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俺のとは違うな

連れが夕刊のページをぱたぱた叩いて
「これ見て」と言います。
警察庁が死因究明制度を推進?
厚労省と文科省と協議。
やったじゃないですか海堂先生!
事件性の有無が不明な遺体の調査の必要性を訴え続け、
不毛な会議の繰り返しの中でも転んでもタダでは起きずに、
会議の不毛さまでもエンターテイメントにして
(『イノセント・ゲリラの祝祭』著/海堂尊 宝島社文庫)
煽り続けた努力の影響か、
実現性はなんとも言えませんが、ちょっと前進かも。

「このあいだ検死頼まれたけど、断ったよ」
そりゃそうだ。生きている人の病気の診断は得意でも、
死亡原因の判定は全く違いますもんね。
「今まではF先生がやってくれてたらしい」
F先生ももうご引退ですか。
で、以前、事件協力をしたご縁もあるという事で、
白羽の矢が立ったという訳ですか。
「犯罪性の有無なんて、見抜ける訳がないのに」

祖父はよく検死をして、それはいろいろな場面に遭遇したそうですが、
もと軍医でしたし、あの時代は自宅で最期を迎えるのが普通だったので、
現代の医師よりもはるかに死については詳しかった筈です。

各都道府県に「法医学研究所」を新設する、というプランのようですが
「うーん、医師の絶対数が足りないのに、そこまでできるかな」
検視官の増員、というのは良いんじゃないですか。
「やっぱり公務員の仕事だよね。
出世のステップじゃなくて、専門職で育ててほしい」
『臨場』(著/横山秀夫 光文社文庫)のTVドラマ、
人気ありましたから、志望する警察官はいるかもしれませんね。
倉石検視官みたいに、一課に向かって「帳場立てろ、こいつぁ他殺だ」

あるいは事件性はなかったとしても、
死因が判れば次に防ぎ得る死があるかもしれません。
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by otenki-nekoya | 2011-04-30 21:09 |

地下室かバスルーム

深い緑のなだらかな丘がのびのびとひろがり、
色とりどりの花で埋め尽くされる四月のアラバマ、
青い空の下で光り輝くような春のある日、
空の一画がみるみる鈍い色の雲に覆われる時があります。

いつもの気象予報士のお兄さんが血相を変え、
「今TVを見ている人は、すぐに地下室かバスルームへ!」
たちまちのうちに電気が止まり、真っ暗な中烈しく雹が打ち付け、
そして恐ろしいばかりの風が。

アラバマに住んでいた時、春になると時々強い竜巻が
町の一部を薙ぎ倒してゆく事がありました。
でも、今回のニュースほどの多数で大規模なものは初めてです。
地下室もバスルームも根こそぎ持っていくほどの。
私が住んでいた街の南の、白亜の愛らしい議事堂があるタスカロッサ、
あるいは飛行機で真上を通ると、赤土の中に見える真っ白な原発。
とにかく広大な雲の下で、どこにタッチダウンするかは予測できません。

米南部の教会は明るくオープンで、地元の数々のイヴェントの場になり、
私達のような異郷人の面倒も大変良く見てくれました。
西海岸で大きな地震があった時は、追悼の場でこう述べられました。
「ここにはアースクェイクは存在しませんが、
そのかわりトルネードがあります。
自然の威力による悲劇はどこででも起りうるのです。
祈りましょう」
3月にも彼等は日本のために祈ってくれた事でしょう。
私達はプロテスタントではありませんが、
米南部の人々のために、祈ります。
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by otenki-nekoya | 2011-04-28 15:04 |

確率の問題

昔々の事です。

研究室の地下の、三角線に囲まれた黄色地に
三枚羽の扇風機のような赤い印のついた
鉄の扉の中に保管されている物質を扱っていました。

たいした量ではありません。
特定の細胞に放射性物質を取り込ませ、
放射線の動きを追うと、細胞のふるまいが判ります。
ずらりと並べた小さな容器に溜めた溶液に、
先輩が少量の放射性物質を注ぎ、
その直後に私が別の試薬を注ぐ、
という単純な流れ作業を二人で延々とやっていたところ、

