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鳥達の六月

鳥達の声が急に賑やかになるので、
外を見なくても雨がやんだのがわかります。

ベランダのコンテナの緑の中は
子雀達の格好の遊び場ですが、
それにしても声が大きい。

戸口からうかがうと、窓の近くの鏡の前、
ティッシュ箱の上に子雀が一羽。

好きなだけ鳴いて、飽きたのか
窓から飛んで行きました。

うちは部屋の中まで君達の遊び場か。


隣の公園にはなぜかいまだにウグイスが居着いて、
毎朝ホーホケキョ、と鳴いています。

夜九時にはどこからどこへかようのか、
ここには一声だけ残し
毎晩ホトトギスが通り過ぎます。
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# by otenki-nekoya | 2014-06-08 22:29 | ベランダ

城跡を知る

部屋から眺めると里から山がはじまるはしっこ、
五月の初めには淡いとりどりの色でうずもれて、
五月の終わりにはとりどりの鮮やかな緑になったあのあたりに
小さな城があったのです。

先月末、マーズと落人伝説について
やりとりをかわしていたとき、
ふと思い出した事がありました。
『平家物語』の有名な一場面の中に、
この里の武人達が登場している。
マーズに問われました。
「地元には彼等の住まいの場所とか伝わっているの?」

私がこっちに来てから聞いた事はありません。
領主の城近くで生まれ育った地元民にそのシーンを語って聞かせ、
さて、この武人達についてなにか教わった事は、と尋ねました。
「聞いた事がない」
そうですか。

それから一月たたないうちに、
休日の朝に自転車で走って来た連れが
「大発見!」と駆け込んできました。
道中、その武人の城といわれるものをみつけたのだそうです。
それはすごい。つれていってください。


‥‥ここですか?
よく前を通る、小山の前ですが。
看板に従い、住宅地から木の葉の敷いた斜面の道を上ると、
小さな山というより丘のてっぺんが平らになっています。
樹木に覆われていますが、これはまさしく城跡ではありませんか。
横に倒された樹の幹に腰掛けます。
木漏れ日と鳥達のさえずりが降り注ぎます。

小さな城からは二つの川に挟まれた田畑と民の姿、
その向こうの海と空がよく見えたことでしょう。
武家の世になる前の穏やかな暮らし。
よいお城です。

「しょっちゅうここは通るのに、なんで気がつかなかったんだろう?」
この看板、新しいですよ。ああ、書いてある。
立てられたのは去年の秋──
某公共放送大河ドラマで源氏と平家が取り上げられたのを見て
地元の人が思い出し、新しく作ってくれたのでしょう。
この道を通るのは今年になって今日が初めてなのでは。
「あ、そうだ。こっちは今日まで近づかなかった」
平地にも斜面にも、城あと一面に杉が植えられています。


部屋から眺めると里から山がはじまるはしっこ、
今はとりどりの鮮やかな緑になったあのあたり。
たからものがひとつふえました。
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# by otenki-nekoya | 2014-05-29 21:37 | 散歩

エイプリル・フール

桜がはじけるように咲きました。

三月が真冬のままに冷え込んで
ここぞと初夏のように暑くなったので。


七歳までは──神のうち

こちらのものだと思ってはいけない。
うっすらとそんなふうに感じてから
まだふたつきしか経っていません。

第一報に喜んだ連れもその週末には
新聞を突き合わせて首をかしげていました。
信頼した「場」が、妙につながらないのです。


よりによって四月一日に会見なんて。


ネズミというより猫ですね。
「ネコ?」
あちらにいってしまったのか
こちらにいるのかわからない。
「ああ。しゅれーでぃんがーの」

実験はものすごく上手で
論文は書けないという人は普通にいます。
「アメリカではうまくできるのに
日本ではなぜかできない事も普通にある。
水が違うから、って冗談で言うけど」


今年の桜は本当に見事でした。
そして砕けるように散りました。
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# by otenki-nekoya | 2014-04-01 22:53 | TV

春のおとずれ

日曜日、いつものコートで出ようとする連れを止めます。
歩いているうちに、日陰日陰を追うようになりました。
ジャンパーとセーターをこんもりと抱えて連れが言います。
「極端な事を言うけど、寒い方が良かった!」
極端です。

月曜日、布団から首を出したとたんくしゃみがとまりません。
近くの部屋で朝の七時から内装工事をしているのですが、
業者さんが扉から出るたびに大きなくしゃみをしています。

昨日の暑さで、ついに山の蕾が開いてしまいました。

電車で向かい側の席に座っている若い女性も鼻をすすっています。
まさか一日でこれほどになるとはねえ、と見ると、
あ、違った。
ベストセラー紹介で見慣れた表紙の文庫本
『永遠の○』を読んでいるところでした。
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# by otenki-nekoya | 2014-02-04 22:36 |

七日目のマウス

夜遅いTVニュースに、連れが身を乗り出しました。
「えっ‥‥これすごい!すごいね!」
緑色に光る幹細胞の画像に、ぱたぱたテーブルを叩いて喜んでいます。
一年数ヶ月前の報道の時の訝しそうな反応とは正反対です。

今回は「場」が見えるから。
「場」を作った人達が脇を固めているから、
この研究は、この研究者は、信用できる。

ところで、何の細胞で成功したんですか。
「あ。出てない」
笑顔の記者会見の映像が
‥‥終わってしまいました。
「‥‥何の細胞か出なかった」
まあ、ニュースの構成上、重要点でなかったのですから。
「マウスだろうね。明日の新聞で見よう」


3Dプリンタで復元した三角縁神獣鏡が魔鏡だった、
というニュースもなかなか面白かったのですが、
翌日の一面トップはもちろん細胞の写真です。

「生後七日目のマウスだって」
ちっちゃい。
「マウスは三週間で大人になるから」
二十日鼠、ですもんね。
「人間だと七歳?」

七歳までは──神のうち。
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# by otenki-nekoya | 2014-01-30 21:27 | TV

明治は続く(後)

