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カテゴリ:散歩( 124 )

神の訪れ

駅の産直市で、一人の婆様が

知り合いに明るく声をかけています。


「クリスマスは来たかね!」


打てば響くように爺様が否定します。


「来るかえ!」


大勢の人でごったがえす産直市は

通路をふさぐ程バケツが並んでいて、

しきび、さかき、松、千両、南天、大輪の百合、

白梅、紅梅、蠟梅、小ぶりの紅白の葉牡丹などの

お正月のための生花が飛ぶように売れてゆきます。



市を出ると、駅のマスコットキャラクターの像が、

白い縁取りの有る真っ赤なケープを着ていました。


気付いた御婦人が、友達に

「みてみて、○○ちゃんがクリスマス!」


それを言うなら、○○ちゃんがサンタさん、です。

可愛く出来ているので、写真を撮っている人もいます。



お正月様は、準備をしてお迎えしなければ決して来ない。


それと少し似ているのかもしれません。

都会の風潮とは距離のあるこのあたりでは

サンタクロースでもイエス様でもなく、

「クリスマス」が訪なう神の一種なのかもしれません。



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by otenki-nekoya | 2014-12-25 21:57 | 散歩

クリスマスのこない町

祝日でも町は平常通りに働いています。

道は道路工事をして

海は漁船でいっぱいで

店はどこも開けていて


いつものスーパーに入っても

いつもどおり静かです。


ああ、そうか。

マニュアル通りにクリスマスの飾り付けはされているのに、

あふれるようなクリスマス商品も

賑やかなクリスマスソングもないのです。


そういえば、さっき横切った商店街もまるっきり平常通りでした。


うわついていない。


売り場の一部は小山になるくらい

真空パックのお鏡餅で埋もれていて

お正月商戦はうってかわってやる気満々です。


静かな店内で、赤ちゃんをだっこした

お洒落なお母さんが、お父さんの押すカートに載った

三歳くらいのお姉ちゃんを鋭く諭しています。

いや、諭されたのはお父さんかな。


お母さんは、今大人気のキャラクターの描かれた

ソーセージを冷蔵棚に戻しながら

「こんなものに踊らされたらいかん!」


すみません。

ながいあいだ踊り続けていましたね、私達。



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by otenki-nekoya | 2014-12-23 22:52 | 散歩

ハコモノ

「市役所の人は大変だ」

地域イベントの手伝いに行っていた連れが言います。

何十年も続く恒例イベントに、選挙が重なってしまいましたからね。

準備が忙しいうえに、公共施設のいくつかは投票所になってしまって

代替施設を用意するのも難題だったでしょう。


「普段の日曜休日もほとんどないらしいよ」

そういえばこのあたりは天候が不安定な春夏よりも、

天候の安定した晩秋から真冬のイベントが多いです。


「正月は恒例の寒中水泳大会だから、毎年正月もないんだって」


‥‥そんな恒例ありましたっけ。

頑張れ地方公務員。業務内容は違いますが、

『腕貫探偵、残業中』(著/西澤保彦 実業之日本社)の

タイトルが思い浮かんでしまいます。




投票所になっている公共施設に行くと、

こちらの一挙手一投足に集中砲火的な視線が。

訪れる人が少なくて、皆さん待ちかねているのです。


全員の「ありがとうございましたー」の声に送られると、

新たに来た子供連れの女性に一斉に「いらっしゃいませー」

‥‥さすがにそれはないけれど、

集中砲火的な視線に若い母親がたじろいで私に尋ねます。


「ここ、○○○じゃないんですか?」

普段はそうなんです。

でも今日は投票所になっていて、利用できないみたいですよ。


この地区の外から、しかも初めて訪れたのでしょう。

小さな男の子がお母さんの手にぶら下がってくねくねします。

せっかく来たのに残念だったね、たのしみにしてたのかな。


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by otenki-nekoya | 2014-12-14 22:13 | 散歩