先輩の注いだ勢いが強くて、ぱしゃ、と液がはねました。
あっ!今、目に入りましたよ。
文句を言うと、先輩は朗らかに、
「大丈夫!確率の問題だから!」

こんな低容量の放射性物質でどうにかなる、なんて
私も別に思ってはいませんでしたし、
毎回毎回先輩の豪快さと私のドジっぷりはとても
マイクロ単位の実験をしている女性コンビとは思えず、
ずっと笑い話の種にしてきました。

このごろ、先輩のあの明るい声が耳を離れません。
確率の問題だから。

ここから上はアウト、という明確な線はひけません。
ただちに健康に影響があるという訳ではないが、
長期間晒されると、人体に被害を与える・可能性が・ないとは・言えない、
体内に取り込まれると、人体に被害を与える・可能性が・高くなる・かもしれない、

どれだけ誠実に対応しようと思っても、こんな言い方しかできなくなる。
あくまでも確率の問題だから。
なんて不安定で心を脅かす事実なのでしょう。

海への汚染水漏れが発覚した翌日、書店で白いあご髭を四角く整えた男性が
原発関連本や放射線から身を守るマニュアルなどの山の前で、
新書数点を手にした女性店員さんとあれこれ談義していました。
「結局、これらの本には、儂の知りたい事は書いてないという事じゃな」
店員さんも、そうですねえ、と首をひねりながら
「勉強のための本でないと、そういう事はなかなか、」
町に一軒だけのこの大規模チェーン書店は売り場面積はそこそこありますが、
「サイエンス」のコーナーがありません。
「スピリチュアル」なるコーナーはかなりの部分を占めているのに。

おそらく男性はシンプルに放射性物質の性質と
環境・人体に与える影響を知りたかったのでしょう。
海洋での生物濃縮の可能性が知りたかったのかもしれません。
でもそれは計りかねる事なのです。

ちなみに先輩は今でも同じ研究室にいて、
年賀状に豪快な近況を書いて寄越してくれます。
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by otenki-nekoya | 2011-04-22 15:01 |

こいのぼり

一週間ぶりに緩い坂道を歩きます。
一週間前あれほど咲き誇っていた桜はまるで
夢幻だったかのようにひとひらも残っていません。

マスクを通しても届く甘い香りに振り仰ぐと、
とあるお宅の小さな庭の小さな藤棚に
みっしりと濃い紫の藤の花が。
今年は春が寒かったから、いつになく
どの花も凝縮されたようにわっと咲きます。
北国の春のように。
マスクを一瞬はずして濃密な藤の香りを味わいます。

藤が咲いている、という事は。
そのまま進むとぼんやり曇った空と鈍く光る海に出ます。
浜には網を引き終えて休む小舟が二艘。

道を挟んで振り向くと、思った通り、
波打ち際を駆ける騎馬武者を描いた巨大な旗が海風に翻っています。
隣に並んだ五匹の鯉幟も、このごろ多いカラー印刷のような
安っぽい派手なものではなく、良い色に染められ、
ときおり金の鱗を輝かせて生けるが如く泳いでいます。

健やかなようです。
目の前の風景そのものであり、
昨年の大河ドラマの主人公の師匠の名を授かった男児は。

海とこの男児の家を隔てるものは何一つありません。
もしもこの海が溢れ出すような事あらば、
背後の海岸段丘で海抜十メートル、その上に立つ校舎の屋上をめざすか。
おそらくひとりで歩きまわれるようになったであろう男児、
この旗の騎馬武者のように、足疾く気力に満ちて育て。
顔も知らぬ児の、旗に染め抜かれた名前に呼びかけます。

緩い坂を下ると、目の前をツバメが低く飛び交います。
旗も鯉幟も明日はお休みかな。
雨になりそうです。
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by otenki-nekoya | 2011-04-17 16:56 | 散歩

限りなき天然

今居る部屋の管理会社から連絡書がきていたので
火災報知器取り付けのお知らせだろう、と見てみると

太陽光発電システムと電気温水器の設置をするという。
非常時には日中の電源と貯水タンクになるそうで、
建物工事を含みかなり大掛かりになる、との事です。

大家さんあっぱれ。
たしかにこのあたりを津波が襲った場合、
とっさに避難できる高さを持つ建物は数少なく、
ここに駆け上がってくる人も多い事でしょう。
しかし前が川なので、以前大雨の時に一帯が冠水したように、
津波をやり過ごせたとしても孤立する可能性が高い。