散歩にはあまり向かない強風の吹く中、海沿いを歩きます。
昨夜、土曜ドラマ『足尾から来た女』の後編を見た、と連れに話します。

本当に石川啄木が登場しましたよ。
仰る通りイケメンで、寂しい詩を書いて。
主人公は啄木と仲良くなります。

でも、東京時代の啄木というのはまあ──
みなさま御存知の通り、と申しましょうか。
「貧乏」
それはほとんどの登場人物がそうで、
英子さんにしても与謝野晶子にしても雑誌は大赤字だそうです。
思想や芸術は金にならない、という話ではなくて、
啄木は友人に次々と借金をして、それを遊興費にあてる。
「‥‥すごい才能を持つ人って、なんというかそういうところが」

ダブル石川があまりにも「だめんず」なので、
かえって主人公の自立のきっかけになるという。

『足尾から来た女』は昨年の大河ドラマの続編と言えなくもありません。
官軍のつくった国は、こんな国になりました。
主人公の社会的地位は天と地の差がありますが、
自慢の兄がいる(本人のポテンシャルも高い可能性)
国家権力に故郷を奪われる
女性も勉学をするよう勧められる

主人公はラストのモノローグで、
病院で働くのもいいな、と思いながら東京へ戻ります。
英子さんのような社会活動家ではなくて、
傷ついた兵士の看護をする八重さんのように。


前編の一話だけで終わっても充分な程のクオリティの作品でしたし、
もう一話作って、「大逆事件」の衝撃を受けたダブル石川の
その後の活動を見せてもらいたかったという気も少し、します。

さっちゃんにはそんな事、関係ないか。
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# by otenki-nekoya | 2014-01-26 21:48 | TV

明治は続く(前)

年も改まり大河ドラマも新しくなったというのに
頭の中がまだ明治から戦国に切り替わっていません。

いろいろ引っ張ってきた明治本もまだまだ山積みです。
来年はまた幕末になるそうなので、
それまで塩漬けにしておくべきか?

片付けに悩んでいる時、某公共放送のドラマの番宣がありました。
足尾鉱毒事件?‥‥まさに今日的な題材とも言えますが、
いかにも視聴率取れなそうです。
明治の話だから見てみましょうか。

去年の大河ドラマは日露戦争直前で終わりましたが、
土曜ドラマ『足尾から来た女』は、
まさに日露戦争直後からはじまりました。

最初は、ながら見をしていたのですが、
途中で通りかかった連れを呼び止めます。
凄いですよ、村を出た主人公が女中勤めをするお宅ですが。
さっき宴席に居たのが幸徳秋水、堺利彦、大杉栄‥‥。
「へえー!幸徳秋水!堺利彦!それから誰って?」
連れも驚いて、立ち止まって復唱します。
「北村ユキヤは?何の役?」
さあ‥‥石川君と呼ばれてましたが。
「石川?石川啄木?」
その手があったか。
でも、いくらなんでもこの場に啄木はいないでしょう。
イメージも違うし。
「だよね。啄木はもっとイケメンだ」
‥‥えー、誤解のないよう申し上げておきますが、
ユキヤ氏は連れも大変贔屓の俳優さんです。
昨年大河の最後の方では、
屋敷を訪う一声を聞いただけで誰だかわかって
「あっ!懐かしい声だ!」と大喜びしたくらいです。

「大体、鈴木ホナミは何者なの?」
それが、若い頃は自由党、今は平民社と関わる
女性解放運動家・福田英子で。
「なるほどー、鉱毒事件の縁ね」

石川君(石川三四郎でした)も逮捕され、
村に戻った主人公の目の前で生家が取り壊されます。
県の役人として立ち退きを執行する兄が
自分が二〇三高地で使ったという銃弾を見せ、
「この弾は足尾の銅で出来ている」と諭します。
だからって。だからって、と叫び続ける主人公。

「こういう役をやらせたらオノマチコの右に出る者はいないねえ」
彼等に近づく、黒紋付に白い髭をなびかせた老人──田中正造、
不穏な一団の下に出る『続く』の文字。
「えっ、これ、続きがあるの?」
前・後編らしいです。
「なあんだ」
確かに、この悲壮な対立場面で終わり、でもいいくらいです。
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# by otenki-nekoya | 2014-01-26 21:43 | TV

ひなた観音

里を囲む山はいちばん奥ひとつだけが白かったのに
今日はずっと手前の山が白くなっています。

海沿いではまるまるとしたイワシが目を貫かれ
ずらりとつり下げられて乾いた風に干されています。

冷たい風を避けて住宅地の路地を歩きます。
山の向こう側の向こう側の向こう側は
大変な事になっているでしょう。
夜のニュースで映像が出ると思いますが。

「屋根に上って雪を降ろすの?こわいね」
二階の屋根です。
「二階‥‥」
高い所の苦手な連れは聞くだけで脚がすくむようです。

そういえばこのあたりの旧い家の母屋は平屋が多いですね。
「段梯子を降ろせば上にあがれるよ」
それは貯蔵庫や蚕室で、居室ではないでしょう。


私が小さい頃住んでいた町では冬になると窓を厚い木の板で覆い
雪に埋もれる一階は地下室のようになりました。
だからどこも日があたるように二階建てで──

日はあたらない。おおむね冬の空は曇っています。
でも積もった雪が光るので、降っている時以外は
とても明るかった印象があります。
真っ白な中を遊び回りながら、コドモは楽しいからいいけれど、
ゆきかきやゆきおろしをするオトナの人たちはたいへんだなあ、

きっとそのうち、雪が降っても積もらない道や屋根が出来るから
だいじょうぶ!と思っていました。


「できなかったね」
技術が目覚ましく発展して行く中、日陰に残る雪のように。

影の落ちる路地で、日の当たるところを伝って歩きます。
明治に打ち壊された寺から、
からくも運び出されて難を逃れたという
重文の観音様がそこの小さなお堂に

「‥‥やっぱりこういうところがあったかいんだなあ」
お堂の格子戸の下の段にぴったり身を寄せ
黒いお面を斜にかぶったようなブチ模様の猫が
正面から射す冬日にあたって
溶け残った雪のように白く光っています。
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# by otenki-nekoya | 2014-01-19 22:21 | 散歩

