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南の空 北の海

いつもは海風が強いのに、今日は風が全くなく、
曇って日射しもないのにじっとりと汗ばむ暑さです。

商店街の店の多くはお休みです。
タクシー店の前を通りかかると、
甲高いおしゃべりのような聞き慣れた鳴き声が。

ガレージの中をのぞきこみますが、視認はできません。
でも間違いない、三月十日、ツバメ到着初確認です。


風がないのに。
海は荒れていました。
いつもは海岸に垂直に寄せる波が、
斜めの方角から高く打ち付けています。

どこか遠くで。
たぶん北に大きな低気圧があって。
その嵐の波がここまで届いているのです。
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# by otenki-nekoya | 2013-03-10 21:37 | 散歩

こがも

このあいだまでくっきりと見えていた山々が白く霞んでいます。
樹々が呼吸を始めたのでしょうか。

白い雲に覆われた空は、昨日は黄色っぽく見えていました。


明るい黄緑色の線は芽吹いた柳の枝です。
「みたことのない鳥がいる!」
暗い川の水面に一瞬、
鮮やかな赤い顔が一羽、
続いて可愛らしい茶色の斑が一羽。

コガモのつがいですね。
「ちっちゃい!」
コガモですから。
「つがいって、子供なのに?」
なんで冬にヒナが育つんですか。
子鴨ではなくて、小鴨、
河口に群れているカモ達の仲間では一番小さい種類です。
「それにしても小さいな」
普段トビとアオサギばかり見ているからでしょう。

「もう北に行くの?」
北へ行って卵を産んで、小さな子鴨を育てるんです。
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# by otenki-nekoya | 2013-03-10 21:30 | 散歩

わたしゃ立つ鳥

おとといの春一番で海が荒れたのか、
海岸に流木が波の形で並んでいます。

今日は波打ち際すれすれに濡れた砂地が現れて、
土間の上のようにとても歩きやすい。

二羽の鳥が穏やかな海の上を飛ぶのを見て、
連れが不思議そうに言います。
「見慣れない鳥だ」

カモメですよ。
「カモメ?」
空の中の輪郭を目で追います。
「本当だ、カモメの形してる。
でもこのへんにはいないよね」
冬鳥ですから。
「北からくるの?でも冬でも津軽海峡に居るじゃないか!」
ですから、もっと北。


あ。
群れが。
西からゆったりと間隔を取ったカモメの群れが、
あとからあとから。
目の前の青い海の上を東へ。

群れの流れを遡るように砂浜を歩きます。
「飛んでると身体は小さく見えるけど、羽が大きいね」
明るい空の中を飛んでいるので、
真っ白い胴と翼の先の黒しか判りません。

ようやく何百羽かの群れが通り過ぎ、
東の常緑の岬を越えて白い影がきえてゆきます。
「すごい、地面すれすれを飛んだのがいた」
魚でもいたのでしょうか。
「カラスやトビより飛ぶのが上手い」
道路の方から海を見たら、海鳥の群れが波打ち際の私達を
よけて飛んでいるのがわかったかもしれません。

 おきのかもめに しおどきとえば
 わたしゃたつとり なみにきけ ちょい


「北に帰っちゃったのかなあ」

朝は寒いけれど、もう春です。
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# by otenki-nekoya | 2013-03-03 21:49 | 散歩

りゅうぜんこう

三方を山に囲まれて、花粉の雨が降るようです。
この時期、外に出るには海辺を通るしかありません。

白く日に晒された白木の扉を閉ざし
周囲に溶け込んだ小さな祠を眺めていると、連れが言います。
「海沿いに自転車で走っていると、ぽん、ぽん、と、
どこまでいってもおんなじようなのがあるよ」
小さな鳥居と小さな祠。鳥居に掲げられた額。
「ぜんぶ、えびす神社って書いてある」

海の恵、海からの漂流物はことごとく『えびす』と呼ばれるのです。

潮が満ちているので、大きな丸石をごろごろと踏みながら
流木以外の漂流物はほとんどない波打ち際を歩きます。

「このまえ、イギリスの海岸で犬の散歩中に
なんか珍しい香料を拾った人がいたでしょ」
ああ、アンバーグリス、龍涎香。
「香水とかに使ってた、ものすごく高いものだってね。
いっせんまん?」
そんなにはしません。

数年前、土俗的な恐怖を感じさせる作風の女性作家の短編で、
やはり海岸で龍涎香を拾ったけれど
高価なものを手に入れたというので人間関係は不和になり、
あげく流通ルートを外れているので買い取り手はない、
という忌々しい話を読んだ事がありますが。
今ならネットで話題になれば高く買ってもらえるのかもしれません。