それ以前に道路は海岸沿いだけなのでこの町そのものが孤立します。
車で小一時間の県庁所在地はもともと河口に作られた街なので、
津波がなくとも地震だけで水に沈む予定です。
空港も海に面しているので使えなくなるでしょう。
救援はしばらくはないので、当面は各人で持ちこたねばならない。

などという事態にはならなくとも、大家さんは
以前から太陽光発電は検討されていたのでしょう。
初期投資がかかるけれど、日本有数の日照時間を利用しない手は無い。
もともと高層の建物も大きな工場もなく、
住民のほとんどが太陽とともに田畑や海で働き、
日が高くなる前に帰り、夜は早くから眠る町です。
食糧は自給自足に近い形のお宅も多いので、
電力も自給できればなおの事。

ミステリに出て来そうな複雑な名の復興会議議長を
TVで初めて拝見した時、こう仰いました。
「南海・東南海が先だと思っていた」
皆がそう思っていました。
でも人智には限りがある。
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by otenki-nekoya | 2011-04-14 16:43 |

先生のオルガン

全国紙日曜書評欄の最初のページを広げて、連れが指差します。
「見て」
うわー、この印象的な眉、ご友人のSさんじゃないですか。
今回の「空想書店」の店長まかされたんですか?いいなー。
しかし、手堅いというか、盤石のラインナップですね。
トップ3は専門分野での大先輩達の著作であり、
なおかつどんな人が読んでも絶対に面白い本であり、
ベスト1はしかも今だからまさに読むべき本であり。

もっとも、『寺田寅彦随筆集』(全五冊 岩波文庫)は
私にとってもオールタイムベスト・エッセイです。
中学から高校に上がる時だったか、
それとも大学入試用だったか忘れたけれど、
学校に提出する「愛読書」の欄にも書きました。
学校向けに百鬼園先生や澁澤龍彦作品は
少々差し障りが、というのもあったけれど、
いずれも家にあった親の本でしたし、
自分のお小遣いで買い揃えた寺田先生の本は
まぎれもなく私の愛読書だ、と思ったので
(今にして思えば、どなたも小説家というより名随筆家です)。

こうやって改めて見ると物理学者で名文家って多いですね。
寺田先生やファインマン先生は身の回りのちょっとした不思議を
理論的に解釈する、というネタも駆使するけれど、
(寺田先生は、地元の海の怪奇現象を地球物理学的に解明してみせます。
名探偵ガリレオ先生のモデルっぽい)
全くの日常を叙情的にあるいはユーモラスに表現する能力は
たまたま天が二物を与えたもうたものなのでしょうか。

地元紙で、いずれこの地に来るべき大震災に備えて連載していた
地震学の権威の大先生の文章は、学術的には大変興味深かったものの
失礼ながら、これほど面白みのない文章を書けるなんて‥‥
いや、こっちが通常、科学者の書く文章なのでしょう。
その大先生をもってしても、こちらよりも「東」が先になるなんて、
事が起る以前は思いもよらなかった。
後にして思えば理論的に全て辻褄が合うのだけれど、
専門家の身としては、悔やんでも悔やみきれぬ痛恨事。

ああ、寺田先生の話でした。
漱石先生の『猫』で寒月君の苦心の名場面となるくらい、
寺田寅彦といえばヴァイオリン、ですが、
留学前に漱石先生に預けていったという曰く付きの
リードオルガンが修復・展示されたものを、以前わざわざ見に行きました。
「私も行ったよ。そういえば卒論が尺八の音とか書いてあった」
著作は読んでないんでしょう。
日本一の理系エッセイストは間違いなく寺田寅彦先生です!
絶対読んで、それでお正月にご友人が帰省されたら
「寺田先生最高!」とSさんとハイタッチしてきてください。
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by otenki-nekoya | 2011-04-10 16:47 |

みなみかぜ

海からの南風が強いので、これなら大丈夫かな、と外に出ました。

今年の花粉は前評判に違わぬ凄さで、二月に耳が痛くなり、
三月鼻水、四月に入ると喉が腫れ上がって夜も寝られなくなりました。
向こうに見える、色とりどりの里山の一段奥はもう杉・ヒノキ林、
見た目には麗しい山々から猛然と襲いかかってくるのです。