ひなた神

年が明けてからこれまでこの部屋で
日中に暖房を使った事がありません。
窓を開けていても日射しが当たると
衣服の黒い部分など熱くて痛いようです。

この屋根の上にもパネルはありますが、
太陽光に発電をさせて電気器具で温まるより
太陽光を熱源として使った方が効率が良いようです。
もともと温室園芸が盛んな土地です。

ただ温室効果を生む空気ではないので
日が陰ると都会よりもはるかに冷え込みます。
蓄電池のように蓄熱ができないものでしょうか。


日本海側を埋め尽くす湿った雲は
行く手に立ち塞がる山々に次々ふるい落とされて
この里を包む山の一番奥で最後の雪を落とします。
外に出ても風さえあたらなければ寒くはないのですが、
何層ものフィルターに漉された乾いた北風が吹いています。

遮るもののない海岸沿いは特に風が強い。
いつもガラス戸を閉め、何人もの高齢者が
テーブルを囲んでくつろいでいる小屋があります。

「あったかそうだなあ」
日の当たる居酒屋みたいですね。
「いや、こっち」
連れの指差した先に小さな鳥居がありました。
いつも通るのに、小屋に気を取られて気がつかなかったのです。
いつもは小屋の影にもなっているのでしょう。

風雨と潮に晒されて薄黄色になった白木の小さな祠の
段の中にすっぽりと薄黄色の猫がはまりこんで目を閉じています。
正面から射す冬日が当たり、祠と猫は黄金色に輝いています。

何の神様かはわかりません。
この地区の氏神様でしょうか。
眠り猫付きだから権現様か。

猫ぐるみ祠に手を合わせます。

そこの爺様婆様達とこの猫にいつも
暖かい日射しが降り注ぎますように。

「お賽銭が置けない」

それより、正面に立ってはいけません。
日陰になります。
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# by otenki-nekoya | 2014-01-12 22:03 | 散歩

はつはる

暖かい年明けとなりました。

いつもの浜沿いを歩いていると、
新年二日でもう干場は大忙しです。
開いたカマスが延々と並び、
作業所の屋根の上には真っ白なイカが
風がないので行儀よく吊り下がっています。
堂々とした体格の猫達も悠々と闊歩しています。

つい小春日和などと言いたくなりますが、
使い方としてはまちがいなんですね。
「小春じゃないもの。春だよ」
新春。初春。

普段は人っ子一人いない砂浜にかなり人影が見えます。
どのグループもでこぼこしていて、
ほとんどが子供連れだと判ります。
路肩や駐車スペースに、都会や雪国ナンバーの車が停まっています。

風もなく、波もなく、
ただいっぱいのひざしと空と海だけの中
人々は歩きにくい海岸をみんな横並びになって
すいよせられるように水平線に向かって進みます。

みなさまにとって新しい年が
この海のように穏やかで
この空のように明るいものでありますよう。

今年もよろしく。
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# by otenki-nekoya | 2014-01-02 20:03 | 散歩

会津に斃る

中学の頃、狐狸庵先生の作品は少し読んだけれど
安岡章太郎作品は読んだ事がありませんでした。

今年訃報に接し、増刷が出るだろうから読んでみようと
思ったのですが、いつもの書店には一冊も入りません。
有名作家に対しても、時代というものは過酷だなあ。
「追悼」の帯の巻かれた『流離譚(上・下)』(講談社文芸文庫)を
みつけて中も見ず買ったのは秋になっていました。

読みはじめて驚きました。
しまった。もう少し早く読んでいれば。

作者の先祖である、地方郷士達の物語という紹介と、
浪漫的な響きのタイトルからか
なんとなくノスタルジックなものをイメージしていたのですが

先祖の私的小説などではなく、幕末動乱の渦中に身を投じた
安岡兄弟の行動を辿り、詳細な資料に語らせる維新史というか。
それこそドラマ『龍馬伝』でお馴染みとなった人物達が
史実としてぞろぞろと絡んできます。
そのうえ後半、安岡兄は板垣退助率いる土佐迅衝隊の参謀となるので
「奥州攻め」が克明に記されています。
こ、この本で会津のお城を攻める事になるなんて。
八重さんすまぬ、これも巡り合わせいうもんぜよ。

まだ読みかけなのですが、これは読むべき、と連れに上巻を貸すと、
「昔の文章がいっぱいだ。これは私には読めないよ」
それはまあ、安岡兄弟の手紙をメインに、
同時代の記録を付き合わせた構成ですから。
ちゃんと大意は本文でも書いてくれているので、
資料部分は読めなくても大丈夫‥‥
とはいえ、あまりに詳し過ぎ、関心の有る事件でないと
読むのが面倒、という感じはあります。

この慎ましい白い帯に、煽りのコピーを入れられないでしょうか。

『弟は 吉田東洋の 首を取った男
 兄は 会津の戦に 斃れた男』

「ええっ‥‥勤王党だったの!」
だから。流されるのです。
ほんのはずみから、とめどもなく流されてしまうのです。
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# by otenki-nekoya | 2013-12-22 22:23 |

会津の姫君

今年の大河ドラマは最終回だというのに、
主人公の人生はまだ四十年近くありますが。
「最期までやらないんじゃない?」
そういう時もありますね。

その通り、ドラマは日露戦争前までで終わり、
後日譚は最後の紀行コーナーで説明されました。
容保公の孫が皇室に迎えられたと聞いて
連れが感慨深げに言います。

「ああ、よかった!完全に賊軍の汚名は消えたんだ!」

この方は白洲正子の女子学習院初等科以来の仲良しで。
「シラスマサコ‥‥えーと」
白洲次郎の奥方の。
「あ、伯爵家令嬢」

次郎が東北電力会長の時、只見川ダムの式典に招く
スペシャルゲストは誰が良いだろうという事で、
正子が妙案を思いつくんです。
宮様になった松平節子様にお願いしてみよう。
「昭和天皇の弟のお妃だよね」