サイドミラーにあごをのせ

やわらかな色合いの山々の一番奥が

ひとつだけまっしろになりました。


重荷を下ろした風が里に吹き付けます。



助手席の窓を全開にした軽自動車から

茶色の細い腕が出ています。

腕じゃない、前脚。


サイドミラーにちょこんとあごを載せて

マメシバが車内から身を乗り出して

寒風にあたっています。


この身を切るような風が身を切らないのか。

さすがに毛皮を着ているだけの事はある、

でも窓を閉められないから運転手さんが寒い──


あ、逆なんだ。


急激な冷え込みに、人間は当然、車の暖房を入れます。

毛皮に包まれた、汗腺の少ない、容積の小さな生き物は


のぼせた。


だから、サイドミラーに頭をのっけて冷やしている。

最初からマメシバ専用台のようにサイズがぴったりです。


そのまま軽自動車は何事もないように

細い路地から大通りへ出て行きました。



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by otenki-nekoya | 2014-12-05 21:40 | 散歩

干し物をとりこむ

今日は水平線がはっきりとわかります。


空が暗くて海があかるくて。


空が暗いのは、あそこからあそこまで

雨が降っているからなのでは。

それもそうとうな大雨なのでは。

しかもこっちに来るのでは。


いつもの海産物干し場の横で、小走りになります。

干し場のみなさんもせわしげに魚介を取り込んでいます。


串を打ってぴんとまっすぐになった真っ白いスルメイカが

ずらずらずらずら道沿いに吊り下げられています。

小さいワイシャツの行列のようです。


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by otenki-nekoya | 2014-11-30 21:45 | 散歩

海鳥に似ている

海沿いの道のところどころに

県外ナンバーの車がとまっています。


水平線を見に来たのか。


日射しが暑いくらいの日和なのですが、

あいにく白く光る雲が空を覆い、

白く光る海とのさかいめは茫漠としています。


水平線はあのあたり──


指差した線よりだいぶ上を船が通ります。


‥‥まちがえた。


自分の居る高さによって違うので、

いつも見ていても水平線の位置を当てるのは意外と難しい。


連休ですが、月曜なのでたくさんの漁船が出て働いています。

かたまっているところに、お目当ての獲物がいるのでしょう。


黒い船団が、銀色の空を漂うようです。


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by otenki-nekoya | 2014-11-24 22:20 | 散歩

水平線のために

十月にはじまったTVドラマで

ヒロインが語る「野望」のひとつが


──水平線を見たい


島に囲まれた島の高校生なのです。


たまたま通りがかりにその台詞を聞いた連れが、

「このへんなら逆に」


──島を見たい


たしかに。

このあたりの海岸から見えるのは

山の他は海と空の水平線ばかりで、

いけどもいけども島影一つありません。


電車に乗ると、周りの乗客が

「わあ、地球が丸い!」と叫んでいるほどです。



前回、大学生になって島を出たヒロインが

旅先で水平線を見ながら

「はしからはしまで水平線っていうのが見たい」

と、少し野望を大きくしていました。


たまたま通りがかりにその台詞を聞いた連れは、

そのまま通り過ぎて行きました。



日曜の朝、いつも自転車で川沿いや海岸沿いを

走って来る連れの帰りが少し遅くなりました。


隣村の台地へ行ったのだそうです。

台地?登ったんですか?自転車で。


「登りきれなかった。途中で降りて来た」


自分の脚の力だけではなかなか辿り着けないでしょう、

てっぺんまでは


‥‥。

もしかして、見たかったのですか。


はしからはしまでの水平線が。



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by otenki-nekoya | 2014-11-16 22:42 | 散歩

彼岸の蝶

金色の日射しと真っ黒な影、

影は短くはなく長くなく、

建物の黒い影をつたって歩きます。


金色の日射しを受けて

金に黒の模様のアゲハチョウが

前を横切り、脇を通り、頭を掠めて

‥‥さすがに連れが気付きます。

「なんで住宅地の中にこんなにチョウがいるの?」


母親でしょう。


「え」

このあたりのお宅はもれなく一家に一本以上、

いわゆる酢蜜柑を植えていますね。

「うん。焼き魚とか鍋のときは庭でもいでくる」

その柑橘の葉がナミアゲハの子供の餌になるんです。

「ああー、卵を生みに来たのか」

これから冬を越して、春に孵ります。

「あの、春のちっちゃなアゲハ蝶ね」


公園のキバナコスモスにはモンキチョウが訪れ、

アカタテハがせわしなく舞い、

ヤマトシジミが低くちらちらします。

見慣れた蝶ばかりでも、

秋の彼岸の金色の日射しの中で

金色の花に華を添えています。


川岸に出ると、大きな夏羽がすり切れて

黒いレース状になったクロアゲハが

満開の彼岸花の上を真っ黒な影のように。


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by otenki-nekoya | 2014-09-23 21:36 | 散歩

