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カテゴリ:本( 98 )

電話ぼっくす

映画の予告カットを見た連れが、「持っている?」と尋ねるので、

『ソロモンの偽証』(宮部みゆき/新潮文庫)の第一巻を渡しました。


「昔の中学生だー。携帯持ってない」

読みはじめた連れは、安心したように言います。


「電話ボックスって、どんなものか思い出すのに時間がかかったよ。

そういえばあったねえ」


透明な壁に囲まれて

扉は内に引き込まれ

夜には電燈が点いて

そもそも名前が不思議です。


思い浮かばない人も多くなった事でしょう。

冒頭の場面です。

丁寧に読むのは良い事ですね。


全六巻ですが。



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by otenki-nekoya | 2015-03-01 21:56 |

□□ゑ、浮上

*昔のお仲間への告知です。

 変ですが、符牒ですのでご心配なさいませんよう。



水面がざわめいている。


ざわめいていて当然だ。

海なのだから。


湾の中といえども

波も寄せればうねりもたつだろう。


海の底深く沈んだ神殿が浮かぶ兆しなどではありえない。


そう思い続けていた。


呼び声はもう届かない


──それなのに。


遠く深く見えないところの動きを

水が伝えて波となり足を濡らす。

風が伝えて声となり耳を打つ。





昔々我々が蒔いた遊びの種が、

新しい人々の新しい技によって再び花を開いていたのです。


さあ──ご覧なさい。お聞きなさい。

忘れられた詞『□□の□び□』によって求めるのです。

さらば──開かれん。



 関係者のみなさまへ



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by otenki-nekoya | 2015-02-02 22:57 |

初神者

書店に行っていた連れが

「『古事記』を買って来た」


ええっ、確かに今、池澤夏樹の新訳

(日本文学全集01/河出書房新社)が人気ですが。

「ああそれ、店頭に山積みになってたね」


しかし、いままで神話はもちろんファンタジーは

まったく読まなかった人がいきなり

神の名の羅列に挑戦するのは大変ではないでしょうか。


「だいじょうぶ!買ってきたのは『ビギナーズ・ラック』だから」


‥‥『ビギナーズ・クラシックス』(角川ソフィア文庫)ですね。


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by otenki-nekoya | 2015-01-11 21:58 |

みな人倫を明らかにする所以なり

今年の某公共放送大河ドラマは

番宣では「ホームドラマ」としていたので

ちょっと期待薄になっていたのですが。


「さすが長州だ!学問から入った!」


策略から始まる薩摩と揺れる幕府『篤姫』、

暗殺に始まり暗殺に終わる土佐『龍馬伝』、

滅びるのがわかっている会津『八重の桜』、

いずれも幕末ものは面白かったので、

人材豊富な長州には特に頑張ってもらいたいものです。


文字が空中に浮く演出が『蟲師』や『シャーロック』みたいですが、


 人性の善なるは、なお水のひくきにつくがごときなり。

 人、善ならざることあることなく、

 水、くだらざることあることなし。


一緒に歌おう、ではないですが、思わず『孟子』を唱和していたら、

いきなりヒロインに負けました(訳はドラマ版とは異なります)。

 

 痒とは養なり、校とは教なり、序とは射なり。

 夏に校と曰い、殷に序と曰い、周に痒と曰い、

 学は則ち三代これを共にす。


初回は「本」をめぐる話で、なかなか良かったです。


「子役達も、姿勢まで良く似せてあったねー」

山鹿流に「赤穂浪士か!」と突っ込んだら、ちゃんと

明倫館で「赤穂義士」の戦略について講義している声が入ってました。


ラストには良い意味での「そうせい公」が出て来て、

「この騒ぎは何の記録にも載せぬ」と、

フィクションのストーリーである事を

わざわざ念押ししていくのも笑えました。


しかし連れがドラマを見ながら

「あ、本を捨てた!」

「また本を捨てた!」

と叫ぶのですが、叱っているのではなく、

「捨てる」というのは地方語で「落とす」の意味のようです。



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by otenki-nekoya | 2015-01-04 22:46 |

すべてがエムになる

当時、座敷童のような子(私)がバスの中で読んでいたのは

岩波文庫の『遠野物語・山の人生』でした。


今、手持ちの角川ソフィア文庫『遠野物語』は

『遠野物語拾遺』と合わせて一冊になっています。


連れが買って来た集英社文庫『遠野物語』は、

カバーイラストはホラーコミック風ですが、

『涕泣史談』や『清光館哀史』などがセレクトされています。


その中の一編『女の咲顔』は

「エミ」と「ワラヒ」の違いについて考察されています。


「笑」と書いて「ワラヒ」、「咲」と書いて「エミ」

「咲顔」と書いて「エガオ」


‥‥今シーズンのドラマで工学部のお嬢様大学生を演じている

女優さんの名前、「サキちゃん」じゃなくて「エミちゃん」は

読み方に無理があるなあ、と思っていたのですが

そうだった!柳田翁が「エミ」と読んでいたんだった!


