると、周りの乗客が

「わあ、地球が丸い!」と叫んでいるほどです。



前回、大学生になって島を出たヒロインが

旅先で水平線を見ながら

「はしからはしまで水平線っていうのが見たい」

と、少し野望を大きくしていました。


たまたま通りがかりにその台詞を聞いた連れは、

そのまま通り過ぎて行きました。



日曜の朝、いつも自転車で川沿いや海岸沿いを

走って来る連れの帰りが少し遅くなりました。


隣村の台地へ行ったのだそうです。

台地?登ったんですか?自転車で。


「登りきれなかった。途中で降りて来た」


自分の脚の力だけではなかなか辿り着けないでしょう、

てっぺんまでは


‥‥。

もしかして、見たかったのですか。


はしからはしまでの水平線が。



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by otenki-nekoya | 2014-11-16 22:42 | 散歩

すべてがエムになる

当時、座敷童のような子(私)がバスの中で読んでいたのは

岩波文庫の『遠野物語・山の人生』でした。


今、手持ちの角川ソフィア文庫『遠野物語』は

『遠野物語拾遺』と合わせて一冊になっています。


連れが買って来た集英社文庫『遠野物語』は、

カバーイラストはホラーコミック風ですが、

『涕泣史談』や『清光館哀史』などがセレクトされています。


その中の一編『女の咲顔』は

「エミ」と「ワラヒ」の違いについて考察されています。


「笑」と書いて「ワラヒ」、「咲」と書いて「エミ」

「咲顔」と書いて「エガオ」


‥‥今シーズンのドラマで工学部のお嬢様大学生を演じている

女優さんの名前、「サキちゃん」じゃなくて「エミちゃん」は

読み方に無理があるなあ、と思っていたのですが

そうだった!柳田翁が「エミ」と読んでいたんだった!


ドラマのキャストを聞いたとき、原作に合わせて

エミちゃん髪を切ったら偉いけど必要ないぞ、と思ったら

さすがにそれはしていませんでした。



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by otenki-nekoya | 2014-11-02 22:58 |

明治は続く(後)

散歩にはあまり向かない強風の吹く中、海沿いを歩きます。
昨夜、土曜ドラマ『足尾から来た女』の後編を見た、と連れに話します。

本当に石川啄木が登場しましたよ。
仰る通りイケメンで、寂しい詩を書いて。
主人公は啄木と仲良くなります。

でも、東京時代の啄木というのはまあ──
みなさま御存知の通り、と申しましょうか。
「貧乏」
それはほとんどの登場人物がそうで、
英子さんにしても与謝野晶子にしても雑誌は大赤字だそうです。
思想や芸術は金にならない、という話ではなくて、
啄木は友人に次々と借金をして、それを遊興費にあてる。
「‥‥すごい才能を持つ人って、なんというかそういうところが」

ダブル石川があまりにも「だめんず」なので、
かえって主人公の自立のきっかけになるという。

『足尾から来た女』は昨年の大河ドラマの続編と言えなくもありません。
官軍のつくった国は、こんな国になりました。
主人公の社会的地位は天と地の差がありますが、
自慢の兄がいる(本人のポテンシャルも高い可能性)
国家権力に故郷を奪われる
女性も勉学をするよう勧められる

主人公はラストのモノローグで、
病院で働くのもいいな、と思いながら東京へ戻ります。
英子さんのような社会活動家ではなくて、
傷ついた兵士の看護をする八重さんのように。


前編の一話だけで終わっても充分な程のクオリティの作品でしたし、
もう一話作って、「大逆事件」の衝撃を受けたダブル石川の
その後の活動を見せてもらいたかったという気も少し、します。

さっちゃんにはそんな事、関係ないか。
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by otenki-nekoya | 2014-01-26 21:48 | TV

明治は続く(前)

年も改まり大河ドラマも新しくなったというのに
頭の中がまだ明治から戦国に切り替わっていません。

いろいろ引っ張ってきた明治本もまだまだ山積みです。
来年はまた幕末になるそうなので、
それまで塩漬けにしておくべきか?