このへんにも落ちてないかなあ、などと
足下を探すような面倒な事ははなから考えず、
青い穏やかな海を眺めながら歩きます。

「その香料、クジラがつくるって本当?」
抹香のような良い匂いの香を持つ鯨だから抹香鯨、と言うのです。
マッコウクジラがダイオウイカを食べると
嘴のところが消化できないから、分泌物で固めて
「ダイオウイカ?えっ、でもダイオウイカは千メートルの深海にいるでしょ」
そうです。
「マッコウクジラって20メートルもないよね」
18メートルくらいですか。
「そんなに潜れるの?」
潜れますよ。
「息できないよ」
止めます。
「千メートル往復を?」
一時間止めます。
「すごいなあ」

初めて龍涎香やダイオウイカの事を知ったのは
子供の頃に読んだ父の蔵書の澁澤作品あたりでしょうか。
こんな知識を現実の世界に持ち出す事は
生涯あるまいと長い間思っていたのに。

TVの画面にその姿が映し出されて
「りゅうぜんこう」「だいおういか」
こうやって現実に口に出せる日がこようとは!

穏やかな海面からはその下の宝を窺う事はできません。
あのずっと先の、と連れは水平線を示します。
「海底にはレアアースもいっぱいあるんでしょ」

それは五千メートルの深さです。
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# by otenki-nekoya | 2013-02-24 22:40 | 散歩

さといもソースグラタン

このあたりの旧い農家は床下に
土を四角く掘抜いた昏い穴を隠していて

その名は「いもつぼ」。
いわば大きい床下収納なのですが、
秋に収穫した芋を保存しておくと
凍みず温もらず良い具合で、
特にサツマイモは数ヶ月かけ水分が抜けて
味が凝縮されてより美味しくなるそうです。

そんな収蔵設備はないけれど。

寒い部屋の籠の隅にいくつか残っていた里芋を、
ポタージュにしようとしなびた部分を削り、
白いきれいなところを電子レンジで加熱し、
少しの牛乳を混ぜてミキサーにかけると

あれ?いつもの灰色で里芋の香りのするポタージュではなく
真っ白でにおいのないもったりしたペーストができました。
スプーンですくって食べてみると

これ、まるっきりホワイトソースじゃないですか!

予定変更。
出初めの新タマネギと海老を電子レンジで加熱、
茹でたマカロ二と里芋のソースであえて
粉チーズ、パン粉、パセリを散らして
オーブントースターで焦げ目をつけたら

バターで作ったペシャメルソースに遜色ない
堂々たる海老マカロニグラタンができました。
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# by otenki-nekoya | 2013-02-23 22:29 |

真剣勝負

一月のセンター試験直後の受験生達の叫びが
「『現代文』が、まるで意味わからん!」

古文・漢文じゃなくて現代文が?
どんな問題だったのだ、と翌日の新聞を見ると
おお、小林秀雄ではありませんか。
日本刀の「鐔」の魅力を語った随筆です。
うわあ、やっぱり渋くて佳いなあ。

刀の「鐔」が(注)の欄に親切に図で説明されています。
「鐔」が判らない人が‥‥そうか、いるかもしれないのか。
現実に古びた鉄の骨董品を「どうだ、いいだろう」と
いきなり見せられても普通の高校生なら困惑しますよね。
ただでさえ曖昧と言われる文体のうえに、
テーマが馴染みの薄い古美術では、難儀した人も多かったことでしょう。

 問3 「どうも知識の遊戯に過ぎまいという不安を覚える」とあるが、
     そこには筆者のどのような考えがあるか。

そのような質問に答える事こそ、
知識の遊戯に過ぎないのではないか。
ただ、マークシートの選択問題は、
本来の著者の思惑とは関係なく、
出題者が望む答えを選り分ければ良いので、
本文が理解できなくても動転する程の難度ではありません。

その後、国語の平均点が小林秀雄の難解な文章のせいで
十六点も低くなった、と大きな話題になりました。
私達にとって「小林秀雄」、特に『考へるヒント』などは
受験のための必読書だったのですから、
同じようにショックを受けた人は多かったようです。

「どんな問題?」
懐かしい「難解なる名文」について
あちこちで取り上げられているのを読んだ連れが尋ねます。

いやあ、ものすごくかっこいいですよ。
取って置いたセンター試験問題を渡します。

「‥‥これは、体調が良くないと読めないような文章だ」
ああ、なるほど。
いわば真剣勝負ですからね。
殊に、実戦用の刀の鐔が主題だけに、
鋼が斬り結ぶ音が響くようです。
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# by otenki-nekoya | 2013-02-10 21:30 |

無常といふ事?