ドラマのキャストを聞いたとき、原作に合わせて

エミちゃん髪を切ったら偉いけど必要ないぞ、と思ったら

さすがにそれはしていませんでした。



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by otenki-nekoya | 2014-11-02 22:58 |

そこの物語

十月いっぱいはハロウィーン通信ネタになるような

コワいものはないかコワいものはないかと、

そればかり探していました。


何が一番怖かったかと言えば。



十月のある日曜日、

連れが薄い文庫本を読みふけっていました。


柳田国男の『遠野物語』でした。


うわあああああああ。


‥‥どこが怖いのかわかりにくいかもしれませんが、

この組み合わせは全く想定外だったのです。


 経立(ふったち)は恐ろしきものなり。


とはいえ、

若い頃には食べられなかったものや

興味のなかった分野の本が

楽しめるようになるというのは、

年をとる醍醐味のひとつです。



 ある年何某という男、町より帰るとて乗り合い自動車に乗りて

十二、三の女の児の書を読み入るに逢へり。

何読む、と問えば柳田某の『遠野物語』なりと答ふ。


座敷童ではありません。

私です、私。




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by otenki-nekoya | 2014-11-02 21:55 |

会津に斃る

中学の頃、狐狸庵先生の作品は少し読んだけれど
安岡章太郎作品は読んだ事がありませんでした。

今年訃報に接し、増刷が出るだろうから読んでみようと
思ったのですが、いつもの書店には一冊も入りません。
有名作家に対しても、時代というものは過酷だなあ。
「追悼」の帯の巻かれた『流離譚(上・下)』(講談社文芸文庫)を
みつけて中も見ず買ったのは秋になっていました。

読みはじめて驚きました。
しまった。もう少し早く読んでいれば。

作者の先祖である、地方郷士達の物語という紹介と、
浪漫的な響きのタイトルからか
なんとなくノスタルジックなものをイメージしていたのですが

先祖の私的小説などではなく、幕末動乱の渦中に身を投じた
安岡兄弟の行動を辿り、詳細な資料に語らせる維新史というか。
それこそドラマ『龍馬伝』でお馴染みとなった人物達が
史実としてぞろぞろと絡んできます。
そのうえ後半、安岡兄は板垣退助率いる土佐迅衝隊の参謀となるので
「奥州攻め」が克明に記されています。
こ、この本で会津のお城を攻める事になるなんて。
八重さんすまぬ、これも巡り合わせいうもんぜよ。

まだ読みかけなのですが、これは読むべき、と連れに上巻を貸すと、
「昔の文章がいっぱいだ。これは私には読めないよ」
それはまあ、安岡兄弟の手紙をメインに、
同時代の記録を付き合わせた構成ですから。
ちゃんと大意は本文でも書いてくれているので、
資料部分は読めなくても大丈夫‥‥
とはいえ、あまりに詳し過ぎ、関心の有る事件でないと
読むのが面倒、という感じはあります。

この慎ましい白い帯に、煽りのコピーを入れられないでしょうか。

『弟は 吉田東洋の 首を取った男
 兄は 会津の戦に 斃れた男』

「ええっ‥‥勤王党だったの!」
だから。流されるのです。
ほんのはずみから、とめどもなく流されてしまうのです。
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by otenki-nekoya | 2013-12-22 22:23 |

鹿鳴く館

全国紙の一面コラムが、日本シリーズの話題に絡めて
中井桜州のロンドンでの珍英会話譚を載せていました。

このひとですよ。
明治元年に英国公使ハリー・パークス卿が
帝に謁見に向かった時、行列に切り付けた凶漢と
激しく刃を交え、後藤象二郎の助太刀でその首を取った。
「あ、中井弘。県知事になったんだ!」

留学していたのは幕末ですから、二十前後の事ですね。
「幕末?密航じゃない」
ジョーと違って、薩長は藩でグルです。
「エピソードは面白いけど、話の流れとしては無理があるなあ」
東北チームの外国人選手を讃えるのに、薩摩藩士の逸話。
「なんで中井さんを持ち出したんだろう」

