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国立民族学博物館

高校生になると、大阪の叔母が万博記念公園の中の
国立民族学博物館へ案内してくれました。
とりあえずいつも電車から眺めるときは
木立に隠れて見えない太陽の塔の土台部分を
地面からぐわっと眺め上げて顔を見て青空を見て、
それから人気のない博物館に入ります。

入るなり棟方志功の仏版画を指差し「わだばゴッホになる」と叫び、
生涯我が身とは無関係であろう各国の
民具仮面などに思いつくままの戯言を述べ、
どの地域の何というものだか覚える事もできない楽器の音に感銘を受け、
なにがなんだかわからない状態で戸外に出た私に、叔母が言いました。
「うちに下宿して、阪大で文化人類学やれば?」

文化人類学。
なんのために。

今にして思えば、叔母は心底から民俗文化に入れ込んでいたのです。
万国博覧会の遺品に魅入られた、というべきか。
エキゾチックで正体不明な木彫りの櫃や絨毯を、
センス良くインテリアに生かすだけの単なるセレブ奥様ではなかった。
彼女はそれまでに何人もの友人や親戚を
国立民族学博物館に連れて行った事でしょう。
しかし、当時は日本の経済絶頂期、美術展などと異なり、
土俗的な展示に対し、良識有る大人からは
あまりはかばかしい反応が得られたとは思えません。
その中で、血はつながらないものの「変」の遺伝を
私の中に見いだし、ややみどころがある、と思ったのでしょう。

子育てが一段落すると、叔母はやおら愛用の一眼レフと
望遠レンズを何本も担いで異郷・秘境・辺境に赴き、
その年一番の壮大にして珍な写真を年賀状に仕立て、

厳かなる新年の始まりにそれを目にした私を
「どこだここ‥‥」と絶句させるようになりました。
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by otenki-nekoya | 2011-09-30 18:22 | 美術

ドーベルマンください

大阪の象徴といえば私は「大阪城」より「太陽の塔」です。
大阪郊外の叔父の家に遊びに行くたび、見かけましたから。

某公共放送大河ドラマ主演女優が
ペットショップで「ドーベルマン九頭ください」
と言って店員を困惑させる
大手住宅メーカーのTVCMがありますね。
あのネタ元はたぶん「太陽の塔」です。

‥‥「太陽の塔」というのは古都の旧帝大出身人気作家の、
『プリンセス・トヨトミ』の作者のマキメさんじゃないほうが、
在学中に出したデヴュー作『太陽の塔』(著/森見登美彦 新潮文庫)です。

主人公はじめ男子学生連中は、この二十一世紀に
このようなおんぼろで不自由なアパートが現存するのか、
さすがは歴史ある都、というような住環境ですが、
主人公が思いを寄せる女学生が住むのは鉄筋コンクリート六階建て
新築ワンルームマンションで扉はオートロック、
それでも主人公が

 せめてドーベルマンの十頭や二十頭は欲しいところである

と彼女の身を案じる一行があります。

そんな一行、そんな細部ばかりを丁寧につなげて、
そうしてできる可憐な小説もあるのだな、と感心したのでした。
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by otenki-nekoya | 2011-09-30 18:10 |

なにわの夢

夕方、連れが仕事を早めに切り上げ、
じたばた準備をしながらぼやいています。
「夜中に目が覚めたあと、起きていたような夢を見ていたような」

ありますあります。
私も夜中に目が覚めて、いけない、もう一度眠らなくちゃ、
でももう出かけないと、と腕時計をはめるんですが、
それがごつい金側のクロノグラフで、
あ、こんな時計持ってないからこれは夢だ、
今眠っているんだな、と少し安心しました。

時計は、前日にTVで俳優さんが身につけた小道具を
「二百九十万円するんだって」
とインタビュアーに見せていた場面から来ています。

「眠りが浅くなってるんだよね」
台風でずれこんだとはいえ、一週間に五回の講演会参加は大変ですね。
でも、今日の講師はH先生なんですね、御高名はかねがね。

「そのH先生が居たんだよ。
大阪城の周りをうろうろしていた。
なんでこんなところに、と思ったけど夢だった」
大阪城‥‥阪大の先生だからですか。
「大阪城は『プリンセス・トヨトミ』読んだせいだ」

『プリンセス・トヨトミ』(著/万城目学 文春文庫)貸したのは、
もう三ヶ月以上前になりますが、今、
無意識下では「大阪城」が「大阪」の象徴になっているんですね。
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by otenki-nekoya | 2011-09-29 19:55 |