キーン博士の日本文学史(中公文庫)、
江戸の初期から昭和までが完結した後、時系列的には最初に戻り、
古事記ではじまる古代・中世篇(訳/土屋政雄)の刊行がスタート。
地元の書店さん、また入荷よろしくお願いします。


それはそうと 近代・現代篇九(訳/角地幸男)最終巻は、
明治から昭和の「演劇」と「批評」だったのですが、
この「批評」の「昭和時代」の項目で爆笑しました。

詳しく紹介された批評家はただひとり。
「小林秀雄」にのみ四十六頁を費やし、
「その他の批評家」に六頁足らず。
‥‥。
この極端な括りは、結局小林の影響を受けなかった
批評家はいないから、という理由だそうです。

正直なところ。
評価の的確さだの明快さだのというたぐいの資質より
それが評論であれなんであれ小林の文章そのものが、
文学作品として優れて美しいからなのでしょう。

『小林の批評は(中略)
 そこに取り上げられている書物および人物が
 忘れ去られてしまった今もなお
 変わる事なく読み続けられている』


変わる事なく読み続けられていると思っていました。
今回のセンター試験で、昭和世代が驚く事態が起こるまで。
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# by otenki-nekoya | 2013-02-10 20:42 |

かざはな

うすあおいそらに強い風が吹いて
はなびらよりも小さな白いものが
ときおり風に舞っています。

二月になってからずっと暖かく、
二十度を超えるような日さえあって
植木鉢のあちこちから去年種を落とした
青紫蘇の芽がたくさん出ました。

でもこの暖かさは本当の春ではないのだと
油断するなと自分と小さな緑の芽に言い聞かせていました。


西の方ではうっすらと雪化粧する事もあるそうですが
このあたりではこれだけ冷え込んでも
幾重にも山に護られて雪を見ることはまずありません。

雪と呼ばれるほどでもない、
地に落ちる前に消え
何かに触れても消え
ただ風に舞い虚空にあるときだけ
白く在る風花。
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# by otenki-nekoya | 2013-02-08 20:40 |

まふゆの逃げ水

真っ青な空の中に目には見えませんが
透き通った冷たい風が吹き付けて
真っ青な海の中に細かな銀のさざ波が輝きます。

遮るもののない冷たい強い風と強い日射し、
魚を干すのにはうってつけの日です。

海沿いの道を走り抜けた自動車を見やると
行く手の地面に自動車の色が映ります。

立ち止まって見ると道路の先が水に濡れたように
青空と真っ赤なアロエの花を映しています。

逃げ水です。
まなつの酷暑の中で見るような。

そうか、温度差ができているのです。
強い風が吹き続けて地上の空気はとても冷たい。
強い日射しの当たるアスファルトに
接する部分の空気は温まって
その境目で光が曲がる。

海でもこの時期冷たい空気と
比較的暖かい海水に接する空気との間に
浮き島やだるまのように連なった太陽が見えるそうです。

干場に停まった自動車に近づくと、
地面に映った車は消えます。

ポリ袋を嬉しそうに覗き込みながら
観光客が車に戻ってきます。
今日の干物は一段と良い出来でしょう。

作業所の屋根一面に吊るされて揺れる
銀の鰯を見上げると、青空の中に
真っ白い猫がするするっと上がっていきました。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-27 21:49 | 散歩

いちがつのいちご

この冬は十二月から「真冬並みの寒さ」に襲われ続けたので、
本物の真冬なのに日が長くなったぶん春めいて感じられます。

この寒中に、このあたりの温室イチゴが
出荷シーズンに入ったようで、
産直市にイチゴのパックが並び、
カフェを併設した駅前のパン屋さんは
ぴかぴかのいちごを載せたタルトと
いちごだいふくパンなる季節商品を並べています。

公園の向かいのケーキ屋さんはイチゴ祭りと称し、
イチゴのショートケーキやイチゴのムースや
イチゴのロールケーキの幕で囲まれています。

みんなどれだけイチゴが好きなんだ。

連れがケーキを買って来てくれました。
「ガなんとかとフレーズとかなんかそんなの」
ガトー・オ・フレーズ。
「そうそう」
いちごの、ケーキ。

真っ白い雪のような生クリームの中に、
真っ赤ないちごが載っています。

単純にして完璧。
おそれいりました。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-20 21:32 |

謁見

昔からさんざんネタにはしたけれど、
とは言っても寿司ネタではなく話の種で。

その馴染み深くも実体を見る事のなかった
深海の怪物がついにカメラの前に姿を現し、
某公共放送でその映像が映し出されました。

前哨戦の無人カメラにひらり、ひらりと
まごうかたなき『触手』が映ると、
画面を指差して“more!more!”と叫ぶ撮影クルーと
こっちも一緒になって騒いでしまいます。

クリスマスツリーのオーナメントのような
ガラス玉の潜航艇がしだいに暗くなる海に潜ると
餌にがっしり食らいついた巨大生物が。

これが。
これがこれがこれが。
我らが大いなる王。
我らが邪なる神。

金属光沢をたたえたイキモノに見入るうち、
じわじわと潜航艇は深みに引き込まれます。
潜水限界間際で僅かに制動をかけると、
抵抗を感じたのか、イキモノは身を翻し
深度千メートルの闇に消えました。

ふう。

先生、次は是非マッコウクジラとの対決場面を。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-13 22:38 | TV