もしかしたら、「鹿鳴館」の印象が筆者の中にあったのかもしれません。
「鹿鳴館?そういえばこのあいだ大河ドラマで出て来た」
『鹿鳴館』という名前をつけたのが、桜州なんです。
「へええ!じゃあ井上馨とも仲が良いんだー」
井上は中井の奥さん取っちゃったんですけど。


猛攻を受ける鶴ヶ城に篭城した、会津家老職・山川家の幼い娘が
麗しのレイディに成長して十年ぶりにアメリカ留学から戻り、
ドラマの前々回にはついに、
あろうことか鶴ヶ城を攻めた薩摩の砲兵隊長・大山巌が求婚し、
当然の大反対にもへこたれず、
目出たく鹿鳴館の華とうたわれた大山捨松が誕生しました。

「書き手の人は、大河ドラマで『鹿鳴館』の回があったので
『東北』から会津、薩摩から中井を連想した──ということ?」
奥州から桜州とか。
それはわかりませんが、コラムのテーマは、
少々ヘンな外国語でも通じあえる、ですよね。

「捨松は日本語だいぶ忘れてたしね」
それは関係──あるかどうか。
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by otenki-nekoya | 2013-11-06 22:01 |

明治への旅行

今年の大河ドラマがはじまるまで、ヒロインの
八重さんは全然知らない人だと思っていました。

『日本紀行』(講談社学術文庫)の京都篇で
イサベラ・バードが新島邸を訪れて歓談する場面がありますが、
以前読んだ時は全く気がつかなかったのです。

洋風の生活をしている洋装の紳士・ジョーの傍らの
和服の夫人が、そのわずか十年前に

崩れゆく会津鶴ヶ城に篭城し
七連発のスペンサー銃を撃ちまくって
新政府軍と闘った男装の戦士だったなんて。

最近になって、イサベラ・バードの京都観光に付き添ったのが
八重さんとあんつぁまのおっかさま、
山本佐久さんだったとわかった、と新聞に載っていました。

イサベラ・バードの京都での宿泊先が同志社女学校なので、
意外に山本家と関わりがあったのだなあ。
大河ドラマの明治篇が進んだら、読みなおそう。


この夏の暑さはなんだ、とても外に出られない、
という皆様におすすめの旅行プランがございます!

はるかな距離を越えて英国女性が訪れたニッポンを、
はるかな時間を越えて現代の私達が訪れるというのはいかがでしょう。

『イサベラ・バードの日本紀行 上・下』
(講談社学術文庫 著/イサベラ・バード)
「上」は東北の旅、明治というより江戸そのままの風景、
「下」はさらに開化から離れた蝦夷の旅と、文化の凝縮した関西の旅。
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by otenki-nekoya | 2013-08-10 19:34 |

天璋院さまのナチュラル雑貨

こんな七月の白い強靭な日射しに太刀打ちするには
我が愛用の日傘はどれも華奢で、か弱く心細く思えます。

最近さしている人の多い、
真っ黒で大きくて生地のしっかりした
男持ちの雨傘のような日傘がいいな。

‥‥それはコウモリ傘ではありませんか。
天璋院様か。

 天璋院のお伴で、所々へ行ったよ。
 八百善にも二三度。向島の柳屋へも二度かネ。
 吉原にも、芸者屋にも行って、みンな下情を見せたよ。
 (略)ワシの家にも二三度来られたが、
 蝙蝠傘を杖にして来てネ、
 「どうも、日傘よりも好い」と言った。
                    『海舟語録』

万事規則と格式にがんじがらめだった江戸城大奥を出た篤姫は、
下々の用いる道具でも、気に入ったものはすぐに取り入れます。
船宿のお茶がおいしかったので、
銀瓶をやめて「鉄瓶」を火鉢にかけたり、
お風呂の後出された「浴衣」を愛用するようになったり。
元将軍家御台所はハンドメイドもお好きだったようです。

 後には、自分で縫物もされるしネ、
 「大分上手になったから、縫って上げた」などと言って、
 私にも羽織を一枚下すったのを持ってるよ。

                    『海舟語録』


日本で最初に「ミシン」を献上されたのは篤姫でしたね。
まさか勝先生の羽織はミシンで‥‥。
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by otenki-nekoya | 2013-07-14 18:43 |
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日記


by otenki-nekoya
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