当日。駅前の通りに紋付姿の御老人が
ずらっと平伏して。

「‥‥。会津の姫様のお里帰りか」
九十年近くの歳月が流れていたとしても。
一同の感激いかばかりか。

主役の出番が少ないとか話が難しいとか言われても
根気よく会津視点でドラマを続けた意義は大きかったと思います。
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# by otenki-nekoya | 2013-12-15 22:10 | TV

鹿鳴く館

全国紙の一面コラムが、日本シリーズの話題に絡めて
中井桜州のロンドンでの珍英会話譚を載せていました。

このひとですよ。
明治元年に英国公使ハリー・パークス卿が
帝に謁見に向かった時、行列に切り付けた凶漢と
激しく刃を交え、後藤象二郎の助太刀でその首を取った。
「あ、中井弘。県知事になったんだ!」

留学していたのは幕末ですから、二十前後の事ですね。
「幕末?密航じゃない」
ジョーと違って、薩長は藩でグルです。
「エピソードは面白いけど、話の流れとしては無理があるなあ」
東北チームの外国人選手を讃えるのに、薩摩藩士の逸話。
「なんで中井さんを持ち出したんだろう」

もしかしたら、「鹿鳴館」の印象が筆者の中にあったのかもしれません。
「鹿鳴館?そういえばこのあいだ大河ドラマで出て来た」
『鹿鳴館』という名前をつけたのが、桜州なんです。
「へええ!じゃあ井上馨とも仲が良いんだー」
井上は中井の奥さん取っちゃったんですけど。


猛攻を受ける鶴ヶ城に篭城した、会津家老職・山川家の幼い娘が
麗しのレイディに成長して十年ぶりにアメリカ留学から戻り、
ドラマの前々回にはついに、
あろうことか鶴ヶ城を攻めた薩摩の砲兵隊長・大山巌が求婚し、
当然の大反対にもへこたれず、
目出たく鹿鳴館の華とうたわれた大山捨松が誕生しました。

「書き手の人は、大河ドラマで『鹿鳴館』の回があったので
『東北』から会津、薩摩から中井を連想した──ということ?」
奥州から桜州とか。
それはわかりませんが、コラムのテーマは、
少々ヘンな外国語でも通じあえる、ですよね。

「捨松は日本語だいぶ忘れてたしね」
それは関係──あるかどうか。
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# by otenki-nekoya | 2013-11-06 22:01 |

十一月の波とあそぶ

日曜日は一日雨が降ると聞いていたのに、
朝になったら雨はあがっていました。

日中は真夏並みの暑さで朝は冷え込み、
嵐の動向に気もそぞろの日が続いた
秋とは思えない十月が終わりました。

いまにも雫が落ちそうでそれでもなんとか
踏みとどまっている厚い雲の下に出てみます。
梅雨明けが早く、夏が記録破りで、十月も暑かったので、
すぐそこの海沿いでも、真昼に歩くのは
四ヶ月ぶりになるでしょうか。

鉛色の空に翡翠色の海。
波は荒れすぎず、穏やかすぎず。
先月は波が高くて漁も大変だったようです。
浜では漁の網を片付けています。
連休のせいか、向こうの波打ち際に
歓声を上げている家族連れがいます。

幼児二人と、制服の白いブラウスに黒いスカートの
女子中学生二人、母親らしき黒いワンピースの女性。
法事だったのでしょう。
幼児達と少女達と
喪服と長い髪を海風になびかせた女性は
打ち寄せる波とおいかけっこをしておおはしゃぎです。

夢中になっている一同を呼びに、
裾の長めの黒いワンピースの女性が
砂浜を横切っていこうとしています。

海岸に出る道路の駐車スペースでは
黒い軽自動車の傍らで茶髪の女性が
堤防に肘を載せて皆を眺めています。
幼児二人の方の母親でしょうか。
黒いパンツスーツにヒールなので、
浜に降りられないようです。

お孫さん達と娘さんが、海でこんなに楽しんで、
雨をやませた甲斐があったというものですねお祖父様(たぶん)。
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# by otenki-nekoya | 2013-11-03 22:12 | 散歩

おそれいってみせる

「犬が面白かった!」
自転車屋さんで部品交換を頼んで来た連れが笑っています。
「店に入ると、小さな犬がものすごい剣幕で
わわわわわ、と吠えながら走り回るんだけど」
開けっ放しのたたきに立って見ていると、
「店舗とおじさんの作業スペースには絶対に入らない」
自分の領分を守っているんですね。

「見てると笑いそうになるんだけど、我慢して」
かわいい〜、と笑うと失礼にあたります。
「まいった、おそれいりました、という顔をしてみせた」
顔?
「勝った!と満足してくれたかなあ」
吠えやめましたか?
「おじさんが出て来たので、そこで打ち止め」

いくらドラマで流行ったとはいえ、
顔芸をしてみせて犬に気持が伝わるでしょうか。
「顔の表情じゃ犬にはわからない?」
姿勢を低くすれば敵意がないという表現になりますが。
「だったら、ヒトと一緒だ」

このごろは、過剰に謝罪や屈服の表現に使われますが、
手を下につくお辞儀は敬意を表す普通の挨拶の姿勢です。
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# by otenki-nekoya | 2013-10-20 22:04 | 散歩

二本差し

白刃のようだった陽光は
ようやく黄金色になりました。
それでも触れると痛いほどです。

通りの向こうから、
つやつやしたススキの若い穂を横ぐわえにして
長い大小を左の腰にさし、悠々と歩む影が来ます。

もし、そこのおかた。
せんだって、帯刀を禁じる太政官のおふれが出て

──百年以上経っています。
大河ドラマの時代に合わせ、これまでためておいた本を
あれこれ読んでいるので、こちらの気分が
「明治十年前後」になっているのでした。

人影に気付き、くわえていたススキの穂をおろした
黄金色の光の中の真っ黒な影は
すれちがいざまウォーキング姿の男性になり

腰にさした二振りの刀は
長い方は巡礼用の金剛杖、
短い方は黒い雨傘でした。

あちらの気分は「幕末!」なのでしょう。
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# by otenki-nekoya | 2013-10-14 22:31 | 散歩