緩む日

天と地の間が全く素通しのこの時期には珍しく
どんよりと雲が空を覆うと
まるで毛布をかぶったように暖かく感じます。

昨冬は姿を見せないと心配された小鳥達は
この冬は何事もなかったかのように現れて、
黄色いセンダンや白いナンキンハゼや
赤いピラカンサやクロガネモチの実を
早くも食べ尽くしそうな勢いです。

空も海も重く静かです。
久しぶりに波の縁を歩きます。
漁の一騒動が治まった後らしく、
たくさんのトビやカラスや冬鳥のカモメが
じっと浜で休んでいます。

寒くないので身体の緊張が解けたのか
たくさんの猫が思い思いの場所でとろんとして
人間の子供達もあちらこちらでぼうっと立っています。

冷たい風も強い日射しもない中で
干場一面に広げられた釜揚げちりめんじゃこは
今日は乾くのに時間がかかるでしょう。

沖には船がいくつも見えて
中に一見櫓をたてたようなものがあります。
海底かなにかの調査でしょうか。

こちらがわは生き物があふれています。
むこうがわも見えないけれど
底を網ですくえば生き物があふれ出ます。

でももっともっと沖の
ずっとずっと深い所は
とても淋しいところで。

その淋しい世界に君臨するものを
捉えた映像が見られるそうです。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-13 22:37 | 散歩

えびすをさがす

正月二日だというのに、
真っ青な海の上に何隻も船が出ています。

今日は冷たい風ではなく
暖かい日射しの方の干物日和です。
浜の干場では干し上がったばかりの
真っ白なちりめんじゃこをトロ箱に山盛り、
棚のように段になった台車にずらっと並べ
透明な幅広のビニール帯で
台車ごとぐるぐる巻いて固定しています。

一台に何億匹のじゃこが載っているのでしょう。
海に面した干物の作業所には
観光客の車も時々停まります。

‥‥たしかこのへんだったと思ったのに。
通り過ぎたかな。

元日のTV番組で、福の神が自宅に押し掛けるという場面があり、
この際、七福神を覚えようと連れが一生懸命見ていました。
「ほたいさん」
ほていさまです。
「ほてい?ぬのぶくろって書いてあるよ?」
袋は確かに音読みではタイですが、
『ほてい腹』という言葉があるでしょう。
「ほていさんか。弁天さまと寿老人はわかる。
‥‥ほていさんと似たような神様はどこが違うの」
頭巾をかぶって、打ち出の小槌を持っているのが大黒天。
「ちゃんと服を着ている人ね」
えびすさまは──

実物を見てもらおうと思って、
海岸に面した祠を尋ねて
いつもの道を来たのですが。

「目立たないの?」
祠は白木で目立ちません。
「目立たない神様は佳いね」

そのまま歩くと高い段の上に
白塗りの小さな祠が見えました。
「あれがそう?」
違います。あんな赤い柱ではありませんでした。
「恵比寿神社って書いてあるよ」
海に面しているから、このへんはみんなえびすさまです。
小さなコンクリートの段を上り、祠の格子戸から覗くと、
小振りで古めかしい、傷ついた恵比寿様が。

もしかしたら。
昔、波に流されて。
それで祠をこんなに高くしたのではないでしょうか。

古いえびすさまの足下に、なぜかさらに小振りな
新しい恵比寿様と大黒様が、2セット。
‥‥えびす、だいこく、えびす、だいこく、えびす。
目出たいのだかなんだかよくわからない混雑ぶりです。

お賽銭をあげて段を降り、もとの方角へ戻ります。
いつもの道のえびすさまは見落として通り過ぎたのでしょう。

干場に戻ると、作業所の並ぶ間にちゃんと
丁度の高さの祠がひっそりとありました。
やはりさっき、山積みのちりめんじゃこに目を奪われた所です。

閉じた格子戸越しに覗き込んだ連れが、
ほこらいっぱいに詰まった像を見て
「大きいなあ!」と驚きながらお賽銭をあげます。

私達はこの目の前の海から上がるもので
生計を立てている訳ではありませんが、
私達の身体はこの目の前の海から上がるもので
もう何割かが出来ているので、
拝見してもかまわないでしょう。

小さな賽銭箱を手で寄せて、
格子戸を開け放ちます。

えびすさまは小脇に大きな鯛を抱え、
去年は空だった手に、節の多い竹の先を細工した
新しい竿を握らせてもらって破顔しています。
足下にたくさんの餅、米、酒。

「いい笑顔だね!」
連れは更にお賽銭を百円追加します。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-02 22:49 | 散歩

御神鏡

今年最後の瞬間を映すTV画面をみつめ、
除夜の鐘の音を待ちます。

‥‥‥‥。

鳴らない。

大勢の初詣客が粛々と並ぶ彼方の屋根は

──伊勢神宮

ああっ、冒頭が神社の可能性を考えていなかった!
「神社は鐘がない?」
神社は鈴です。
除夜の鐘がないと気付いてこれだけ動揺するなんて、
我が身は余程煩悩に塗れているのか。