片付けに悩んでいる時、某公共放送のドラマの番宣がありました。
足尾鉱毒事件?‥‥まさに今日的な題材とも言えますが、
いかにも視聴率取れなそうです。
明治の話だから見てみましょうか。

去年の大河ドラマは日露戦争直前で終わりましたが、
土曜ドラマ『足尾から来た女』は、
まさに日露戦争直後からはじまりました。

最初は、ながら見をしていたのですが、
途中で通りかかった連れを呼び止めます。
凄いですよ、村を出た主人公が女中勤めをするお宅ですが。
さっき宴席に居たのが幸徳秋水、堺利彦、大杉栄‥‥。
「へえー!幸徳秋水!堺利彦!それから誰って?」
連れも驚いて、立ち止まって復唱します。
「北村ユキヤは?何の役?」
さあ‥‥石川君と呼ばれてましたが。
「石川?石川啄木?」
その手があったか。
でも、いくらなんでもこの場に啄木はいないでしょう。
イメージも違うし。
「だよね。啄木はもっとイケメンだ」
‥‥えー、誤解のないよう申し上げておきますが、
ユキヤ氏は連れも大変贔屓の俳優さんです。
昨年大河の最後の方では、
屋敷を訪う一声を聞いただけで誰だかわかって
「あっ!懐かしい声だ!」と大喜びしたくらいです。

「大体、鈴木ホナミは何者なの?」
それが、若い頃は自由党、今は平民社と関わる
女性解放運動家・福田英子で。
「なるほどー、鉱毒事件の縁ね」

石川君(石川三四郎でした)も逮捕され、
村に戻った主人公の目の前で生家が取り壊されます。
県の役人として立ち退きを執行する兄が
自分が二〇三高地で使ったという銃弾を見せ、
「この弾は足尾の銅で出来ている」と諭します。
だからって。だからって、と叫び続ける主人公。

「こういう役をやらせたらオノマチコの右に出る者はいないねえ」
彼等に近づく、黒紋付に白い髭をなびかせた老人──田中正造、
不穏な一団の下に出る『続く』の文字。
「えっ、これ、続きがあるの?」
前・後編らしいです。
「なあんだ」
確かに、この悲壮な対立場面で終わり、でもいいくらいです。
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by otenki-nekoya | 2014-01-26 21:43 | TV

会津に斃る

中学の頃、狐狸庵先生の作品は少し読んだけれど
安岡章太郎作品は読んだ事がありませんでした。

今年訃報に接し、増刷が出るだろうから読んでみようと
思ったのですが、いつもの書店には一冊も入りません。
有名作家に対しても、時代というものは過酷だなあ。
「追悼」の帯の巻かれた『流離譚(上・下)』(講談社文芸文庫)を
みつけて中も見ず買ったのは秋になっていました。

読みはじめて驚きました。
しまった。もう少し早く読んでいれば。

作者の先祖である、地方郷士達の物語という紹介と、
浪漫的な響きのタイトルからか
なんとなくノスタルジックなものをイメージしていたのですが

先祖の私的小説などではなく、幕末動乱の渦中に身を投じた
安岡兄弟の行動を辿り、詳細な資料に語らせる維新史というか。
それこそドラマ『龍馬伝』でお馴染みとなった人物達が
史実としてぞろぞろと絡んできます。
そのうえ後半、安岡兄は板垣退助率いる土佐迅衝隊の参謀となるので
「奥州攻め」が克明に記されています。
こ、この本で会津のお城を攻める事になるなんて。
八重さんすまぬ、これも巡り合わせいうもんぜよ。

まだ読みかけなのですが、これは読むべき、と連れに上巻を貸すと、
「昔の文章がいっぱいだ。これは私には読めないよ」
それはまあ、安岡兄弟の手紙をメインに、
同時代の記録を付き合わせた構成ですから。
ちゃんと大意は本文でも書いてくれているので、
資料部分は読めなくても大丈夫‥‥
とはいえ、あまりに詳し過ぎ、関心の有る事件でないと
読むのが面倒、という感じはあります。

この慎ましい白い帯に、煽りのコピーを入れられないでしょうか。

『弟は 吉田東洋の 首を取った男
 兄は 会津の戦に 斃れた男』

「ええっ‥‥勤王党だったの!」
だから。流されるのです。
ほんのはずみから、とめどもなく流されてしまうのです。
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by otenki-nekoya | 2013-12-22 22:23 |