蝉の声

スーパーの菓子売り場や小店のウィンドウは
ハロウィンカラーで賑わっているというのに。


テーブルに向かい合わせた人物が
薄暗い喫茶店で会話する場面を思い出します。

むかしの人気アニメの劇場版のワンシーンなのですが。

やつれ果てた男性教師が、自分が感じている違和感を訴えます。
凛とした女性教師が、哀れむようにその考えをいなします。

(自分達はずっと前から同じ一日を繰り返しているのではないか)

 今日はいったい、何月の何日でしょうね。
 こんなものを着ておるとすれば、
 冬なのかもしれませんが。
 この汗は冷や汗なんですかね、
 それともこの陽気のせいなんでしょうか。
 それに。さっきからきこえているこれは

愕然とした女性教師の背後の窓から
樹木の緑の輝きと
大音量のセミの声があふれだす──


明日になれば、明日になれば、と思い続け
明日になっても今日と昨日とかわらずに。

いつまでたっても外気温は摂氏三十度を越え続け、
最低気温というのはたいていは日の出時の一瞬なので
夜の間はずっと暑く、毎晩結局夜中に窓を開け

そして毎日毎日ずっときこえているセミの声。

サクラ先生、教えてください。
今日はいったい、何月の何日でしょうね。
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# by otenki-nekoya | 2013-10-12 18:50 |

鹿と走る

自転車で川の上流を走って来た連れが言いました。
「鹿がいた」

秋ですねえ。
「鹿は秋なの?」
鹿は秋です。

山がいつもと違う、と不思議に思い
山道で立ち止まったそうです。
山がとても静かだったのです。

「セミが鳴いていなかった」
先週まであんなに賑やかだったのに。
しーんと静まり返った中にしばらく立ち尽くしていると、
目の前の道に鹿が。
「立派な角だった」

道を下って行く鹿に、ついていくような形になりました。
「方向が同じだけなんだけど」
山の中の一本道なので。
「面白いからずっと後ろを走ってたけど」
下り坂をゆるゆると。
「だんだん可哀相になって」
山側も川側も急傾斜で、道を逸れる事ができません。
「ひたすらまっすぐ走り続けるんだもの」

ニホンカモシカなどは縄張りを守るために
わざとバイクに伴走したりすると聞きますが。
「一度斜面を見上げたけど、ちょうどそこは
コンクリートで固めてあって上れないし」
土砂留めですね。
「たまに広いところもあるんだけど、そこでよけたりしないし」
お先にどうぞ、と後続をやり過ごすような世慣れた鹿が山にいますか。
「犬は待つよ」
人は待ってやらないんですか。
「日が高くなったら暑くて走れなくなる」

鹿と自転車が連れ立って山道を下っていきます。
必死で逃げるというほどではない、
別に追いかけている訳ではない、
「道はカーブしてるし、もし車がきたらどうしようか、とか」
お互い少しだけ困惑しています。

「やっとガードレールの切れ目があって」
それまで崖が急なので、ずっとガードレールが途切れなかったのです。
「そこから飛び降りて」
川岸に向かって駆け下りて。
「薮がずっとがさがさ動いてるんだけど、もう見えなかった」


見ている人がいたら、名前をつけたかもしれません。
鹿にではなくて、鹿と一緒に走る人に、
ダンス・ウィズ・ウルブズ や、
ウインド・イン・ヒズ・ヘア みたいな。
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# by otenki-nekoya | 2013-09-29 22:27 | 散歩

汐だまりの名月

朝晩涼気が感じられるようになったとはいえ
空気が澄んだぶん日射しはやはり激烈で
いまだに日中外を歩くのは真剣勝負です。

この二ヶ月というものすぐ近くの海でさえ
昼は暑く夜は暗くうろうろ歩く事はできませんでした。


この月の下なら。

まださほど高くはない満月は金色で、
商店街を横切って街灯がなくなると
くっきりと自分の影が地面に落ちます。

まださほど高くはない満月は海には映りませんが、
遠くの嵐から寄せる少し高い波が明るく見えます。

波がこれだけ明るいのなら、
波打ち際まで行ったら月が映っているかもしれません。

月明かりだけの浜辺に降りるのは足下が少し心配ですが、
大潮の海は思ったより近くにありました。
柔らかな砂から大きな砂利になるあたりが真っ黒に見えます。

潮が引きはじめたばかりで、砂利が濡れているのでしょう。
思い切って踏み込むとやはり砂利はまだ海水を含んでいます。

月の方に身体を向けると、
波頭ばかりか立ち上がる波裏まで金色に輝いて

金色の波の打ち寄せた浜は、真っ黒に見えた濡れた砂利が
月の光を受けて銀の粒を敷き詰めたように彼方まで広がっています。

潮が引いたばかりの砂利のところどころは窪んで海水が溜まり、
僅かなあいだ、潮溜まりのようになっているのですが、
その一つ一つの小さな海水の池を覗くと

一つ一つに小さな金色の満月が映っています。

初めて見ました。

暑くなく。寒くなく。
雲一つない絶好の月見日和、
今宵の名月を見上げる人はさぞ多い事でしょう。

金色の中秋の名月にむかって歩きます。

傍らに打ち寄せ続ける金の波、
行く手は果てしなく銀を敷き詰め、
足下にいくつも小さな金の月が水の中に落ちていて、

燦然と。絢爛と。
これほどの月見はなかなかありますまい。
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# by otenki-nekoya | 2013-09-19 22:01 | 散歩

豚の如く

ニュース番組が終わったのでチャンネルをかえたら
赤い飛行艇が紺碧の海上を飛ぶアニメをやっていました。

久しぶりに見ると、主人公はタバコを片時も離さず、
ものすごい紫煙に包まれています。
この夏公開の新作は、タバコを吸う場面が多く
教育上良くないという文句が出たという事ですが。
「二十年前はそんな事問題にならなかったね」
全然意識していませんでした。