「仏像もないね」
御本尊ではなく、祭神はあまてらすおおみかみ、
御神体は八咫鏡──

「カガミ?それって、もしかして壇ノ浦で」
剣は沈み、鏡は浮いて。
「時忠が救った功績、というあの御神鏡?」
あの鏡かどうかはわかりませんが。

などと騒いでいるうちに被災地の寺や清水寺、
浅草寺などが紹介され、年が明けました。

TV画面に映る伊勢神宮内宮の屋根に向かい
柏手を打ちます。

かみさま。ほとけさま。そしてみなさま。
本年もよろしくお願い申し上げます。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-01 21:31 | TV

いつしかとしも すぎのとを

いよいよ今年も残すところ数十分、
恒例の某公共放送歌番組では締めに
全員で『蛍の光』を合唱、指揮は平──

という大詰めで、連れが思いがけない事を言い出します。
「『蛍の光』って、国歌だっけ」

‥‥曲はスコットランド民謡ですけど。
「国歌じゃないの」
どこの国民ですか。

大相撲千秋楽、優勝力士を前に観客が起立して
♪ほたーるの ひーかーあり とご唱和したら
「‥‥みんな帰るね。そうか、違うか」


 いつしか年も すぎの戸を

小学校の黒板に『蛍の光』の歌詞が縦書きで書かれ、
「すぎ」の横の部分に黄色いチョークと青いチョークで
二重に線がひかれている光景が思い出されます。
どうして二色で‥‥ああ、そうだ。

「『杉の木の戸』の『すぎ』」と青いチョークを引き、
「『時が過ぎる』の『すぎ』」と黄色いチョークを引いて、
「この『すぎ』にはこの二つの意味をかけてあります」と
女の先生が説明してくれたのでした。

連れはこういう事に全く関心のない小学生だったのでしょう。

国歌斉唱、と言われて『蛍の光』をうたっちまったぜい。
わいるどだろぉ。

 あけてぞけさは わかれゆく。

クラッカーがはじけ、TVの画面は
大ホールから聖域の夜空に変わります。
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# by otenki-nekoya | 2013-01-01 21:24 | 音楽

趣味の餅搗き

年越し蕎麦の袋を下げて外階段を上がっていると、
連れが向かいの家のガレージの中に目をとめました。

作業用のテーブルを並べて、ゴム手袋に晒、
「あれ、お餅をつくんじゃない?」
餅搗き?
こんな住宅地の中のガレージで?
「蒸し器がある。まちがいない、もちつきだ」

先日新聞に、帰って来た内閣のメンバー紹介が載っていました。
戦国武将の子孫として有名な方の趣味が「餅つき」とありました。

趣味が「餅つき」。
ううむ、勇壮なところが戦国武将ぽいといえば、どことなく。

そういえば、実家に石臼があるはずです。
「うちにもあるよ」
昔はだいたい各戸で餅を搗いていましたからね。

あとは杵さえ調達できれば。
運動になるしつきたては美味しいし、
蕎麦打ちにつぐホビーの王道になりうるかも。

住宅地の中の一見普通のお宅のガレージで、
休日になるとあちこちで
ひそかに餅が搗かれているのかもしれません。
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# by otenki-nekoya | 2012-12-31 21:56 | 散歩

幼帝の陵

大河ドラマでは番組の最後に
ドラマゆかりの土地を紹介する
小コーナーがあります。

最終回は壇ノ浦の赤間神宮。
海から引き上げられた安徳天皇が
祀られたという碑があります。

「本当かな?」
このあたりの山でも、
安徳天皇の墓だの平家の隠れ里だの
落人伝説はいっぱいありますからね。

‥‥あっ。
雨の夜、安徳帝の墓の前に坐り、
琵琶をかきならす芳一のまわりの
塚の上におびただしい数の鬼火が

「うわあ。ここかあ」
『七盛塚』。平家の男子の多くは、名が■盛だから。
「あれ?お寺じゃなかった?
お坊さんが身体にお経を書いてくれたんだよね?」
たぶん例の明治の廃仏毀釈で。

「怨霊がまた呼びに来たらどうするの」
宮司さんに祓ってもらってください。


星辰が正しい位置についた時、
海の底の都は再び浮上するのです。
「何の話?」
‥‥別の話です。
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# by otenki-nekoya | 2012-12-23 22:34 | TV

長門国壇浦、赤間が関

青い海に波一つない秋の日の事でした。

それでは、有名な『みみなしほういちの話』を
ご存じないのですか。

あかまがせきに住む盲目の琵琶の名手の物語を。

源平のいくさの何かも知らぬまま
六歳の時に読んで以来、
私の身体に書き込まれたような物語を
青い海の横を歩きながら連れに話して聞かせます。

「その、高貴な方々ってつまり、ニイノアマとかトモモリとか」
そうでしょうね。
「自分たちが死ぬ話をわざわざ聞きたいかなあ?」
‥‥自分がモデルになったドラマには興味がありませんか。
といいますか、執着があるのです。怨霊ですから。