いるよ

彼岸とはいえ、これほど急に冷え込まなくても。

でもこれなら真昼の散歩も大丈夫。


うちの前の小さな川沿いに銀行の裏を通ると、

歩いていても見過ごすくらい、

立ち止まって初めて気付くような、

ささやかな花が。


庭に生えれば抜かれるような、

名前を聞けば雑草と言われるような、

キク科の、イネ科の、ヒルガオ科の、

マメ科の、シソ科の、ツユクサ科の、

ヒユ科の、タデ科の、ユリ科の、


淡い黄色の淡い緑の淡い紅の淡い紫の。


路面から水面までの5メートルの斜面の中に、

一つ直径1センチにも満たないほどの花が、

何百と、何千と。


川沿いを川のように、

天の川の星のように。


町中の道ばたでしばし立ちつくします。

ここは花野だ。

幅5メートルで延々と続く。


この銀行の裏は大きな樹のある小さな公園の対岸で、

手入れと放置の具合が丁度良いのでした。



そういえばカワセミをしばらく見ない。


突然、鋭い声がしてオレンジ色がひらめくと、

次の瞬間には水色の光が

川面をつーっと遠ざかってゆきました。



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by otenki-nekoya | 2014-09-21 22:28 | 散歩

城跡を知る

部屋から眺めると里から山がはじまるはしっこ、
五月の初めには淡いとりどりの色でうずもれて、
五月の終わりにはとりどりの鮮やかな緑になったあのあたりに
小さな城があったのです。

先月末、マーズと落人伝説について
やりとりをかわしていたとき、
ふと思い出した事がありました。
『平家物語』の有名な一場面の中に、
この里の武人達が登場している。
マーズに問われました。
「地元には彼等の住まいの場所とか伝わっているの?」

私がこっちに来てから聞いた事はありません。
領主の城近くで生まれ育った地元民にそのシーンを語って聞かせ、
さて、この武人達についてなにか教わった事は、と尋ねました。
「聞いた事がない」
そうですか。

それから一月たたないうちに、
休日の朝に自転車で走って来た連れが
「大発見!」と駆け込んできました。
道中、その武人の城といわれるものをみつけたのだそうです。
それはすごい。つれていってください。


‥‥ここですか?
よく前を通る、小山の前ですが。
看板に従い、住宅地から木の葉の敷いた斜面の道を上ると、
小さな山というより丘のてっぺんが平らになっています。
樹木に覆われていますが、これはまさしく城跡ではありませんか。
横に倒された樹の幹に腰掛けます。
木漏れ日と鳥達のさえずりが降り注ぎます。

小さな城からは二つの川に挟まれた田畑と民の姿、
その向こうの海と空がよく見えたことでしょう。
武家の世になる前の穏やかな暮らし。
よいお城です。

「しょっちゅうここは通るのに、なんで気がつかなかったんだろう?」
この看板、新しいですよ。ああ、書いてある。
立てられたのは去年の秋──
某公共放送大河ドラマで源氏と平家が取り上げられたのを見て
地元の人が思い出し、新しく作ってくれたのでしょう。
この道を通るのは今年になって今日が初めてなのでは。
「あ、そうだ。こっちは今日まで近づかなかった」
平地にも斜面にも、城あと一面に杉が植えられています。


部屋から眺めると里から山がはじまるはしっこ、
今はとりどりの鮮やかな緑になったあのあたり。
たからものがひとつふえました。
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by otenki-nekoya | 2014-05-29 21:37 | 散歩
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日記


by otenki-nekoya
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