「タバコだけじゃなくて、相当メタボなのも心配だなあ」
それは仕方ないですよ、主人公はブタですから。
「え?ブタって太っているの?」

‥‥。
確かにこの夏は家禽は熱中症に、
家畜は夏痩せする暑さでしたが、
畜産家は大変な肥育の努力をされていると思います。

「実物を見た事はあまりないけど、ああいう動物でしょ?」」
豚からすれば豚は標準体型という事ですか。

実在する生物としての豚と、一般に人がブタという単語から
連想する共通イメージというものは別物ですから、
普通、人間の外観を嘲る時の形容に使われるでしょう。

連れは上を向いて少し考えてから、
思い当たったように言いました。
「あー‥‥ああ。使うね」

連れは悪口雑言を使った事がありません。
知らないというより、例によって
わざわざ考えた事がないのです。

「ブタさん、かっこいいなあ」
他所で絶対言ってはいけませんよ。

──かっこいいなあ、ブタみたい。
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# by otenki-nekoya | 2013-09-06 23:17 | TV

せんぷうきさん

蹴られても倒れない扇風機を買いましょう。
南と北の定位置に置いておけば
移動させる手間も減るわけですし。

国道を渡ってむかいの郊外型電気量販店に行きます。
お手軽過ぎるロケーションと、ピークを過ぎた時期的に、
売れ残りばかりだとは思いますが、
扇風機なんて何十年たっても同じ形なんだから

話題の羽なし扇風機でもいいかな。
わっか型はなんだか首を突っ込みそうなので
スタンド型があれば。

ダイ▼ンのスタンド型の羽なしファン
サイズは良いけれど白は売り切れで、
グレーのベースに紫がかった青が店頭に出ています。

連れがしげしげと覗き込んでいます。
羽がないのに風が吹くのが不思議なのでしょうか。
なんだか魅入られたようにずうっと見ています。

「これでもいいけど‥‥」
やっと前を離れ、他の商品を見た連れが叫びます。
「えっ!せんぷうきってこんなに安いの?」
なにしろ何十年たっても同じ形なので。
付加価値をつけたものとしてはプラズマクラスタイオンを
「いらない」
風さえ送れればいいですからね。

結局、土台のしっかりした、
古典的な羽の回る扇風機を買いました。
店舗を出た途端、連れが言います。

「あの細長い、羽のない扇風機ねえ」
ずいぶん長く見てましたね。
「なんだか人が居るみたいで」
はあ。
「ムンクの『叫び』みたい」
ああー。昔、友達が空気を入れて膨らますビニールの
『叫び』人形を部屋に立てていたけど、
サイズといい、色合いといい、確かにあんな感じですね。

「それか『カオナシ』」
表情──が。そこにない表情が、ひっかかっていたのか。
「夜中にそこにあるのを見たら声をかけてしまいそう」
‥‥その存在感に耐えられるかどうか、
ずっと向かい合っていたんですか。


普通のしろものの白物家電の
真っ白い扇風機を組み立てます。
羽がくるくる回って、金属ネットがガードする丸い顔。
「デザインは別に良くないけど、普通の顔だ」
ほっとしたように連れがいいます。

しまった。
倒れないように土台の大きい機種にしたのですが、
風の道を作るためにひょいひょい移動させるには
重過ぎる。
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# by otenki-nekoya | 2013-08-17 22:28 | 散歩

風の部屋

♪南さ向いてる窓を開け〜

いや普通に。
南に向いている窓と北を向いている窓を開け、
その間の扉も全部開けると風が吹きぬけます。
この部屋に引っ越して来てからは
これまでエアコンを使った事がありませんでした。

窓の向うには海があります。
反対側の窓の向うは山に続く里の地面があります。
陽が当たって地面が熱くなると
海の上の冷たい空気が吹き込み
この部屋が風のトンネルになるのです。


とはいえ伝説となりつつあるこの夏はどうするか。
例年よりはるかに高い室温が連日続きます。
その一方、この殺人的日射しが地面を熱すれば熱する程、
海に接した空気との温度差が大きくなるため、
風の勢いもまた、これまでになく強くなっているのです。

酷暑の中、昼も夜もいろいろ試してみましたが、
結局のところここでは窓を閉めてエアコンで室温を下げるよりも、
室温は高くても窓から風が吹き込む方がしのぎやすいようです。

風の道は直線が理想ですが、窓の位置がそう都合良くないので、
扇風機で強制的に風を送り、道筋をつけます。
時間帯、風向き等にあわせて扇風機を持ち回って調節します。


ぐわっしゃーん。
‥‥連れに扇風機を蹴倒されました。

な、なんということを。
でも人の居ないところで扇風機だけが
せっせと風を送っているとは普通は思わない。
風の導線ばかり考えて人間の動線を
考慮しなかったのがいけませんでした。


日中は海から、夜は山から、勢い良く吹く風も、
陽が翳り海と地面の温度差がなくなる瞬間、止まります。

「大地がいかりに満ちておる‥‥」
連れが毎回つぶやきます。
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# by otenki-nekoya | 2013-08-16 22:23 |

明治への旅行

今年の大河ドラマがはじまるまで、ヒロインの
八重さんは全然知らない人だと思っていました。

『日本紀行』(講談社学術文庫)の京都篇で
イサベラ・バードが新島邸を訪れて歓談する場面がありますが、
以前読んだ時は全く気がつかなかったのです。

洋風の生活をしている洋装の紳士・ジョーの傍らの
和服の夫人が、そのわずか十年前に

崩れゆく会津鶴ヶ城に篭城し
七連発のスペンサー銃を撃ちまくって
新政府軍と闘った男装の戦士だったなんて。

最近になって、イサベラ・バードの京都観光に付き添ったのが
八重さんとあんつぁまのおっかさま、
山本佐久さんだったとわかった、と新聞に載っていました。

イサベラ・バードの京都での宿泊先が同志社女学校なので、
意外に山本家と関わりがあったのだなあ。
大河ドラマの明治篇が進んだら、読みなおそう。


この夏の暑さはなんだ、とても外に出られない、
という皆様におすすめの旅行プランがございます!