視聴率が低いとさんざんに言われはしましたが、
源平の武者がヒーローだった祖父達の時代ではないので、
国民の十人に一人が見ていれば凄いものだと思います。
今年の某公共放送大河ドラマが終了しました。

壇ノ浦の合戦のおり海底に沈んだ
三種の神器の一つ、草薙の剣を
若かりし姿の主人公が水底で手にすると
きらびやかな平家の館に一族が
にこやかにうちそろって出迎えます。

ああ、
浪のしたにも都のさぶらふ。

この方々なら、琵琶の上手が居ると聞けば
具して物語を聞くでしょう。

それにしても、このラストシーン、
‥‥映画たいたにっく?

‘あそびをせんとや’、のうたが
突如頭の中できりかわって

♪ゆあ ひや ぜあーずなっしんあいふぃあ
あん あいのうーざっまいはー いる ごーおーん♪ 

あなたはわたしのこころのなかでいきつづける。
意味は合っています。
優れた物語だったと思います。


 千いろの海の底、神竜のたからとなりしかば、
 ふたたび人間にかへらざるも
 ことわりとこそおぼえけれ。
               『平家物語 巻第十一 剣』

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# by otenki-nekoya | 2012-12-23 22:31 | TV

風のない日

ぽっかりと青い海の前の干場いっぱいに、
魚の開きが日射しをうけています。

先週、山向こうを荒れ狂った暴風雪は
幾重にも山を越えて烈しい北風となり
吊るされた何百という銀の魚を
吹き晒し続けていたのですが

今日は陽が照るばかりで風がありません。
屋外に出た人は皆、歩きながら上着を脱ぎます。

地域の投票所では三枚の用紙をいっぺんに渡され、
一つだけの投票箱に三枚の用紙をいっぺんに入れます。

ずいぶん、大雑把です。
あとで「しもうた、名前と党の紙を書き間違うた」と
いう人が絶対いると思うのですが。
箱は都知事選などで足りなくなる所にでも貸し出したのでしょうか。

なにしろ、第三極どころか
現与党の候補すら立っていないのです。
わざわざ数えるまでもないくらいです。
出口調査もありません。

風のない青い海に沿って歩いて帰ります。
これだけ暖かいと、山は雪崩になりそうです。
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# by otenki-nekoya | 2012-12-16 21:55 | 散歩

シンデレラ

革靴って、はかずにしまってあっても
靴底が劣化して突然割れたりする事がありますね。

ぴかぴかの革靴をはいて
忘年会に出かけようとする連れに
なにげなく、そんな声をかけました。

その夜、ドラマ『悪夢ちゃん』を見ていると、
悪夢ちゃんが見た夢の中で、
王子と姫が船上でダンスを踊り、
頭上に輝くオリオン座を斜めに明るい流星が通ります。

やがてガラスの靴のかかとが折れ、
シンデレラは貧しい姿に戻ります。

ドラマでは夢の中の星座と流星から
現実の船を特定する、という展開でした。


私もちょうどあんな流星を見ました。

忘年会から連れが戻りました。
「踊ったら、靴のかかとがとれたー」

‥‥よ、予知夢?
あくむちゃん、すごい。
私の予言も。

というか、踊ったんですか。
「万歩計つけて、一曲の中でどれだけ足踏みできるか競う」
それは踊りとは言いませんが。
「かなりの勢いで踏み鳴らしたから、かかとがとれた」
というより、飲酒のうえでその競技は危険ではありませんか。
「‥‥本当だ。来年は止めるよう言っとこう」

「みんな、まだまだ次行こう、と盛り上がっていたけど、
帰ってきちゃった。靴もかたっぽ歩きにくいし」

きっといまごろ、あだながついていますね。
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# by otenki-nekoya | 2012-12-15 23:33 | TV

そらのキャンドル

新月の夜にあたったので
いつ空を眺めてもよい今年の双子座流星群。
毛布をかぶってベランダに立ちます。

なにかのはずみで台座からはずれた、といったようすで
小さな星がときどきころがって光ります。

いちばんうつくしかったのは
絢爛たる勇者オリオンを
見事袈裟懸けに斬っていった流星。

先日この下に灯っていたキャンドルライトのひとつが
きまぐれで天をはしったような眩い金色。
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# by otenki-nekoya | 2012-12-13 23:56 |

キャンドルと偉人

凍天の下のキャンドル・イベントが好評で、
今回はそこの公園にも綺麗に並べた灯が
ベランダから見えます。

銅像を下から照らす無数の蠟燭の炎。
‥‥想像すると不気味ではありませんか。
ダウンジャケットを着込んで見に行きました。

銅像は堂々と照らされていました。
なんで足下にツリーが、と思ったら
その中に照明を仕込んであったのです。
馴染みの銅像も、ライトアップされた姿は珍しいので、
皆がキャンドルの灯と一緒に写真におさめて行きます。