会津の姫君

今年の大河ドラマは最終回だというのに、
主人公の人生はまだ四十年近くありますが。
「最期までやらないんじゃない?」
そういう時もありますね。

その通り、ドラマは日露戦争前までで終わり、
後日譚は最後の紀行コーナーで説明されました。
容保公の孫が皇室に迎えられたと聞いて
連れが感慨深げに言います。

「ああ、よかった!完全に賊軍の汚名は消えたんだ!」

この方は白洲正子の女子学習院初等科以来の仲良しで。
「シラスマサコ‥‥えーと」
白洲次郎の奥方の。
「あ、伯爵家令嬢」

次郎が東北電力会長の時、只見川ダムの式典に招く
スペシャルゲストは誰が良いだろうという事で、
正子が妙案を思いつくんです。
宮様になった松平節子様にお願いしてみよう。
「昭和天皇の弟のお妃だよね」

当日。駅前の通りに紋付姿の御老人が
ずらっと平伏して。

「‥‥。会津の姫様のお里帰りか」
九十年近くの歳月が流れていたとしても。
一同の感激いかばかりか。

主役の出番が少ないとか話が難しいとか言われても
根気よく会津視点でドラマを続けた意義は大きかったと思います。
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by otenki-nekoya | 2013-12-15 22:10 | TV

鹿鳴く館

全国紙の一面コラムが、日本シリーズの話題に絡めて
中井桜州のロンドンでの珍英会話譚を載せていました。

このひとですよ。
明治元年に英国公使ハリー・パークス卿が
帝に謁見に向かった時、行列に切り付けた凶漢と
激しく刃を交え、後藤象二郎の助太刀でその首を取った。
「あ、中井弘。県知事になったんだ!」

留学していたのは幕末ですから、二十前後の事ですね。
「幕末?密航じゃない」
ジョーと違って、薩長は藩でグルです。
「エピソードは面白いけど、話の流れとしては無理があるなあ」
東北チームの外国人選手を讃えるのに、薩摩藩士の逸話。
「なんで中井さんを持ち出したんだろう」

もしかしたら、「鹿鳴館」の印象が筆者の中にあったのかもしれません。
「鹿鳴館?そういえばこのあいだ大河ドラマで出て来た」
『鹿鳴館』という名前をつけたのが、桜州なんです。
「へええ!じゃあ井上馨とも仲が良いんだー」
井上は中井の奥さん取っちゃったんですけど。


猛攻を受ける鶴ヶ城に篭城した、会津家老職・山川家の幼い娘が
麗しのレイディに成長して十年ぶりにアメリカ留学から戻り、
ドラマの前々回にはついに、
あろうことか鶴ヶ城を攻めた薩摩の砲兵隊長・大山巌が求婚し、
当然の大反対にもへこたれず、
目出たく鹿鳴館の華とうたわれた大山捨松が誕生しました。

「書き手の人は、大河ドラマで『鹿鳴館』の回があったので
『東北』から会津、薩摩から中井を連想した──ということ?」
奥州から桜州とか。
それはわかりませんが、コラムのテーマは、
少々ヘンな外国語でも通じあえる、ですよね。

「捨松は日本語だいぶ忘れてたしね」
それは関係──あるかどうか。
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by otenki-nekoya | 2013-11-06 22:01 |

おそれいってみせる

「犬が面白かった!」
自転車屋さんで部品交換を頼んで来た連れが笑っています。
「店に入ると、小さな犬がものすごい剣幕で
わわわわわ、と吠えながら走り回るんだけど」
開けっ放しのたたきに立って見ていると、
「店舗とおじさんの作業スペースには絶対に入らない」
自分の領分を守っているんですね。

「見てると笑いそうになるんだけど、我慢して」
かわいい〜、と笑うと失礼にあたります。
「まいった、おそれいりました、という顔をしてみせた」
顔?
「勝った!と満足してくれたかなあ」
吠えやめましたか?
「おじさんが出て来たので、そこで打ち止め」

いくらドラマで流行ったとはいえ、
顔芸をしてみせて犬に気持が伝わるでしょうか。
「顔の表情じゃ犬にはわからない?」
姿勢を低くすれば敵意がないという表現になりますが。
「だったら、ヒトと一緒だ」

このごろは、過剰に謝罪や屈服の表現に使われますが、
手を下につくお辞儀は敬意を表す普通の挨拶の姿勢です。
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by otenki-nekoya | 2013-10-20 22:04 | 散歩
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日記


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