渡る鷹

飛行場のように轟いていた波の音も聞こえなくなり、
凶暴な吹き返しの風と湿気がおさまると、
いきなり秋はやってきました。

川沿いに、赤い彼岸花の列が現れています。
真っ青な空の下、ベランダでお昼を食べていると、
七羽の小型の猛禽がもつれるように舞いながら、
目の前を西へ飛んで行きました。

「今の何?トビじゃないよね、形が違う」
あっけにとられたように連れが叫びます。
「しっぽとか羽根のかんじがトビじゃない」
たぶんサシバです。渡りに合流するのでしょう。
「渡り?」
寒くなる前にみんなで南の島に行くんですよ。

台風が抜けた後の晴天と乾いた北風、
この風に乗れば、ずっとずっと南まで飛べる。
絶好の鷹の渡り日和です。
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by otenki-nekoya | 2011-09-23 18:54 | ベランダ

つきみ

街灯もない夜道に、男は一人で佇んでいたそうです。
すれ違う瞬間、その男の顔を見ると
男はぼうっと虚空をみつめて。

つられて振り返りると、そこは虚空ではなく

「満月が」

見えたんですか?
何度も探したけれど、今夜は厚い雲が空を覆っていて、

「雲はあるけどちゃんと丸く見える。
満月の光は強い」

ベランダに出てみます。
本当だ。
雲の中でも白く丸く強く光る、
中秋の名月。

ぼうっと見上げます。
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by otenki-nekoya | 2011-09-12 21:56 |

あらしのあとの虹

壁際に固めておいた鉢植えを全展開させ、
緑に戻したベランダでお昼を食べていると、
屋根の上で配線修理の音がします。

台風は去っても、雲に覆われた一日でした。

ベランダで夕食を食べていると、
夕陽を覆い隠す厚い雲のどこかに切れ間があるのか、
東の山から大きな炎がゆらめきあがるように
とても幅の広い虹が立ち上がりました。

なんて色鮮やかな虹。
燃える旗のように虹は三十分間立ち、
厚い雲に隠された太陽が沈むとともに、
吸い込まれるように消えました。

暗くなり、部屋に入って復旧したTVをつけます。
そしてあの巨大な渦の、真のおそろしさを知りました。
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by otenki-nekoya | 2011-09-04 20:05 |

受信できません

電車も止まり道もところどころ途切れたようですが、
それでも部屋の電気も水も止まらずにすみ、
やれやれ、なでしこの試合でも見ようか、と
力を抜いた所でTVがぷつっと消えました。
全チャンネルの受信ができません。

外の様子をうかがっていると、
かちゃ、とドアを開ける音がするので
すかさず首を出し、目の合ったお隣さんに、
TV映らなくなりましたよね、と確認します。
集合アンテナの異常でしょうか。

管理会社に連絡すると、
「ブレーカーが落ちたかな?見てみます」との事。
ブレーカー?アンテナではなくて電気配線に漏水した?
そういえば春に太陽光発電をまわせるように配線工事をしていました。
外通路を見てみます。
この建物全ての通路の蛍光灯が消えている。

本当だ。これは台風の風雨による共用電力の喪失です。
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by otenki-nekoya | 2011-09-03 20:58 | TV

あらしのなかのしずけさ

真っ黒い雨雲の向こうに白い空が見えてきました。
一昨日からずっと続いていた強い北風と雨が弱まり、

ふっととまります。

青空とまではいかないまでも
陽光を透かす白い空に覆われます。
巨大な渦の中に朦朧と大きく開いた目です。

音のない白い光の中に、十頭ばかりの黄色いトンボが、
ベランダの高さまでつ、つ、と小刻みに飛んで
金色の細いトンボ柱を立てています。

シケの時に現れる、俗称シケトンボ。
ウスバキトンボです。
外の渦では飛べますまい。
風雨が止まったのでこの近くの群が飛び立ったのか、
風雨が止まった中に遠くからの群が閉じ込められて来たのか。

音がなくなってから一時間が経ちました。

ふ、とかすかに風が触れます。
今度は南から。
少しずつ強くなって行きます。
静かなコップの中の時間が終わる。

突然真っ白い飛沫を上げて雨が風景をかき消します。
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by otenki-nekoya | 2011-09-03 18:55 |
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日記


by otenki-nekoya
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