ついでにメイン会場にも行ってみると、
ご当地アイドルのステージショーをやっていました。
アイドルと言っても実在の歴史上の人物設定の
地域振興コスプレイケメングループの出張です。
それぞれのファンらしきおっかけ女子も
それなりに居て盛り上がっています。

震え上がる寒さの中の明るいパフォーマンスに
にこにこと拍手を送りながら、連れが呟きます。
「一人は切腹、あの二人は暗殺、ええと、」
彼は斬首でした。この中では女子には一番人気かも。
「そうそうたるメンバーだなあ」
非業度が人気ポイントになるのです。

持ち歌で元気良く踊った若者達は
「おお、温もる温もる」
「踊ると温もってえいのう」
「ロウソクがきれいじゃ」

少なくとも、蠟燭の間の闇を突いて斬られる事はない。
良かったですね。平成の御代に生まれて。
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# by otenki-nekoya | 2012-12-08 22:19 | 散歩

コンプリート

キーン博士の『日本文学史 近代・現代篇 九』
(著/ドナルド・キーン 訳/角地幸男 中公文庫)
町に一軒の書店の文庫新刊棚にありました。
やりました、近・現代、完結です!

TUT▲Y▲ ▲▲店さん、
毎回欠かさず一冊だけの配本、ありがとうございました。
私のためだけに。
おかげさまで地元でコンプリートできました!


ちょうど先週、TVのニュース番組の中で
キーン先生のインタヴューがありました。

──わたしはいままで、オキャクサンでした。
  だから、他の国のわるいこと、言いませんでした。

でももう日本国国民になられたのですよね。

──これからは、言いたい事いいます。

言いなされ、言いなされ。
『近世篇』で近松門左衛門と浄瑠璃に傾けたあの情熱、
名指しせずとも御身には、許せぬ者が居らるるはず。

──わたしの一票は、まだだれにもあげません。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-26 20:49 |

ゆるがるれ

休日の朝、歌が聞こえます。

♪あそびを せんとや うまれーけむーー

ど、どうなされたのです。

「ん?日曜版の『名言』がこれだったから、つい」
連れが手にした全国紙を見せます。

朝っぱらから、幽閉された法皇様が憑いたかと思いました。
「リョージンヒショーって、後白河が作ったの」

今だったらそうですねえ、おそれおおくも皇太子殿下が
「へびーろーてーしょん」をカラオケで歌いまくっていたら
周囲は少なからず困惑するでしょう。
「するねえ」
振り付けも完コピで。
「“今様”って当時はそんな位置づけだったの?」
さあ、そこまでかどうかはわかりませんが。

♪たわぶれ せんとや うまれけん
「良い詞だと思うよ」

だから、残りました。
いつの世もサブカルをみくだしてはならないのです。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-25 20:44 |

おそいくるものの作法

連れは子供の頃山川田畑の中で
暗くなるまで遊んでいたせいか、
TVの特撮ヒーローなどに思い入れがないようです。
「家にテレビがなかったかも知れない」
そんな訳はありません。

人気アニメの劇場版をTVで放映していたので、
今日の日本人の基礎教養の一つであると説明しました。

「あの襲ってくるのはなに?」
聖書になぞらえた表現で、使徒と呼ばれています。
「なんだかわからないなあ」
わからないでしょう。
「どうしていっぺんにこないで、ひとつずつ来るの?」
‥‥そこからですか。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-16 22:39 | TV

そうさぼくらは

夕風の中、軽快なティンパニの音がします。
窓から身を乗り出すと、信号待ちで
自動車のエンジン音がとまった瞬間
いっぺんに管楽器の調べが町に響きます。

今年もやりますか。
定期演奏会の前宣伝に町中を
中学生が衆人注視の中練り歩く。

通りに姿を現した吹奏楽部員は合戦に向かうが如く
ピンク色の旗指物を何本も背負って行進します。

あれ?幟の色が違う。
去年は水色と紫色でした。
毎年新調するのでしょうか。

♪なーんばあ わーんに ならーなくてもいい

ご謙遜を。
県大会で優勝したではありませんか。
やはりこの荒行のたまものでしょう。

高らかに奏でよ若人。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-07 21:08 | 音楽

てん・てん・てん

ずっしりと朱に実った柿の木から
青空の中にむかって等間隔に
てん、てん、てん、てん、と
白い点が。

近くで見ると、柿の木から蔓をのばし
上を横切る電線に電飾のように絡んで
大人の拳ほどの大きさのクリーム色の実を下げた
チャーテ、一般名ハヤトウリです。

いったいどこまで伸びるのやら。
よく街路樹の枝切りや銅像の掃除をしてくれる
電力会社の高所作業車に頼めば収穫してくれるでしょうか。

チャーテはあまり味がないなどといわれますが、
千切りにして生でしゃきしゃき酢の物にしても、
半透明になるくらい炒めても、
ほんのり瓜の風味があって私は好物です。

生で食べられるのに、汁が手について乾くと
ぱりぱり糊のようになってなかなかとれません。

実は白と黄緑の二種類があります。
中に薄い種があり、野菜籠の中にころがしておくと、
ぐいっと緑の蔓が突き出てびっくりします。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-04 20:05 |