はるかな距離を越えて英国女性が訪れたニッポンを、
はるかな時間を越えて現代の私達が訪れるというのはいかがでしょう。

『イサベラ・バードの日本紀行 上・下』
(講談社学術文庫 著/イサベラ・バード)
「上」は東北の旅、明治というより江戸そのままの風景、
「下」はさらに開化から離れた蝦夷の旅と、文化の凝縮した関西の旅。
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# by otenki-nekoya | 2013-08-10 19:34 |

クイナ走る

かの邪智暴虐の王‥‥とまでは言いませんが、
恐ろしいまでの頭上からの攻撃力を持つ太陽が沈むと、
民はほっとしたようにぱらぱらと戸外に姿を現します。

夕暮れの川沿いを行くと、
ハゴロモジャスミンに似た甘い香りがします。
濃い緑の大きな葉の樹の上に盛り上げるように
赤と白の花が咲いています。

赤く長いがくの先のぽつりと白い球が、
開くと五弁の白い花になって、
姿もハゴロモジャスミンに似ています。

クサギです。
花はこんなに甘い香りなのに、「臭木」という名はあんまりでは。
種が散って、堤防のそのあたりは丈の低いクサギが何本も満開です。


犬の散歩やウォーキングの人の少ない細い方の堤防を行くと、
小さなシルエットが行く手を走って横切りました。
ころんとした前傾姿勢に、太い脚と特徴的な長い足趾、

クイナです。
脚が真っ赤に見えたから、バンの類ではなく緋水鶏でしょうか。
ヤンバルクイナを思い浮かべてもらうと分りやすいと思いますが、
鳥というより直立二足歩行動物のような走りです。
獣脚類ぽいというか。
やっぱり恐竜は鳥になったんだな。

駆け寄ると川縁の草むらががさがさ鳴って、
そこを走ってるのはわかるのに、
もう姿は生い茂る緑に隠れて見えません。
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# by otenki-nekoya | 2013-07-24 21:56 | 散歩

天璋院さまのナチュラル雑貨

こんな七月の白い強靭な日射しに太刀打ちするには
我が愛用の日傘はどれも華奢で、か弱く心細く思えます。

最近さしている人の多い、
真っ黒で大きくて生地のしっかりした
男持ちの雨傘のような日傘がいいな。

‥‥それはコウモリ傘ではありませんか。
天璋院様か。

 天璋院のお伴で、所々へ行ったよ。
 八百善にも二三度。向島の柳屋へも二度かネ。
 吉原にも、芸者屋にも行って、みンな下情を見せたよ。
 (略)ワシの家にも二三度来られたが、
 蝙蝠傘を杖にして来てネ、
 「どうも、日傘よりも好い」と言った。
                    『海舟語録』

万事規則と格式にがんじがらめだった江戸城大奥を出た篤姫は、
下々の用いる道具でも、気に入ったものはすぐに取り入れます。
船宿のお茶がおいしかったので、
銀瓶をやめて「鉄瓶」を火鉢にかけたり、
お風呂の後出された「浴衣」を愛用するようになったり。
元将軍家御台所はハンドメイドもお好きだったようです。

 後には、自分で縫物もされるしネ、
 「大分上手になったから、縫って上げた」などと言って、
 私にも羽織を一枚下すったのを持ってるよ。

                    『海舟語録』


日本で最初に「ミシン」を献上されたのは篤姫でしたね。
まさか勝先生の羽織はミシンで‥‥。
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# by otenki-nekoya | 2013-07-14 18:43 |

幼い猛禽

天から地の間を遮るものが
ついに何一つなくなりました。

このひとつきあまり曇天の下で
電線に止まって親を待っていた子ツバメ達とか
橋の上でいつもおいかけっこをしていた
黒い羽ぼさぼさの子カラスの兄弟とか
うちのベランダの植木に飛び込んで
ちゅんちゅんぴょんぴょん賑やかな子スズメ達とか

こんな直射日光は、生まれてはじめてでしょう。
みんなちゃんと日陰に移動したでしょうか。


真上から射す強い日射しが地面を熱し
上昇気流がおきています。

その気流にかろうじて乗る
若過ぎてトビだかなんだか判らない
猛禽の子がふらふらと舞い上がっています。

水平にぴんと張るべき翼はぷるぷる震え
薄茶色の柔らかい羽毛が毛羽立って

階段の上の、同じ高さに居た私と空中で目が合います。

人間なんか見て動揺するな。
君はこの空のずっと高いところまで支配する
王者の鳥になるのでしょう。

仕方がないですよね。
本当はせめてあと十日。
蒼天を切り裂く鋼のような
翼を手に入れるのはまだ少し先。

幕が開くのが早過ぎて、
私達人間も含めて生き物達は
成長も準備も全く間に合っていません。

ひろひろしながらでも、乗り切れ、みんな。
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# by otenki-nekoya | 2013-07-09 22:17 | 散歩

曇天に咲く

銀行の裏、川をはさんだ公園は町中なので
冬には葉が落ちて日当り良く、春には新芽がきれいな
背の高い落葉広葉樹を主に植えています。

緑の葉のみずみずしさはまさに今が絶頂。
町中にあると一本で森のような楡の幹に沿うように、
クリーム色の花が房になって5メートル程咲いています。
国道の街路樹のシマトネリコが飛んで、ひっそり育ったようです。

遠目には藤かなにかのように咲きあふれる花を見上げると、
その隣の整った円錐形の樹を覆う緑の葉の上に、
しゅっしゅ、と何十本もの淡緑の穂が
まっすぐ天を指しているのに気がつきました。

落ちて来た雨が、鮮やかな緑の葉に触れた瞬間
緑色が薄くうつり、細い柱に結晶してそこにとどまったようです。

面白い造形だなあ。
クリスマスツリーにぎっしり立てた細身のロウソクのようでもあります。
たぶんまだ蕾だから、あんなにきっちり上を向いているのです。
開いたら明るい色になってふわりと垂れるのでしょう。
樹は南京櫨でしょうか。

