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鹿と走る

自転車で川の上流を走って来た連れが言いました。
「鹿がいた」

秋ですねえ。
「鹿は秋なの?」
鹿は秋です。

山がいつもと違う、と不思議に思い
山道で立ち止まったそうです。
山がとても静かだったのです。

「セミが鳴いていなかった」
先週まであんなに賑やかだったのに。
しーんと静まり返った中にしばらく立ち尽くしていると、
目の前の道に鹿が。
「立派な角だった」

道を下って行く鹿に、ついていくような形になりました。
「方向が同じだけなんだけど」
山の中の一本道なので。
「面白いからずっと後ろを走ってたけど」
下り坂をゆるゆると。
「だんだん可哀相になって」
山側も川側も急傾斜で、道を逸れる事ができません。
「ひたすらまっすぐ走り続けるんだもの」

ニホンカモシカなどは縄張りを守るために
わざとバイクに伴走したりすると聞きますが。
「一度斜面を見上げたけど、ちょうどそこは
コンクリートで固めてあって上れないし」
土砂留めですね。
「たまに広いところもあるんだけど、そこでよけたりしないし」
お先にどうぞ、と後続をやり過ごすような世慣れた鹿が山にいますか。
「犬は待つよ」
人は待ってやらないんですか。
「日が高くなったら暑くて走れなくなる」

鹿と自転車が連れ立って山道を下っていきます。
必死で逃げるというほどではない、
別に追いかけている訳ではない、
「道はカーブしてるし、もし車がきたらどうしようか、とか」
お互い少しだけ困惑しています。

「やっとガードレールの切れ目があって」
それまで崖が急なので、ずっとガードレールが途切れなかったのです。
「そこから飛び降りて」
川岸に向かって駆け下りて。
「薮がずっとがさがさ動いてるんだけど、もう見えなかった」


見ている人がいたら、名前をつけたかもしれません。
鹿にではなくて、鹿と一緒に走る人に、
ダンス・ウィズ・ウルブズ や、
ウインド・イン・ヒズ・ヘア みたいな。
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by otenki-nekoya | 2013-09-29 22:27 | 散歩

汐だまりの名月

朝晩涼気が感じられるようになったとはいえ
空気が澄んだぶん日射しはやはり激烈で
いまだに日中外を歩くのは真剣勝負です。

この二ヶ月というものすぐ近くの海でさえ
昼は暑く夜は暗くうろうろ歩く事はできませんでした。


この月の下なら。

まださほど高くはない満月は金色で、
商店街を横切って街灯がなくなると
くっきりと自分の影が地面に落ちます。

まださほど高くはない満月は海には映りませんが、
遠くの嵐から寄せる少し高い波が明るく見えます。

波がこれだけ明るいのなら、
波打ち際まで行ったら月が映っているかもしれません。

月明かりだけの浜辺に降りるのは足下が少し心配ですが、
大潮の海は思ったより近くにありました。
柔らかな砂から大きな砂利になるあたりが真っ黒に見えます。

潮が引きはじめたばかりで、砂利が濡れているのでしょう。
思い切って踏み込むとやはり砂利はまだ海水を含んでいます。

月の方に身体を向けると、
波頭ばかりか立ち上がる波裏まで金色に輝いて

金色の波の打ち寄せた浜は、真っ黒に見えた濡れた砂利が
月の光を受けて銀の粒を敷き詰めたように彼方まで広がっています。

潮が引いたばかりの砂利のところどころは窪んで海水が溜まり、
僅かなあいだ、潮溜まりのようになっているのですが、
その一つ一つの小さな海水の池を覗くと

一つ一つに小さな金色の満月が映っています。

初めて見ました。

暑くなく。寒くなく。
雲一つない絶好の月見日和、
今宵の名月を見上げる人はさぞ多い事でしょう。

金色の中秋の名月にむかって歩きます。

傍らに打ち寄せ続ける金の波、
行く手は果てしなく銀を敷き詰め、
足下にいくつも小さな金の月が水の中に落ちていて、

燦然と。絢爛と。
これほどの月見はなかなかありますまい。
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by otenki-nekoya | 2013-09-19 22:01 | 散歩

豚の如く

ニュース番組が終わったのでチャンネルをかえたら
赤い飛行艇が紺碧の海上を飛ぶアニメをやっていました。

久しぶりに見ると、主人公はタバコを片時も離さず、
ものすごい紫煙に包まれています。
この夏公開の新作は、タバコを吸う場面が多く
教育上良くないという文句が出たという事ですが。
「二十年前はそんな事問題にならなかったね」
全然意識していませんでした。

「タバコだけじゃなくて、相当メタボなのも心配だなあ」
それは仕方ないですよ、主人公はブタですから。
「え?ブタって太っているの?」

‥‥。
確かにこの夏は家禽は熱中症に、
家畜は夏痩せする暑さでしたが、
畜産家は大変な肥育の努力をされていると思います。

「実物を見た事はあまりないけど、ああいう動物でしょ?」」
豚からすれば豚は標準体型という事ですか。

実在する生物としての豚と、一般に人がブタという単語から
連想する共通イメージというものは別物ですから、
普通、人間の外観を嘲る時の形容に使われるでしょう。

連れは上を向いて少し考えてから、
思い当たったように言いました。
「あー‥‥ああ。使うね」

連れは悪口雑言を使った事がありません。
知らないというより、例によって
わざわざ考えた事がないのです。

「ブタさん、かっこいいなあ」
他所で絶対言ってはいけませんよ。

──かっこいいなあ、ブタみたい。
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by otenki-nekoya | 2013-09-06 23:17 | TV
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日記


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