瑠璃の花

朝晩は冷え込むのに日中は日射しが強くて暑く、
ベランダの植物の手入れのタイミングが難しい、
と思っていたら夢を見ました。

アルミサッシの戸の開いた狭い園芸店の床に、
苗を植えたプランターが並べられています。
お店の人が「好きなだけ持っていっていいよ」と
言ってくれるのですが、土が入って重いし、
うちのベランダにはそんなにスペースもありません。

鉢植えをひとつだけ選びます。
こまやかな細工のように切り込みの入った葉のついた、
まっすぐにのびた茎のてっぺんに丸く、
縁が金色の細い青紫の花びらの密集した、
アザミの一種でしょうか。

台車に植木鉢を載せて、表に出ます。
外で苗などを眺めていた客達が、
青いアザミの花に目をとめます。
外光の中で花は透けるように美しく、
私は台車をしずしずと押して進みます。


目が覚めて思いました。
あの硝子細工のような花はたぶん、
展示会に合わせて連日新聞で紹介されている
正倉院宝物「瑠璃杯」なのでしょう。
コバルトで青く発色したアルカリ硝子の器。

昨夜、海苔の乾燥剤として入っていた
生石灰の小袋を眺めながら
プランターの使用済みの土に混ぜて中和させておこうか、
ハーブ類は土が酸性でないほうがいいし、
などと考えていました。

そうしたら。
アルカリの土から、宝玉のような花の咲く夢をみました。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-02 20:59 |

お役に立てず

『悪夢ちゃん』の担任の先生は神話などに詳しく、
夢の象徴するものを読み解くセンスがあるという役柄です。
ただ、これまでのドラマの中ではあまり必要がない能力です。
実際には彼女は的確な現状認識と勢いで行動しているので。


自分の夢の中に登場した物の意味を、
知りたいという人は多いのですね。
どうも日記が検索でひっかかるらしく、
夢で見た小動物をたずねる方があとをたちません。

ご要望に応えるような内容でなくて申し訳ない。
同じものを見ても、怖いと思うか可愛いと思うか
びっくりするのか不思議に思うか──
同じものを見ても現実でも感じ方は違います。

同じものを見たと思っていても、
夢の中ではそれは同じものではないのです。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-01 21:56 |

かわいい悪夢

十月中は少しでもホラー絡みの話題は
無理矢理ハロウィーンネタにしていたのですが、
しまった!十月始まりのTV秋ドラマ、
『悪夢ちゃん』がこんなに怖いなんて。

恩田陸の『夢違』が原案と聞いてはいたものの、
設定が小学校で主題歌がアイドルで
キャスティングもコミカルお得意のみなさんだったので、
ちょっと怖くておかしくてじんわりいい話風に
作られるものと思っていたのに。

去年も子供向けだと思っていた
『妖怪人間』がしみじみと寂しい話で、
日テレ土曜9時は油断がならないのでした。

同じ土曜の更に深夜ドラマ、
湊かなえ脚本の『高校入試』が
見えない悪意をひしひしと感じるサスペンスなら、
『悪夢ちゃん』は悪意を目に見える恐ろしい姿で現わす。

他人の無意識を読み取り、その人物が起こしうる惨劇を
奇怪な悪夢として見る能力を持つ小学生の少女と、
彼女の見た悪夢の内容から起こりうる事態を予測し防ぐ、
いわば夢探偵のような役割の、担任の女性教師。

いつもにこやかな美人先生は、実は他人を全く信用せず、
綺麗な笑顔の裏で常に真っ黒なツッコミ連発、
この役があまりにもはまっていて笑えるのですが。

笑い事ではありませんでした。
教室の中での緊迫した事態の直後、
なんとなく笑って場の雰囲気を取りつくろう児童たちに、
先生はついにみんなに、空気を読んで笑うな!
先生も笑いたくないのに笑うのはやめます、と宣言し、
凍り付いた本性を現す。

巻き込まれたとはいえ、いやいやとはいえ、
悲劇を未然に防ぐために毎回全力を注ぐのは
教師だからか、人間だからか、本当はいい人なのに。

笑いたくないのに笑うのが苦手な大人としては
先生、やった!とちょっと感動するのですが、
それでも私がこのクラスの生徒だったら、
やっぱり先生の豹変ぶりに震え上がると思います。

いや、小学四年生の私だったら‥‥
やっぱりね、と思うかな。
それも我ながら怖いな。
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# by otenki-nekoya | 2012-11-01 20:53 | TV
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日記


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