このへん一帯の川辺には小ぶりのナンキンハゼがいくつもあって
秋には目を引く白い実をつけるのですが、
それら全てのおおもとはこの公園に植えられた
あの背の高い樹なのかもしれません。

‥‥はいやーあっぷ。
見上げなければ気がつきませんでした。
日射しが強くても気がつかなかったでしょう。
六月は樹の花の満開の季節だったのです。

そう思って気をつけてみると、
そこいらじゅうの樹木にひっそりと薄緑色の花盛り。
彩りのない地味な花が、こんなに綺麗だったなんて。

花の色は控えめでも長い長い穂を盛大に垂らした
支那沢胡桃ばかりは川沿いで毎年思いっきり目立っています。
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# by otenki-nekoya | 2013-06-30 22:22 | 散歩

もっと高いところに


 甲板じゅうで歓声があがっていたものの、わたしにはずっと探しても
 富士山が見えなかったのですが、ふと陸ではなく空を見上げると、
 予想していたよりはるか高いところに、てっぺんを切った
 純白の巨大な円錐が見えました。

         『日本紀行』著:イザベラ・バード 
               訳:時岡敬子 講談社学術文庫 
 



ラフカディオ・ハーンも書いています。
主人公が船から富士山を探すんですが、見えない。
オフィサーに尋ねると、笑って言われます。
 
 "you are looking too low. higher up.much higher!"

               『ある保守主義者』著:小泉八雲

「その通りだね。富士山って、思っているよりずっと上にある」

以前、武蔵野の面影を残す森に囲まれた職場に勤めていた連れは、
冬の朝、身体を屈めて歩いていました。
東京も西の方は底冷えがします。

ふと、頭上が明るいような気がして空を見上げると。
朝陽を受けて輝く、純白の巨大な──富士が。


「こうやって、普通に前を見ていても気がつかない」
傘を後ろに傾け、天を仰ぎます。

「──はいやーあっぷ」
まっち、はいやー。
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# by otenki-nekoya | 2013-06-22 22:56 |

川の上の道

一日降った雨はそれほどとも思えなかったのですが、
窓から見下ろす川は危うい水位に達しています。

幸い、夜遅くに水位は下がりました。
山の方で一時的に降ったのでしょう。

講演会の司会が回って来ていた連れも
車を水没させる事なく戻れました。

参加者の皆様、おあしもとの悪い中を
‥‥どころではありませんでしたね。

「天候の悪化する中、と言いながら‥‥笑いそうになった」
ほとんど、講演会場が避難所になる覚悟でした。


翌日の地方紙夕刊に、近くの山の写真が載っていました。
やはり、川の上流で集中的な豪雨があったのです。
一見、普通の滑らかな急斜面のようですが、
縦長の画面の中央に白い破線が太く引かれています。

道路のあったところです。

「ああっ、私の自転車コースがっ!なくなっちゃったっ!」

こんな空中を走っていたんですね。
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# by otenki-nekoya | 2013-06-21 22:52 |

しばもち

太陽が真上からさし、影が消えて町が光で真っ白です。
例年この時期は曇っているので、あまり見ない光景です。
海風が吹いて、日陰は申し訳ないくらい爽やかです。

のどかな日曜のローカルニュースを見ていると、
海を見下ろすお寺を訪れた巡礼さん達に地元の人が
「柏餅をふるまいました」という映像が

‥‥それ、柏餅じゃないだろう。

菅笠を被った白い巡礼装束の娘さんが、
葉っぱをはいでかぶりついたあんこのはいった餅は、
てのひらサイズのまるっこい葉っぱ二枚にはさまれていました。


子供の頃引っ越しして、驚いた事のひとつは

かしわもちが、かしわのはっぱじゃない!
という事はつまり、かしわもちが存在しない!

そのかわりにみたことのないものがでてきたのです。
あの、もこもこと人の指のようなでっぱりのある
大きな一枚のはっぱにくるむのではなくて、

なんだかそのへんで取って来たような
はっぱの先と柄のところがちょっととんがった、
まるいはっぱ二枚にはさんで蒸したおもち。
光沢もなんだか違う。

柏餅の葉っぱを食べる人はあまりいないと思うので、
たとえ包む葉の種類が違っても、
中はあんこの入った餅なので問題はないのでしょうが。
それ以前に甘いものが苦手な子供だった私は、
食べられなかったので関係ないのですが。

後に、あの菓子はそこらの葉っぱを貼ったわけではなく、
広い地域に渡ってひろまっている、
「しば餅」というものだと知ってまた混乱しました。

「しば」のはっぱ?
引っ越す前のおうちにあったしばふの芝‥‥じゃないし、
おじいさんは山へしばかりにの柴‥‥?
‥‥あれは小枝だ。

さるとりいばら、という冬枯れの姿が印象的な植物と
あのちょっととんがりのある丸い葉っぱが結びつくのは
更に後の事でした。

私が子供の頃の菓子は総じてものすごく甘かったのです。
今は、いわゆる「あまいもの」もおいしくいただいています。

あ。

今気がついたけれど、私、しば餅食べた事がないんだ。
子供でもなければわざわざすすめられる事もありません。
食べつけていないものはなかなか買いません。
いただきものの菓子は、箱入りの日持ちのするものばかり。


いつもの産直市で野菜を買う時に、
出来上がりのタイミングと会えば
地元の餅米を搗いた柔らかいあんこ餅や
黒砂糖の皮のふかしたての饅頭等、
その日のうちに食べ切る手作り菓子が並ぶので、時々買います。
今の時期は、手作りのしば餅に出会えるかもしれません。

おじいさんが山に入ってさるとりいばらのトゲにからまれながら
わざわざ取って来た葉っぱかどうかまではわかりません。
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# by otenki-nekoya | 2013-06-16 22:04 |
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日記


by otenki-nekoya
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