海からの南風に向かえば花粉に当たらない。
風にはらはら散る桜を多く見られるコースをたどり、
マスクをはずしてひとっこひとりいない投票所で投票を済ませ、
両脇に並んだご一同に頭をさげ、出る前におもむろにマスクをかけると、
両脇から一斉に「ありがとうございました」と声がかかります。

投票所から出ると前は海です。
海を見るのは一ヶ月と数日ぶりです。
少し行けばいつでもすぐ見えるのに。

なにしろ花粉が凄いので、屋外にはほとんど出ていられない、
そう自分に言って過ごしました。
何十万何百万という人が、これまでと同じように平穏な心で
海を見る事ができなくなってしまった事が本当は恐ろしかった。

深く被った帽子のつばの下から顔をあげます。
春の海は青く、穏やかにきらきらと光って、
少し前に降った雨のせいで
波打ち際が柔らかい緑白色に濁っています。
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by otenki-nekoya | 2011-04-10 14:41 | 散歩

満開の下

人住む町の桜花、
首都の桜は懐かしい。

江戸丑寅の恩賜公園、江戸城戌亥のお堀ばた、
春のうららの隅田川、花の名所の花下に、
人波が訪れるニュースを見て、ほっとしました。

花を見上げる事もなく、うつむいたまま縮こまる、
首都の皆々がそうなってしまったら、
誰が東国を支えるのか、誰が日常を繕うのか。

花が咲いたら花を見る。
月が出たなら月を見る。

都の花には及ばねど
ベランダから見下ろす満開の桜、
風にゆれるばかりで散りもせず、
沈む夕陽に薄赤く
ゆらりゆらりと燃え上がる。
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by otenki-nekoya | 2011-04-07 21:34 | ベランダ

故きを温ねて

電気事業法27条に基づく電力使用制限令発動?

実施されればオイルショック以来、と聞きますが、
先日新聞読者アンケートで選ばれた「昭和を象徴する出来事」でも
オイルショックが四位に入っていて、うわ、パールハーバーより上位だ、
私が思っていたより大きな出来事だったんだなあ、と思いました。

連れに当時の印象を尋ねてみます。
「知らない」
覚えてないんですか?
「関係なかったから。
田舎はトイレットペーパーなんか使わない」
ああ、そうか、水溶性である必要はないのか。

『極北クレイマー』(海堂尊/著 朝日新聞出版)の舞台となる
財政難の公立病院の洗面所が水洗ではなくて、
こんな病院あるか、と思われた読者も多いでしょうが、
地域拠点病院である、うちの近所の公立病院、
院内はとにかく、官舎が水洗ではないという。
いまどきそんな病院官舎あるか、と思いました。
私が子供の頃住んでいた所でも水洗だったのに。
県(道)庁所在地から車で小一時間、という
ロケーションも小説の公立病院と同じです。

しかし、水と水溶性巻紙が入手困難になった場合は
かえって旧式な手段に分があると言えるかもしれません。
上下水道はもちろん電気もガスもない、
それもそんな昔の事ではないそうです。
数十年前まで、井戸水か川か山の湧き水を引いて来て、
薪でご飯を炊いてお風呂を湧かすのが普通だった訳です。

このあたりの道路は海沿いにしかありません。
いざ事あれば御老人達のお知恵を頼りに生き抜きます。

ちなみに地域拠点病院である、近所の公立病院の建物は
地震となれば倒壊するので、立て替えが予定されています。
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by otenki-nekoya | 2011-04-06 21:21 |

ほぼ満開の

ひるひなか、
雑居ビルの細々と立ち並ぶ
ひとっこひとり居ぬ町の
陰を足早に歩いていると、

ぱし、と白い閃光が掠めます。

はっと足をとどめると、
小さな児童公園に、
八分咲きの桜の木。

山にひらくは山桜、
ソメイヨシノは人が植え、
人住むあかしの桜花。

花見るなとは無理な事。
花がこの次咲く時に、
この身がこの世にあるものか、
はかないものは花でなく
はかないものは人なれば。

ヒノキの花粉も飛びはじめ、
長く見上げてはいられません。
白いひかりを目に沈め、
陰を足早に歩きます。
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by otenki-nekoya | 2011-04-01 18:16 | 散歩
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日記


by otenki-nekoya
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